IT業界のトップランナーが集う「AI共創会議」開催 日本の成長に向けてタッグ:日本はAIで再成長できるのか

日本をAI後進国にしてはならない――ITソリューションの国内トップランナー企業のトップが語った「日本企業がAIで成長するための勝ち筋」とは。

PR/ITmedia
» 2025年03月03日 10時00分 公開
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「日本=生成AI活用が遅れている」を変える

 生成AIの活用方針を決めている日本企業は4割で、米国、ドイツ、中国と比べて約半数――このような調査結果を総務省が「令和6年版 情報通信白書」※1で公表している。生成AIの活用を想定する業務ごとの活用状況を見ても「業務で使用中(効果は出ている)」「業務で使用中(効果は測定中または不明)」「トライアル中」を含めた「業務で使用中」の割合で、日本企業は各国と比べて最も低い結果となった。

※1 :総務省「令和6年版 情報通信白書」

photo 「ITベンダーの皆さまとの共創を通じて、日本企業のAI導入を促進して日本全体の競争力の向上に寄与したい」と発起人であるSB C&Sの草川和哉氏は会合の意義を語った

 こうした日本企業の生成AI活用の遅れに危機感を募らせるのは、SB C&S代表取締役社長 兼 CEO(最高経営責任者)の草川和哉氏。こうした現状を話し合う場として、同社が主催したのが「AI共創会議」だ。

 この会議は経営トップが一堂に会して意見を率直に交換し合うことで、日本企業のAI導入を加速させるべくベンダーとディストリビューターの“共創”を促して、日本全体のAI競争力の向上に貢献するというもの。国内外で多様なITソリューションを展開するITベンダー12社がこの趣旨に賛同し、会議に参加した。

 ITmedia エンタープライズは、2025年1月14日に開催された「AI共創会議」の模様を3回にわたって紹介する。

 SB C&Sは大手ITディストリビューターとして、全国の販売パートナーを介してエンドユーザー企業にさまざまなITソリューションを提供する立場にある。最新のSaaSやセキュリティソリューションの普及にも尽力しており、日本企業のIT戦略、DX推進を支えている。

 世界的にAIビジネスが拡大する中、日本市場の活性化を目指してSB C&Sが推進しているのが「AIアラウンド戦略」だ。同社のITベンダーネットワークと販売パートナーネットワークを駆使して、AI環境の構築に必要なプロダクトやサービスをワンストップで提供する。同社がITベンダーと販売パートナーをつないで複合的な企業課題に全方位でソリューションを提供し、高い技術力で導入まで支援することで日本企業のAI活用を推進する。

photo SB C&Sの呼び掛けでAI共創会議に集った12社のトップたち

 同会議に参加した12社(五十音順)

  • ヴイエムウェア
  • エヌビディア
  • エフサステクノロジーズ
  • シスコシステムズ
  • デル・テクノロジーズ
  • 日本AMD
  • 日本オラクル
  • 日本ヒューレット・パッカード
  • ニュータニックス・ジャパン
  • ネットアップ
  • レッドハット
  • レノボ・エンタープライズ・ソリューションズ

インクリメンタルなイノベーションが得意な日本企業はAIでの成長余地が大きい

 現在、世界中の企業や組織がAIの活用にまい進しており、既に生成AIを導入して大きな成果を挙げている先進的な企業も出てきている。多くの海外企業と比べて日本企業がAI活用やDXの取り組みで相対的に後れを取っていることは明らかで、このままいくと「AI格差」はますます広がる。さらに、AI技術が爆発的に進化したことで企業を取り巻くビジネス環境は今まで以上にダイナミックな変化が予想される。

 この状況を打開して日本企業が今後も世界で戦える競争力を持ち続けるには、DXの推進と日々発展するAI技術のキャッチアップを同時にこなさなければならない。ディスカッションは、各社にこの問いを投げ掛けるところから始まった。

photo エヌビディアの大崎真孝氏

 日本はAI活用による成長を実現できるか、できるとすれば「勝ち筋」はどこにあるのか――この問いに12社全てが「成長できる」と回答した。ただし、その根拠は各社さまざまだ。

 AIの急成長をけん引するエヌビディア日本代表 兼 米国本社副社長の大崎真孝氏は「日本の産業文化ならではの強み」を生かすことでAI活用による成長を実現できると述べる。

 「日本やドイツのように製造業が強い国はインクリメンタルなイノベーションによる成功体験を積み上げてきたため、デジタルやAIの活用による一足飛びのイノベーションには後れを取ってきた。しかし、長年培ってきたモノづくりの強みは唯一無二のもの。これにAIを組み合わせて独自の価値を生み出すことで、成長や社会課題の解決を実現できる」

photo デル・テクノロジーズの大塚俊彦氏

 デル・テクノロジーズ代表取締役社長の大塚俊彦氏自身もデル・テクノロジーズはAIソリューションハブとしての活動を強化する中、日本のAI活用の大きなポテンシャルを感じている。特に「現場が持つ強さ、培われてきた技術やノウハウをAIによって次の世代に継承することで、生産性を向上させて日本ならではの強みを生かした成長につなげていける」と述べる。

photo 日本ヒューレット・パッカードの望月弘一氏

 導入後すぐに利用を始められるターンキー型のAIソリューションをはじめ包括的なハイブリッドクラウドソリューションを提供する日本ヒューレット・パッカード代表執行役員社長の望月弘一氏は「データのサイロ化の課題」を指摘する。

 「ハイブリッドクラウドの普及に伴い、データがさまざまなプラットフォームに散在してしまう『サイロ化』の課題が持ち上がっている。言うまでもなくAI活用の鍵を握るのはデータ。サイロ化の問題は深刻であり、私たちベンダーが連携して解決していく必要がある」

photo レノボ・エンタープライズ・ソリューションズの多田直哉氏

 AI向けサーバからAI PCまで幅広くハードウェアソリューションを提供するレノボ・エンタープライズ・ソリューションズ代表取締役社長(取材時)の多田直哉氏は、別の観点からデータの課題を指摘する。

 「自社の保有データの価値を理解していないためにAIを活用できていない企業は多い。そうした企業であっても、IT部門はデータの価値を理解している。経営層にその価値を言語化して伝えられれば、その先に進めるように思える」

photo エフサステクノロジーズの保田益男氏

 このデータの課題に対して「生成AIはこれまでとは全く異なるアプローチで問題を解決できる可能性がある」と指摘するのが、国内企業にサーバ、ストレージ製品を多数展開するエフサステクノロジーズ代表取締役社長CEOの保田益男氏だ。

 「これまでのデータ活用は、データを収集・管理するためのシステムを前提としていた。しかし、生成AIを使えば動画や音声のような非構造化データをそのまま取り込んでそこから価値を抽出できるため、必ずしもシステム化は必須ではない。AIを使ってこれまでとは全く異なるアプローチでデータを活用できるようになれば『デジタル後進国』から脱却する糸口がつかめるかもしれない」

製造業や金融、ヘルスケア分野でAI活用の大きな可能性

photo ファシリテーターはアイティメディアの小林教至(取締役副社長 兼 COO〈最高執行責任者〉)

 各社は「AI活用による成長余地が大きいと考える産業分野と業務プロセス」をどうみているだろうか。多くの企業が挙げたのが「製造業」「流通・小売り」「ヘルスケア」「金融」だ。これらの企業はデータを比較的多く持っており、自動化や製品開発でAIが果たす役割は大きく、ユースケースも増えている。

 国内のさまざまな製造業企業との提携を打ち出しているエヌビディアの大崎氏も日本の「お家芸」であるモノづくりにおけるAI活用の可能性に着目する。

 「AIは人間の身体に例えると“脳”に相当するが、脳の指令に従って物事を実行する“手足”に相当するのはモーター制御やアクチュエーターなどの技術であり、日本の製造業が得意とする分野。日本のチャンスは、AIとロボティクスの融合(『フィジカルAI』)の領域にあると考える」

photo 日本AMDのジョン・ロボトム氏

 製造業に大きな可能性を見つつもヘルスケア分野にも可能性を指摘するのが、コンピューティング業界をリードし、AIソリューションも提供する日本AMD代表取締役社長のジョン・ロボトム氏だ。

 「ヘルスケア分野では創薬などでAI活用はかなり進んでいるが、医師や看護師による診断や業務への活用に加え、今後は介護分野にも大きな可能性を感じる。介護にはかなり力仕事が多く、大崎氏が指摘したように日本が得意とするロボティクスとAIを組み合わせるなど、日本全体が抱える少子高齢化の課題解決にもつなげられる」

 ヴイエムウェアで企業ITインフラの重要プラットフォーム技術を担うカントリーマネージャーの山内 光氏は「既にさまざまな業界でユースケースが生まれている」としながらも、現時点でAI活用が最も進んでいる分野として「金融」を挙げる。

photo ヴイエムウェアの山内 光氏

 「金融業界は早くから不正検知や顧客エンゲージメントなどの分野でAIの活用が進み、今後も国内の大手金融企業による活用は進むだろうと予想している。当社のお客さまの中でもコールセンター業務におけるAI活用が進んでいるという印象だ。IDCによると、2024年だけで金融サービス業界のAIへの投資額は全世界で370億ドル※2を超える。このようなAI投資が継続される中、金融や政府など規制の厳しい産業が求めるデータプライバシー、セキュリティ、コンプライアンスの要件を担保するプライベートクラウドでAIを活用するトレンドが見られる」

※2 :BROADCOM Private AI: Innovation in Financial Services Combined with Security and Compliance

 ただし、金融の世界は監督官庁による監査の目も厳しいため、AIのような新しい技術の導入に慎重になりがちな面もある。特に日本は規制が厳しく、エンドユーザーも少しのエラーにも厳しい目を向ける傾向がある。

photo レッドハットの三浦美穂氏

 オープンソースソフトウェアをベースに先進的なITインフラ運用基盤やAI開発基盤を提供するレッドハットの代表取締役社長 三浦美穂氏はこの点を取り上げ、「私たちITベンダーもSIer各社と歩調を合わせて文化を変えていく取り組みを進めるべきではないか」と提唱する。

 「規制が厳しいあまり、大胆なチャレンジに二の足を踏みがちだ。これが欧米やアジア各国の企業と比べて企業競争力が弱くなる要因になっているかもしれない。日本全体がもっとチャレンジや失敗を許容する文化へと変容していければ、AI活用も前進するのではないかと考えている」

 DXやAI活用のような新しい取り組みは宇宙開発などの科学技術の発展と同様、いかに早く挑戦してトライ&エラーの中でいち早く経験とインサイトを獲得できるかが成功の鍵を握る。SB C&Sの草川氏も「小さなエラーを大きく取り沙汰されては挑戦するマインドを醸成しにくい」と、チャレンジを称賛する文化の重要性を訴えた。

日本全国にAIによる成長を届ける

 SB C&Sを含むソフトバンクのグループ企業は経営トップの強力なリーダーシップの下、AIの積極活用を推進しており、既にグループ各社で多くの成果が挙がりつつある。SB C&Sも例外ではなく、社内情報ポータルと生成AIを連携させることで、毎月15万件以上の商品に関する問い合わせのプロセスを自動化し、月間で約8000時間の工数削減を目指している。

 こうした社内活用の成果を生かし、今後はITベンダーとの連携をさらに深めつつ日本企業のAI活用促進により貢献したいと草川氏は抱負を語る。

 「当社はIT製品のディストリビューターとして、ITベンダーと販売パートナーさまとの間を取り持つ立場。本日お越しいただいた各社との共創を深めることで、業界を挙げて日本企業のAI活用を促進できるスキームを構築し、ひいては三浦さまが指摘された『文化の変容』に貢献していきたい」

 SB C&Sは今後も最新のAIソリューションの国内流通に注力する他、ITディストリビューターとしての枠組みを超えてITベンダー各社と共同でAI活用ソリューションのラインアップを拡充する計画だ。全国に販売網を持つ同社がAIショーケースのハブとして機能することで、全国の企業がAIによる成長を実感できる日が来ることを期待する。

photo SB C&Sが掲げるAIアラウンド構想(出典:SB C&S提供資料)

 AI共創会議では本稿で示したテーマ以外にも、日本企業がAIで成長するために「何が必要か」「どう変わるべきか」について白熱した議論が交わされた。これらは稿を改めて紹介する。

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提供:SB C&S株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2025年3月24日