ファイル共有サービスを選定時には、セキュリティや運用性、操作性、コストなどさまざまな懸念が浮上する。中小企業が押さえておくべきサービスの選定ポイントを、事例を交えて紹介する。
中小企業では、ファイルサーバやNASを使い続けるケースは今でも珍しくない。1カ所しかない拠点で数人が情報共有するだけならそれで十分かもしれないが、テレワーク需要や拠点増設などで働き方が変化すると情報共有の非効率性やセキュリティの懸念、BCP施策など、さまざまな課題に直面することになる。
こうした課題を解決し、従業員がスムーズに情報を検索したり共有したりできる手段として、ファイル共有サービスのニーズが高まっている。しかし知名度だけでサービスを選ぶと、中小企業にはオーバースペックだったり操作性の違いやコストの増大、運用管理の難しさといった新たな課題が生じたりすることがある。
DX(デジタルトランスフォーメーション)推進や働き方の多様化が叫ばれる中、社内外の情報共有の在り方もアップデートが必要だ。中小企業がDXの第一歩としてファイル共有サービスを選定する際に押さえるべきポイントを解説する。
ファイル共有にまつわる「中小企業に特有の課題」について、東日本電信電話(以下、NTT東日本)の菊池保文氏(ビジネス開発本部 クラウド&ネットワークビジネス部 クラウドサービス担当 担当課長)は次のように述べる。
「従業員50人に満たない規模の企業では、従業員の個人PCだけにデータを保管し、チームで情報を十分に共有していないケースがよくあります。オンプレミスのファイルサーバやNASを運用していたとしても、オフィスにいなければデータにアクセスできません。そうなると、時間や場所を問わず迅速に情報共有するのは困難です」
このやり方はセキュリティの観点でも課題が残る。ローカルのノートPCにデータを保管すると、持ち運びの際に紛失や盗難のリスクがある。「こういうワークスタイルの中小企業は、社外の取引先や顧客との情報共有にメールやUSBメモリ、CD-ROMなどを使うことが珍しくありません。特に可搬型メディアは、紛失と盗難による情報漏えいのリスクがあります」
このような課題に直面していても、人手不足から専任のIT担当者を配置する余裕がなく、トラブル対応に悩む中小企業は少なくない、と菊池氏は指摘する。外出先や自宅からオフィスのファイルサーバやNASに安全にアクセスできるようにするにはVPNの構築やファイアウォールの設定、不正アクセス対策などが必要だ。ファイルサーバやNASを運用するには、ハードウェアのメンテナンス、定期的なデータのバックアップ、障害発生時の対応など、多くの管理作業が発生する。しかし兼任のIT担当者にとってこれらは実現難易度が高く、負担も大きい。
NTT東日本の村瀬 慧氏(ビジネス開発本部 クラウド&ネットワークビジネス部 クラウドサービス担当)は、「建設業のように拠点が頻繁に変わる業態では各現場でNASをばらばらに設置しており、煩雑な運用に悩んでいるという声をよく聞きます」と話す。「中には、社長自らサーバを管理しているケースもありました。バックアップを十分にできていないことも多いようで、機器トラブルによるデータ紛失のリスクは見過ごせません。日本は自然災害が多いため、NASの故障リスクも十分に考慮する必要があります」
こうしたデータの共有、管理の課題を解決するアプローチの一つが、ファイル共有サービスを利用することだ。場所を問わずデータにアクセスでき、拠点をまたいだスムーズな情報共有が可能になる。主要なサービスはバックアップやセキュリティ機能も含めて提供しているため、ユーザー企業はこうした周辺ツールを別途用意する必要がなく、管理の手間も軽減できる。データを1カ所に集約して管理し、従業員が検索、共有しやすい環境を整えるのは業務のデジタル化の第一歩であり、DXの観点でも重要だ。
しかし菊池氏によれば、クラウドサービスに不安を抱いている企業はまだまだあるという。その一因として、データの所在を把握しにくいことが挙げられる。「『目の前のハードウェアの中にデータがあることが安心』という価値観は根強いようです。海外のファイル共有サービスは国内にデータセンターがないから不安、という意見も聞きます」
複数のベンダーがファイル共有サービスを提供しているが、50人前後の企業規模では料金プランが選びにくく、最小単位のプランでも容量を使い切れなかったり想定以上の費用がかかったりすることもある。試しに数アカウント導入してみたが、「使い慣れたファイルサーバと操作性が違う」という戸惑いから普及しなかったケースもあるようだ。
NTT東日本は、長年にわたり中小企業の情報共有や管理の課題に向き合い、その知見を生かしたサービスとして「コワークストレージ」を提供している。前述のような「中小企業に特有の課題や不安」を払拭(ふっしょく)するために、運用負荷の軽減や操作性、コスト面に配慮したサービス設計を目指した、と菊池氏は説明する。
コワークストレージの特徴の一つが操作性だ。コワークストレージの保存領域はWindowsの「エクスプローラー」でアクセスでき、ファイルサーバやNASと同じ感覚でフォルダやファイルを操作できる。「業務フローを変更する必要がなく、エンドユーザーが戸惑うこともありません」と菊池氏は強調する。
個人用フォルダや社内共有フォルダに加え、社外との情報共有に使える「プロジェクトフォルダ」機能がある。プロジェクトフォルダは、取引先や外部パートナーをメールで招待するだけで、アカウントを作成しなくてもファイルを共有できる。「建設業をはじめ、プロジェクトごとに社内外の人員でチームが編成される組織で特に重宝されています。設計図や作業報告書などの重要なファイルをプロジェクト単位で一元管理でき、メールで送れない大容量の図面もスムーズに共有できます。常に最新の情報を参照できるため、作業ミスの防止にもつながります」(村瀬氏)
共有リンクを発行して大容量データをやりとりすることも可能だ。情報流出の防止に配慮しており、ダウンロード回数や有効期限、パスワードを設定する機能もある。
コワークストレージは国内のデータセンターで提供されている。NTT東日本は日本企業向けの厳格なセキュリティ基準に基づいてサービスを運営しており、データのバックアップや障害対応も国内の技術チームが対応する。
アクセス権限の機能が日本企業の商習慣に準じた設計になっている点も特徴と言える。
ファイルサーバは一般的に、組織ごとにフォルダを作成し、階層構造を用いてアクセス権を管理する。これは日本企業に特有の考え方であり、階層的な組織構造や親子関係を持たせる作り方だ。しかし海外ベンダーのファイル共有サービスの中にはこのような階層構造に基づいたアクセス権の設定が難しく、再現が困難なものがある。「コワークストレージは、従来のファイルサーバと同じように階層構造を設定、運用できます。従来の運用を維持したまま、保存先をクラウドに移行できるのは大きなメリットです」(村瀬氏)
国産サービスならではの手厚いサポートも顧客に評価されるポイントだという。「操作や管理で分からないことがあったときに、電話ですぐに不安を解消できるのがうれしいというお声を頂いています。電話よりテキストでのコミュニケーションを好まれるお客さまもいらっしゃいますので、チャットbotによる問い合わせ窓口も準備中です」(村瀬氏)
中小企業に適した料金体系も、コワークストレージの魅力の一つだ。保有するデータ量について村瀬氏らがユーザー企業にヒアリングしたところ、50人規模の企業の約7割が1TB未満だった。
そこでNTT東日本は、そうした小規模組織でも利用しやすい、ちょうどいいライセンス体系を用意している。100GBのストレージ容量と5つのユーザーIDを含む「スタートプラン」は月額2750円(税込み。1ID相当/550円)から利用でき、1TB/10IDの「スタンダードプラン」は月額6600円(税込み)となっている。ストレージ容量やIDは追加できる。
「コワークストレージは、データ総量1TB以下の企業にとってコストを最適化できるように配慮したサービス設計にしています。ある建設業のお客さまは本社でNASを運用していましたが、現場との情報共有に課題がありました。コワークストレージを30ID/3TBで契約し、取引先とのプロジェクトフォルダを活用した情報共有に移行して課題を解決できた上、容量やIDを追加してもリーズナブルだと評価していただきました」(菊池氏)
NTT東日本は、コワークストレージをきっかけに中小企業のDXを支援するために、さらなるサービス強化を図っている。
「Microsoft 365」との連携機能や電子帳簿保存法に準拠した機能など、日本企業からのニーズが高い機能は標準で備える。自動仕訳や承認機能などの高度なオプションを加えた上位版「コワークストレージプラス」も2024年から提供している。
「まずは利便性の向上や業務効率化の効果を肌で感じてもらうため、100GB/5IDのスタートプランを30日間無料でトライアルしていただける機会を用意しました。コワークストレージの基本機能を全て利用できます。コワークストレージを使って社内の情報を1カ所に統合して保管と共有を高度化することで、ぜひDXに向けた第一歩を踏み出してください」(菊池氏)
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アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2025年3月22日