IDG インタビュー
2004/05/19 18:53 更新

Interview:
「ユーザーはもっと楽になる」――SAP CEOが語る今後の方向性 (2/2)


カガーマン氏 おそらくIBMは、同社とSAPのソリューションがJavaをサポートしているため、両社はむしろ競合することの方が大きいと考えているのでしょう。私としては連係を拡大できると思っている分野はいくつかあるのですが、IBMはそこに市場を見ていません。

――ホスティングサービスについてはどう思いますか?

カガーマン氏 自前で多数のホスティングサービスを提供したいとは思いません。われわれの傘下にはホスティング会社もありますが、これはSAPにとっては小さなビジネスです。このビジネスは経験を積み、製品を準備する役に立ちます。われわれはむしろ、IBMなど以前からのパートナーとのホスティング契約の方に関心を持っています。要するに、ハードやデータセンターに投資したくないのです。こうしたビジネスの利益率が高いとは思っていませんから。

――CRMオンデマンドサービスでも?

カガーマン氏 いい質問ですね。この種のサービスはこの先オプションとして提供される可能性がありますが、今のところはそれほど需要がありません。この方向に進むには、新たなビジネスラインを構築する必要があります。正直に言えば、当社にはもっと優先することがいくつもあります。

――サブスクリプション制の価格モデルを検討したことはありますか?

カガーマン氏 ある程度はあります。当社は既にレンタルモデルを用意しており、顧客はソフトを年間ベースでレンタルできます。このモデルは少し前から実施していますが、それほど人気はありません。

――顧客に月間ベースでソフトをレンタルするのはどうですか?

カガーマン氏 それはわれわれの選択肢に入っていません。単にサービスをオンにすればいいだけのSalesforce.comとは違うのです。

――Salesforce.comとSAPの大きな違いは?

カガーマン氏 Salesforce.comはソフトをインストールしませんが、サービスを中央でホスティングしています。ASP(アプリケーションサービスプロバイダー)モデルを採用しているのです。

――ですが、SAPもホスティングに踏み込んでいますよね。

カガーマン氏 原理的には、ホスティングができるというのは良いことです。アップグレードホスティングなど、特別なホスティングサービスを望む顧客もいますから。この種のホスティングサービスを提供するのは、われわれの利益にかないます。

――SAP Systems Integrationの統合計画により、コンサルティングサービスを拡大するつもりなのですか?

カガーマン氏 SAP製品に関わるサービスのほとんどは、SAPのコンサルティングパートナーが提供しています。コンサルティングサービスの約80%はパートナーが占めていますが、この比率は地域によって若干異なります。世界全体では、われわれが占める割合は約15%、本拠地のドイツではおよそ30%です。

――Webベースサービスに移行にすることで、SAPがもっと直接的にコンサルティングに関わる必要が出てくるでしょうか?

カガーマン氏 そうはなりませんが、コンサルティングサービスのポートフォリオを多少変えなくてはならないでしょう。これまでとは違って、焦点を実装よりも統合や新製品の紹介、品質問題に当てる必要があります。

――国際的な大規模コンサルティング会社を買収する計画は?

カガーマン氏 ありませんね。仮に大手コンサルティング会社を買収したら、ほかのコンサルティングパートナーから競争相手と見なされ、これらのパートナーをすべて失うことになるでしょう。それは危険なやり方です。当社はかねてから、もしサービスコンサルティング会社を目指すとしたら、統合と技術サービスに的を絞った小さな会社を目標にすると言っていました。あるいは、中国のコンサルティング会社に目を向けるかもしれませんが、大規模な会社は対象になりません。

――全般的な話として、事業拡大のための買収についてどう思いますか?

カガーマン氏 私は最近の年次株主総会で戦略を概説し、買収は当社の成長戦略の一部であると述べました。大企業の買収を追求するということではなく、定期的に比較的小規模な企業の買収を検討しているということです。

――ユーザーに関して1つ2つ質問があります。SAPの構成やリリース管理サービスに不満を持つユーザーがいましたが、今でもそれは問題になっていますか?

カガーマン氏 いえ、数カ月前にリリース管理を簡略化しました。mySAP ERPの立ち上げとともに、もっとシンプルなメンテナンス戦略を導入しました。

――あなたは「シンプルさ」「柔軟性」という言葉を好んで使っていますが、SAPがサービス志向アーキテクチャに移行することで、ユーザーの仕事はもっとシンプルに、柔軟になるでしょうか?

カガーマン氏 その通りです。それにはいくつか理由があります。第一に、ユーザーインタフェースがポータル経由になり、ナビゲーションがもっと簡単になります。ソフト全体を改変しなくても、もっと簡単にユーザーインタフェースを変更できるようになります。次に、この新技術はトランザクションベースではなく、アラートベースでインテリジェンスが組み込まれます。ルック&フィールが完全に違うのです。

――あなたは「ROI」(投資回収率)という言葉もよく使いますが、これについてはどうですか?

カガーマン氏 現在、経営陣はビジネスケースを求めています。彼らはeビジネス時代の多くの企業のやり方とは違って、CIO(情報統括責任者)に最新の製品を購入させようとはしていません。しかし多くの企業がROIを口にしていますが、すべての企業がそれを測定できているわけではありません。これが真の課題なのです。

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