多くの企業がDX実現を目指しているが、一部の業務をデジタル化するだけではDXとはいえない。情報共有と文書管理を起点にして見積書や請求書などの帳票業務プロセス全体を最適化して、中小企業が無理なくDXのステップを進める方法を紹介する。
中小企業は、業務負荷の平準化やプロセスの標準化に課題を抱えがちだ。人手不足のために誰もがマルチタスクをしなければならず、社長、営業、経理が顧客と見積書や請求書のやりとりをするようなシーンは珍しくない。しかしこのような業務体制は属人化の問題が出やすく、ファイルやフォルダの命名ルールや保管場所がばらばらになったり「あの書類はいま誰の承認待ちだっけ?」と管理が曖昧になったりするなど、さまざまな困り事が起きる可能性がある。電子帳簿保存法の改正で電子取引データの適切な管理が義務化したことで、帳票業務のデジタル化に弾みがついた。この機会に業務プロセスやワークフローも抜本的に見直すことが望ましい。
改善の鍵は、業務の起点となるファイル共有と、承認や確認プロセスのIT化だ。これらの取り組みはデジタルトランスフォーメーション(DX)の第一歩でもある。ヒト・モノ・カネのリソースが潤沢ではない中小企業がこれらの課題を解決する効果的な手法を紹介する。
ファイルやフォルダを統合管理し、テレワークをしている従業員や社外の取引相手などとデータをやりとりする際に便利なのが、クラウドのファイル共有サービスだ。拠点をまたいだ情報共有がしやすくなる他、ペーパーレス化の第一歩として導入する企業が増えてきた。NASやファイルサーバはオフィスにいないとデータを扱えず、新しい働き方に適さない。安全なリモートアクセスを実現するためにVPNやファイアウォールなどを導入するのも、中小企業にはハードルが高いものだ。かと言って、ノートPCにデータを入れて持ち歩いたりUSBメモリやCD-ROMなどの可搬型メディアを使ったりするのはセキュリティリスクが高い。ファイル共有サービスの導入は、BCP施策やセキュリティ対策、運用管理の面でもメリットがある。
中小企業の「使いやすさ」に重点を置いたファイル共有サービスの一つに、東日本電信電話(以下、NTT東日本)の「コワークストレージ」がある。保有するデータ量が1TB未満の、50人以下の組織にとってちょうどいいライセンス体系となっているのが大きな特徴だ。国内企業の商習慣に沿った各種機能やNTT東日本のサポート体制の手厚さも好評を博しているという。
コワークストレージは単なる「情報の保管場所」の役割にとどまらず、その情報をやりとりするプロセス全体を効率化してDXを前進させる機能を備えている。NTT東日本の菊池保文氏(ビジネス開発本部 クラウド&ネットワークビジネス部 クラウドサービス担当 担当課長)は、次のように説明する。
「中小企業には、対面でのコミュニケーションやメール、紙を使ったやりとりが多く残っています。そのため、単にドキュメントを電子化してストレージに保存・共有するだけでなく、ドキュメントを起点にした業務プロセスを最適化して業務効率化に直結させる仕組みが必要です」
2024年の電子帳簿保存法改正によって、電子取引データの保存要件が厳格化された。受発注、出荷、請求、支払いなど一連の取引で電子的にやりとりしたデータは適切に保存、管理することが求められる。コワークストレージは、電子帳簿保存法に準拠した文書管理機能や、ファイルの共同編集機能(クラウド版オフィススイート「Microsoft 365」との連携による)を標準で備えている。
コワークストレージは取引先名や取引年月日で迅速にデータを検索できる「検索機能」、監査対応に役立つ「証憑(しょうひょう)データの一元管理」など、電子帳簿保存法の要件を満たす機能を搭載している。
取引先との紙のやりとりをデジタル化し、業務の効率化を図る機能もある。「特定メーカーの複合機とコワークストレージを連携させることで、紙の書類をスキャンすると自動で電子帳簿保存法対応フォルダに格納したりFAX受信データを特定フォルダに保存したりできます。テレワークがメインなのに、『FAXを受け取るためだけに出社する』といった無駄を省くこともDXの第一歩と言えますね」と、菊池氏は説明する。
前述の通りコワークストレージはMicrosoft 365との連携機能も搭載している。Webブラウザのコワークストレージの画面から「Microsoft Word」や「Microsoft Excel」のファイルを直接編集できる他、複数人での同時編集にも対応している。連携後はデータの保存先が「Microsoft SharePoint」ではなくコワークストレージになり、「Microsoft Teams」の画面でファイルを共有したり編集したりすることも可能になる。NTT東日本の村瀬 慧氏(ビジネス開発本部 クラウド&ネットワークビジネス部 クラウドサービス担当)は次のように述べる。
「Teamsを使った従来のファイル共有方法だと、相手には『受信者のSharePointの保存領域にコピーされたファイル』という形で届きます。そのファイルを編集しても、元のファイルには変更が反映されません。編集後のファイルと元データが別々に存在することで、バージョンの整合性が取れなくなってしまいます。Teamsとコワークストレージを連携させた状態なら『このファイルが常に最新』という意識の下で共同編集ができ、ファイルのバージョン管理も楽になります」
前述の機能に加え、承認プロセスを管理するワークフロー機能「ドキュメントレビュー」と、格納したファイルをAI技術によって自動仕訳する機能「スマートフォルダ」を搭載したのが、オプション提供の「コワークストレージプラス」だ。
ドキュメントレビューは、コワークストレージに格納したドキュメントに対してレビュー依頼や承認依頼のアクションを数クリックで作成できる機能だ。ワークフロー管理に特化したツールのように、承認フローを事前に設定する必要はない。
「中小企業はそもそも厳密な承認フローを定めていないことがあります。誰に承認してもらうのかが、時と場合によって異なることも珍しくありません。ドキュメントレビューはこの柔軟性に寄り添い、手軽に申請承認作業のデジタル化を実現できます」(村瀬氏)
紙伝票とはんこで承認フローを回していると「承認し忘れていた」「承認の進捗(しんちょく)状況が分からない」などのトラブルが起きがちだが、ドキュメントレビューを使えば進捗状況はチームの全員がコワークストレージの画面で把握できる。場所を問わず確認・承認が可能になり、証跡も残る。申請漏れや承認の遅延を防げるだろう。
ドキュメントレビューは、社内の承認フローだけでなく取引先への確認依頼にも使える。会報や会議の議事録などを社内外の100人のメンバーに送付して、既読状態をチェックするような回覧用途でも活躍する。「アイデア次第でさまざまな使い方ができる機能です。社内イベントなどの案内をドキュメントレビュー機能で回覧し、出欠アンケートを採っているユーザー企業もありますよ」(村瀬氏)
スマートフォルダは、このフォルダに保管したファイルの内容をAI技術で解析し、見積書、請求書、契約書などの種別などを認識して適切なフォルダに再分類してタグ付けする。
電子帳簿保存法におけるファイル名は、「取引年月日」「取引金額」「取引先名」の3項目を入れて検索機能の要件を満たす必要がある。手作業でリネームやタグ付けをしても法的には問題ないが、作業者の負担が大きい。菊池氏らが受けた相談の中にも、以前は監査のために手作業でファイルのリネームやタグ付けをしていたものの、負担が大き過ぎて困っていたという話があるそうだ。
「スマートフォルダなら自動的にドキュメントの内容を判別し、取引情報や書類番号などのタグ付けができます。手書き文字やレシートなどのスキャンデータも読み取りますので、一元的な文書管理がしやすくなります」(村瀬氏)
NTT東日本はコワークストレージの「30日間無料トライアル」を実施しており、コワークストレージプラスの機能も回数限定付きで試用できる(ドキュメントレビュー機能は10回まで、スマートフォルダ機能は10ページまで)。まずは無料トライアルで全ての機能を試し、紙を使った業務プロセスをデジタル化する価値を実感できれば、無理なくDXのステップを踏み出す自信につながるだろう。
菊池氏は今後の機能拡充に対する意気込みをこう語る。「NTT東日本はコワークストレージによって、中小企業のDX推進を強力に支援したいと考えています。ビジネスフォンの通話データをコワークストレージに保管して共有する機能も実現しており、今後は生成AIによる通話データの文字起こしや議事録の自動作成なども提供予定です。他にも、電子サインを組み合わせて取引先との契約フローをドキュメントレビューだけで完結させるような機能を増やしたいですね。スマートフォルダに業界特化の機能を持たせ、製造業や建設業向けの図面を分析させるといったユースケースも考えられます。新機能に対するお客さまの要望は、積極的に取り入れていきたいと思います」
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