日本企業のAI活用に「共創」アプローチが効果的な理由:AI活用推進は「1つのソリューションでは実現できない」

AI活用は1社単独のソリューションで実現できるものではない――国内企業のさまざまな課題に向き合うためにはAIビジネスに携わる企業によるコラボレーションが必要だ。企業同士のさらなる“共創”を目指すアプローチとは。

PR/ITmedia
» 2025年03月07日 10時00分 公開
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 目を見張る速さで発展するAI技術の動向を、一企業のIT担当者が単独で追い続けるのは難しい。それでも、世界に打って出ようとしている企業はAIの可能性を最大限に引き出すべく技術を貪欲に追い掛けて投資していかなければならない。

 国内外で多様なITソリューションを展開しているITベンダー各社も同様だろう。クラウドなど新しく登場した技術を国内企業に導入することに苦労したかもしれないが、AI技術の進展スピードはその比ではない。このままでは、AI活用による成長を国内企業全てが目指すのは困難だろう。この状況を打開するにはAIビジネスに携わる企業同士のさらなる“共創”を促す必要がある――。

 この考えに賛同した国内外の主要なITベンダーが集まって「AI共創会議」を開催した(開催日:2025年1月14日、主催:SB C&S)。

 ITmedia エンタープライズは、AI共創会議を取材。その模様をレポートした記事では日本がAI活用によって成長するには何が必要か、次いで公開した記事ではAI活用の障壁とその打開策についての議論を紹介した。

 本稿は、AI共創会議に参加したITベンダー各社が「AI活用による企業の成長をどのように支援するか」についての議論と結論を伝える。

「AI活用推進は1つのソリューションでは実現できない」 AI普及の鍵を握る“戦略”とは

 AI共創会議を主催したSB C&Sは、IT製品のベンダー企業と販売パートナー企業との間で製品流通をつかさどる「ディストリビューター」として、長らく日本のIT業界を支えてきた。同社は「Value Added Distributor」(付加価値提供型ディストリビューター)として、国内外の最新ソリューションの情報をいち早く全国の販売パートナーに提供したり、販売パートナー各社のマーケティングやセールスの支援をしたりする他、エンドユーザー企業への導入支援も行うなど、流通という枠組みを超えて販売パートナーのビジネス支援に取り組んできた。

 テクノロジーの進化が著しい昨今は、ITベンダーとともに海外の最新の技術動向をパートナー企業やエンドユーザー企業に提供するなど、グローバル標準と国内との間にある「IT活用度合いの格差」を埋める活動に積極的だ。AI共創会議は、こうしたSB C&Sの活動をさらに推し進めるものと言える。

photo SB C&Sの草川和哉氏

 SB C&S代表取締役社長 兼 CEO(最高経営責任者)の草川和哉氏は、同社の狙いについて次のように説明する。

 「AIを生かしたイノベーションを実現するには、AIそのものだけではなくそれを利用するためのアプリケーションやITインフラ、ネットワーク、サイバーセキュリティなど、多様な技術やソリューションが必要だ。これらをベンダー1社で全て賄うのは現実的ではない。本日お集まりいただいたITベンダー各社さまが互いの製品やサービスを持ち寄り、連携して最適なAIソリューションを提供することが今後の日本におけるAI普及の鍵を握る」

 この考えを具現化したのが、同社が「AIアラウンド戦略」と呼ぶ共創ネットワークだ。

photo AIアラウンド戦略のイメージ(出典:SB C&S提供資料)

ベンダー横断でAIレファレンスアーキテクチャを構築 「AI活用に弾み」

photo ネットアップの中島シハブ・ドゥグラ氏

 SB C&Sの取り組みについて、AI共創会議の参加者からは賛同と期待の声が相次いだ。

 ネットアップ代表執行役員社長の中島シハブ・ドゥグラ氏は、「SB C&Sが中心となって販売パートナーやエンドユーザー企業に対するAI技術の活用やスキルアップを支援し、さらにITベンダー各社のソリューションを組み合わせた先進的なレファレンスアーキテクチャを構築できれば日本企業のAI活用にも一層弾みがつく」と述べる。


photo ニュータニックス・ジャパンの金古 毅氏

 ニュータニックス・ジャパン代表執行役員社長の金古 毅氏は、ディストリビューターとしての立場からベンダーの垣根を越えたトータルソリューションを企画、提案できるSB C&Sのケイパビリティーに期待するコメントを寄せた。

 「ディストリビューターの最も重要な機能は物販ではなく、複数のベンダーと販売パートナーの力を結集して高い価値を創造できる“オーガナイザー”としての機能ではないかと考えている。SB C&Sはここにいらっしゃる大手ITベンダーだけでなく、海外のスタートアップ企業とのリレーションも持つ。そうした新興サービスに対する目利き役として私たちをナビゲートしていただきたい」


photo デル・テクノロジーズの大塚俊彦氏

 デル・テクノロジーズ代表取締役社長の大塚俊彦氏は、ディストリビューターのオーガナイザー機能に加えて、AI活用事例に関する情報を幅広く収集、共有する役割をSB C&Sに期待する。

 「数多くのITベンダーや販売パートナーと幅広い取引があるSB C&Sだからこそ、さまざまなユースケースや事例に関する情報をお持ちだ。われわれデル・テクノロジーズも、グローバルで培った知見をSB C&Sとともに日本企業の意思決定層にタイムリーに提供していきたい。AIの価値について正しく理解してもらうことで、日本全体のAI活用の機運を高めていけるのではないか」

グローバルベンダーから得た最新情報を国内に展開

 SB C&Sの草川氏は、今回集まったITベンダーから事例などさまざまな情報の提供を受けることでAIソリューション共創のオーガナイザーとしての機能がさらに強化されると展望する。

 「本日お集まりいただいたITベンダー各社さまの多くはグローバル企業なので、世界中の先進的な事例に関する情報を数多くお持ちだ。そうした情報を当社にご提供いただくことで、皆さまの製品やサービスを活用したAIソリューションを共創する際のヒントとし、国内企業にさらに価値の高いソリューションを提供できるようになると考えている」

 草川氏は、ITベンダーや販売パートナーとの協業を通じてAIソリューションをさらに広く提供していくには、「人材育成」の課題を乗り越える必要があるとも指摘する。

 SB C&Sは、AI技術の導入や活用の支援を提供する専任チームを立ち上げている。この規模と質をさらに拡充させるべく、人材育成の施策により一層力を入れるとしている。

 その成果は既に現れつつあり、主体的にAI技術を習得しようとする人材が続々と現れている。もともとAIの分野にさほど関わっていなかった人材でも、ミッションを与えることで短期間のうちに高度な知識やスキルを吸収しているそうだ。

photo SB C&Sの永谷博規氏

 草川氏と共に会議に出席したSB C&S取締役専務執行役員 兼 ICT事業本部長の永谷博規氏によれば、ほぼ知識ゼロの状態から、半年後には販売パートナーに対してAI製品のハンズオントレーニングを実施できるまでに急成長した人材も出てきたという。

 「こうした人材を一人でも多く育成し、AIソリューションの価値を販売パートナーさまにしっかり伝えていく。同時に各ITベンダーの製品やサービスをより深く理解して、それらをつなぐことでユーザーが使いやすいAIソリューションをできるだけ多く創出していきたい」

「“繋ぐ”企業」としてディストリビューターを超えた役割を担う

 SB C&Sは、「AIアラウンド戦略」の下でAIソリューション共創のオーガナイザーとしての取り組みをより一層強化し、この日の会議に参加できなかったITベンダーも含め、さまざまなAI製品やサービスを組み合わせて提供することで日本企業のAI活用を強力に後押しする計画だ。

 AIインフラを中心にその周辺のサーバやストレージ、ネットワーク、クラウドサービス、セキュリティサービスまで、AIソリューションを形作るあらゆる製品、サービスをワンストップで提供し、ユーザーがより手軽にAIのメリットを享受できるビジネススキームを構築していく。

 そのためにも、今後さらにベンダーおよび販売パートナー各社とのリレーションシップを強化し、従来のディストリビューターの枠を超えた役割を担っていきたいと草川氏と永谷氏は決意を新たにする。

 「ソフトバンクのグループ企業全体としてAIへの大胆な投資を表明しているのは皆さんもご存じの通り。その中で当社はベンダーさまと販売パートナーさま、そしてエンドユーザー企業さまを結ぶハブとしての役割を担えると考えている」(永谷氏)

 最後に草川氏は「当社は“繋ぐ”を事業ビジョンに掲げ、メーカーさまと販売パートナーさまをつなぐことでこれまでさまざまなビジネスを創出してきた」と今までの活動を振り返り、「今後、日本の成長の鍵を握るであろうAIについても同様に、今回お集まりいただいたITベンダー各社さまをはじめ、多様なプレイヤーの間をつなぐ役割を担うことで、日本のAI競争力向上に貢献していきたい」と、AIアラウンド戦略を推進する覚悟を示した。

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AI共創会議に集ったトップたち(五十音順)

  • ヴイエムウェアの山内 光氏(カントリーマネージャー)
  • エヌビディアの大崎真孝氏(日本代表 兼 米国本社副社長)
  • エフサステクノロジーズの保田益男氏(代表取締役社長CEO)
  • シスコシステムズの濱田義之氏(代表執行役員社長)
  • デル・テクノロジーズの大塚俊彦氏(代表取締役社長)
  • 日本エイ・エム・ディのジョン・ロボトム氏(代表取締役社長)
  • 日本オラクルの三澤智光氏(取締役 執行役 社長)
  • 日本ヒューレット・パッカードの望月弘一氏(代表執行役員社長)
  • ニュータニックス・ジャパンの金古 毅氏(代表執行役員社長)
  • ネットアップの中島シハブ・ドゥグラ氏(代表執行役員社長)
  • レッドハットの三浦美穂氏(代表取締役社長)
  • レノボ・エンタープライズ・ソリューションズの多田直哉氏(代表取締役社長〈取材時〉)

 AI技術の導入を1つのソリューションだけで実現できるものではない。連載記事の第2回目において、日本企業成長の鍵の一つは、企業のトップが明確にAI活用のビジョンを持ち、トップダウン型の取り組みを進めることにあると指摘した。ベンダーとディストリビューターのオープンな共創から、さまざまなソリューションや具体的な事例を得られるようになれば、企業トップのビジョンも明確になるだろう。

 AI共創会議をきっかけに、AIによる日本企業成長の取り組みが結実する日が来ることを期待したい。

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アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2025年3月27日