インタビュー
2004/05/21 15:50 更新

Interview:
「Green Barbarian」旋風が学生を飲み込む――日本電子専門学校のKNOPPIX導入までの経緯

3200名もの学生を抱える日本電子専門学校では、カスタマイズしたKNOPPIXを使用したクライアント端末による実習環境を構築している。同校でコンピュータネットワーク研究科の科長を勤める小菅貴彦氏に導入までの経緯を聞いた。

 東京・新宿にある日本電子専門学校のコンピュータネットワーク研究科では、カスタマイズしたKNOPPIXを使用したクライアント端末による実習環境を構築している。すでにLindows CDを使った導入事例として日本大学の事例を紹介したが(4月18日の記事参照)、学生が日常的に使用する端末にKNOPPIXを採用した例として、日本電子専門学校は珍しい事例となる。同校でコンピュータネットワーク研究科の科長を勤める小菅貴彦氏に話を聞いた。

小菅氏

「CFを使えば、さらなるコスト削減も可能」と話す小菅氏

Green Barbarianとは?

ITmedia 今回KNOPPIXを導入するまでの経緯を教えてください。

小菅 昨年開催された「関西オープンソース+フリーウェア2003」の中でKNOPPIXのBOFがあったのですが、この前後に動きがありました。

 コンピュータネットワーク研究科では、昨年の後期から、体験入学に来られる方に実際に使用していただくなど、実績を積み重ねていきました。

 私どもの学校では、実習室の管理が学科にまかされていることから、KNOPPIXを実習室のクライアント端末のOSに採用すると決定事項として書類を提出したのが、2004年の2月ごろです。そして4月から現在のように実習室全てのPCに導入しました。

ITmedia 実際に導入されているのは、産業技術総合研究所(産総研)からリリースされているKNOPPIX日本語版をカスタマイズしたものですよね。どのようなカスタマイズが行われているのですか?

小菅 ここで使用しているKNOPPIX日本語版をカスタマイズしたOSは「Green Barbarian」と呼んでいます。私のほうで作成し、GPLで公開しているプログラミング言語教育に特化したインタープリタ「algolAlpha」を収録しているほか、Sun microsystems様のご厚意で、Java2 SDK 1.4.2などを組み込んでいます。ただし、不要なアプリケーションは削っていますので、サイズは470Mバイト程度です。

 ちなみにメディアはCD-Rではなく、CD-RWです。今後、OSがバージョンアップした際にも書き換えることができるようにしています。

dt.jpg

Green Barbarianの起動中の画面(クリックで拡大します)

自宅作業用のGreen Barbarianを学生に配布

ITmedia 「Green Barbarian」は2種類あるそうですね。

小菅 学内利用用と自宅作業用に配布しているものでパッケージ構成が若干異なります。

 コンピュータネットワーク研究科では、いつでも、どこでも、実習室にいるのと全く同じ環境でプログラミング言語の実習が行えるユビキタス実習環境を目指しており、それを実現するため、実習室以外の場所で利用するための「Green Barbarian」を学生に配布しています。これは2003年の12月1日から利用してもらっています。

 こちらは、基本的にはKNOPPIX日本語版と同じで、サイズも700Mバイト近くあります。カスタマイズした部分としては、学内サーバにアクセスする際にSSHトンネルを張るためのスクリプトなどを組み込んだことなどが挙げられます。

 SSHトンネルが作成された後、認証をLDAPで行い、それが終わるとrsyncで実習の内容を復習したり、課題を提出したりできます。学生は実習室で学習した内容を同日の18:10以降はrsyncを利用し、自宅でも学習可能です。また、自宅で学習した課題などを提出した場合は、朝の8時から学内サーバのrsyncが行われるようになっています。

rm.jpg

algolAlphaを使って実習を行う学生たち

ITmedia クライアント端末はどのようなマシン構成になっているのですか?

小菅 42台のPC全て同じ構成で、ハード的には、CPUにCeleron 2.2GHz、メモリ1Gバイトを搭載しています。また、全てのPCにリムーバブルHDDが取り付けられています。

 これは、KNOPPIXはその性格上、CDへのアクセスが多いため、CDドライブへの負担が大きいという指摘などがオープンソースコミュニティでは報告されていたため、安全策としての意味合いが1点。もう1点は汎用性の観点からです。他の学科に実習室を貸す、または他の目的で実習室を使用することを考慮し、HDDからのブートのほか、FDからブートしてX端末としても利用可能にしておきました。

 やはり初めての試みということもあり、それなりの不安はありましたので、万が一を考えてこのようにしました。

コスト面は大きく削減へ。CFを使った事例も

ITmedia コスト的には以前とどう変わりましたか?

小菅 リムーバブルケースとHDDも残しているため、大幅な削減とはなっていませんが、確実に削減されています。イニシャルコストで言えば、前年と比べてクライアントPC1台につき1万5000円ほど抑えることができ、学内サーバやネットワークを充実させることができました。また、全てのクライアントがLinuxである学科はここだけなのですが、Windowsのライセンスなどを考えると、ソフト面でのコストは大きく抑えられることになります。また、ランニングコストに関しては人、時間で考えると、正確な数値ではありませんが気分的には100分の1程度になっています。

 なお、今回の導入で実績ができたので、次回の導入からはリムーバブルケースとHDDを外します。また、CD-ROMドライブも外そうと思っているんですよ。

ITmedia CDブート型のKNOPPIXを使用するのに、CD-ROMドライブを外すのですか?

小菅 4月にリリースしていますが、ミスミ社製MCM-IDE-940(40pin IDEコネクタ)およびMCA-2S2-I2(2.5インチドライブベイ)を使用して、IDEポートに接続した512MバイトのCFから、KNOPPIXの起動に成功しています。容量を470Mバイト程度に抑えたのも、これを見越してのことです。

 CFからKNOPPIXを起動するメリットとしては、速度的なものと、設定の書き換えが可能になる点があります。CDではそうはいきませんからね。

ITmedia しかし、コスト的な面で言えば、そうした構成にすると、CDドライブの価格より高くなりませんか?

小菅 確かにハードのコストは高くなりますが、リモートから書き換えられるというメリットが生じます。CDブート型と比べた場合、管理面などでさらにコスト効率が図られますので、結果的にはTCOを含めたコストを抑えることができるのです。

 CFではなくUSBメモリを使うという選択肢もあるでしょうが、マザーボードとの相性もあり、USBメモリからのブートを保障できない場合もあります。IDE接続のCFであればその問題は生じません。

ITmedia ランニングコストに関しては、企業によっては、Linuxの知識が乏しい場合もあるでしょう。そのような場合でもランニングコストは削減されると思われますか?

小菅 はい。少なくとも1CD型のLinuxではソフト的に壊れる、ということはありませんので、そこでのメンテナンスコストを考えずにすみますよね。極端な話、KNOPPIXをカスタマイズするコストとハードの故障に対するコストだけを考えればいいのではないでしょうか。

ITmedia こうしたことを行うにあたって、産総研とは協力関係はあるのでしょうか?

小菅 産総研の須崎氏など、個人的な付き合いから派生してさまざまな協力はいただいています。現時点では組織的に共同研究は行っていませんが、将来的には共同研究のものもでてくるのではないかと思います。

 現在、私たちはKNOPPIXを利用したKIOSK端末の試作にも成功しています。128MバイトのCFを使ってX端末として利用するものなのですが、これですと1台あたり5万円程度のKIOSK端末が作成可能となります。私どもは学校法人ですので、直接これらの成果をビジネスにつなげることはできません。どこかの企業と契約し、技術供与を行うといった形になるでしょう。そのとき、うちと企業、そして産総研の共同研究といった形になることもあるのではないでしょうか。

ITmedia ところで、気になっているのですが、「Green Barbarian」の名前の由来を教えていただけますか?

小菅 よく聞かれるのですが、実は私、緑のポロシャツが大好きでして、7枚も所有しているほどです。つまり、私のことを指したものなんです(笑い)。

 ちなみに、「Green Barbarian」の次バージョンでは、先ほども少し話しましたが、ネットワーク経由でACLファイルを取得し、それを適用する機能を加えていく予定です。

 東北学院大学でも、KNOPPIXをベースに、教育用授業コンテンツとコンテンツ選択機能を組み込んだ「KNOPPIX Edu」をリリースしていますが、これと同様に、Green BarbarianはあくまでもKNOPPIXの教育面における応用の一つと考えてください。


 日本専門学校では、2004年9月に開催予定の「オープンソースカンファレンス 2004」の会場となる予定である。今回の事例のようなKNOPPIXを使ったデモなども見ることができる予定なので、興味のある方は参加してみてはどうだろう。

『オープンソースカンファレンス2004』開催のお知らせ

[西尾泰三,ITmedia]

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