IDG インタビュー
2004/05/26 18:13 更新


「Kodiak」でなくなった次期版Exchangeのこれから

「Kodiak」というコードネームの使用中止で、Exchangeの次期メジャーリリースはどうなるのか? Microsoftの幹部が今後のExchangeの計画について語った。(IDG)

 Microsoftは電子メールサーバソフト「Exchange Server」の次期版に付けられていた「Kodiak」というコードネームを廃止し、各アップデートを別々にリリースする計画する方針であることをサンディエゴで開催中のTechEdで明らかにした(関連記事参照)。

 IDG News Serviceは今年の初めからExchange Server部門を担当しているコーポレートバイスプレジデントのデビッド・トンプソン氏に話を聞いた。

 トンプソン氏は、Exchangeの次期リリースについてさらに詳しい話を聞かせてくれた。同氏によると、同ソフトは2007年のサーバ版Longhornリリースの前に登場する可能性がある。LonghornはWindowsの次期メジャーリリースで、クライアント版は2006年に登場する見込みだ。またトンプソン氏は、SQL Serverデータベース技術をExchangeに組み込む計画についても説明した。

――今日はロードマップに関して幾つかニュースが発表され、事態が若干変わっていますが、KodiakはもうExchangeの次のメジャーリリースではないのですね。

トンプソン氏 実際にはKodiakという名称を使うのをやめるということで、一連の機能には今でも取り組んでいますし、段階的に発表していきます。

――Kodiakの名称を使わなくなったら、次のリリースがいつになるのかなどが顧客に分かりにくくなるのでは?

トンプソン氏 ロードマップが展開するにつれて、そのさまざまな部分について説明していきます。次の主要技術であるEdge Server(Exchange Edge Services)が来年登場することを話すつもりです。顧客がKodiakに関して具体的なことを思い描いていたのなら、今回の件は彼らにとって変化だと思います。この事業の製品計画について言えるのは、計画は進化するということです。

――Kodiakの名称を廃止するとなれば、Exchangeの新リリースは登場するのでしょうか、それとも登場しないということなのでしょうか?

トンプソン氏 Exchangeの新リリースはありますが、いつ登場するか、どんなものになるかは発表する用意ができていません。OutlookおよびOfficeと歩調を合わせるというのがわれわれの戦略です。ExchangeはOutlook向けの最高のサーバだと考えているからです。この戦略が理にかなっていることはお分かりでしょう。おそらくは今秋に、Exchangeの次期版を発表する見通しです。現時点でわれわれが話しているのは、技術の方向性です。

――Kodiakは当初、2006年に登場する予定でしたよね?

トンプソン氏 正直に言うと、当初のリリース予定は知らないのです。

――そうなんですか?

トンプソン氏 私は4カ月前にこの部門に来ました。数年前のKodiakの計画作成には関わっていないのです。

――Officeと歩調を合わせるということですが。

トンプソン氏 実際、最新のリリース(Exchange 2003)はOfficeと歩調を合わせていました。歩調を合わせると言っても、サーバ製品の場合は通常、必ずしも同じ日にリリースするわけではありません。準備ができ次第リリースします。ですが、プランニングとタイミングがほぼ合うように調整するのです。

――Officeの次期バージョンはクライアント版Longhornの出荷後になる見込みです。日にちは発表されていませんが、Microsoftは、Office次期版のリリースは一連のLonghorn関連ソフトに含まれると言っています(7月25日の記事参照)。私としては、Exchange次期版のリリースもそのころになると予測しているのですが。

トンプソン氏 ExchangeのリリースはOffice次期バージョンと同じころになると見ています。

――Exchangeの次期リリースあるいはアップデートに関して、今ほとんどの時間を費やしていることは? 何に取り組んでいるところなのですか?

トンプソン氏 われわれはこの次世代製品に取り組んでおり、これは幾つかの点で進化を遂げました。その1つがフロントエンドに関連するエンドユーザーアクセス機能です。力を入れているのはデバイスのモビリティ体験です。われわれはこれにかなり投資しており、モビリティ体験をシームレスで、簡単に導入できるようにし、1台のデバイスで完全なOutlookの体験をセキュアかつ容易にセットアップできるようにしようとしています。

 新版Exchangeには3つの役割があります。Exchange Serverには基本的に、エッジサーバ、フロントエンドサーバ、メールボックスサーバ(またはストレージサーバ)の3種類のサーバが含まれています。モビリティをサポートするのはフロントエンドです。この部分ではすべてのクライアントの接続体験を操作し、またWebサービスアクセスが提供され、アプリケーションのリモートプログラミングプラットフォームになります。

 これら3つの役割に関して言うと、われわれは顧客がExchangeをどのように利用するか、メールシステムをどのように運用するかを多大な時間を費やして分析し、その結果これら3つが主要な役割であることを発見しました。ですからわれわれは、Exchangeの運用とこれら3つの役割の実行を容易にするのです。

 当社の製品が普及していなかったのがエッジの部分です。Exchangeの集中的なエッジサーバは、メールフローのルーティング・処理を行う非常に高度なプラットフォームになります。そうした処理の要素として、スパム対策、ウイルス対策、メッセージが出入りする際のメッセージポリシーが考えられます。これはメッセージフロー上で起動するあらゆる種類の高度な機能を実装できる汎用プラットフォームです。

――それからメールボックスとデータストアの役割がありますよね。

トンプソン氏 メールボックスサーバはカレンダー機能をサポートし、ストレージを提供し、ドキュメントライフサイクル機能もあります。われわれが主に投資している分野です。

――Exchangeのデータストア部分に関して聞いた話ですが、将来版のExchangeではデータストアの変更により、顧客がSQL Serverライセンスを購入しなければならないとか。

トンプソン氏 今後いずれかの時点でデータストア技術を変更する予定ですが、それに関する計画は発表していません。変更するとしたら、データストアは何らかのSQLベースの技術になるでしょう。この点について、パッケージングに関する含みは何らありません。この計画がどうなるのかは私には分かりませんが、われわれは顧客の製品導入方法に合ったやり方をする必要があります。

――MicrosoftはLonghornで新しいストレージ技術を導入する計画です。そのLonghornサーバに対応したExchangeは、新しいExchangeデータストアの用意ができ次第リリースされるのですか?

トンプソン氏 次期版ExchangeがLonghornサーバ上で動作するとは言っていません。次期版Exchangeの計画がどんなものになるのかは発表していませんが、Longhornサーバ上で走るという話はしていません。

――では、Longhorn(サーバ)の前にExchangeのバージョンが1つ登場する可能性があると?

トンプソン氏 その可能性はあります。われわれがやっているのは、顧客のニーズに合うようにExchangeを進化させることです。言い逃れに聞こえるかもしれませんが、それが現実です。顧客のためにしなくてはならないことがたくさんあります。それが――今日の複雑なメッセージングシステムへの厳しい要求が、私がこの部門にいる理由なのです。チャンスはたくさんあります。

――Exchangeデータストアの変更はいつになりますか?

トンプソン氏 時期については決めていません。エッジサービスではメッセージキューイングサポートの一部として、SQL技術を利用します。それでも現時点では、パッケージングとライセンスについては何も決まっていません。そのことを話すには時期尚早なのです。

――新しいデータストア技術が登場することについて、あなたは以前、SQL Server技術の話をすることに意味はあるが、それ(新しいデータストア)が本格的なSQL Serverデータベースになるのか、そのサブセットになるのか、それともExchange用の特別なバージョンになるのかはまだ言えないと言っていました。

トンプソン氏 現時点では決まっていません。こういった技術の利点は、ほかのアプリケーションとの整合性を高めたプログラミングモデルを提供するところにあります。この技術をSQL Serverデータベースの管理に使うツールや技術と合わせて提供すると、利用者はこうした利点を得られます。私はこれがSQLなのかどうか、別のライセンス付き製品と何らかの関連があるのかどうかという問題ではなく、利用者が得られるものに重点を置いています。顧客への影響が重要なのです。

――ですが、顧客は別の製品のライセンスを買う必要があるかどうかについても気にしています。

トンプソン氏 それは理解しています。先に言ったように、ユーザーの利用方法に合ったやり方で製品をパッケージングしなくてはなりません。われわれは常に、顧客がどのように製品を使うかを考え、製品の価値に見合った公正な価格で提供することを考慮しています。