ユーザーと対話し理想のUIを追求 「デザイン思考」がIT運用の常識を変えるデザイン思考×アジャイルで実現した「毎月リリース」の舞台裏

IT運用現場を「守り」から「攻め」に変革するツールを標ぼうする「WebSAM Cloud」。NECは、デザイン思考とアジャイル開発によって品質を維持したまま「毎月の機能リリース」を実現した。変革を支える開発体制の舞台裏を聞いた。

PR/ITmedia
» 2026年01月28日 10時00分 公開
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 ITインフラの運用管理者は、鳴りやまないアラート通知に追われ、「システムを止めてはならない」というプレッシャーと日々向き合う。こうした環境では、新しい技術への挑戦や業務改善に取り組む余裕は生まれにくい。IT部門がコストセンターという位置付けから脱却できない背景にあるこの課題をどう解消できるだろうか。

 そのための選択肢の一つが、NECが2025年12月にリリースした、IT部門の「守り」から「攻め」への転換を支援する「WebSAM Cloud」だ。アラート通知の自動判断やインシデント担当者への自動エスカレーション、AI支援によるインシデント対応の高度化といった機能によって運用担当者の負担を軽減し、ビジネス貢献のための時間を生み出す。

 WebSAM Cloudが運用現場のニーズに的確に応えられる背景には、NECが開発手法そのものを大幅に変革したことがある。「大企業らしくないスピード感」とユーザー企業を驚かせた迅速なリリースと、IT運用に求められる安心・安全を確保する品質の両立を同社はいかに実現したのか。WebSAM Cloud開発に携わったNECの米田匡史氏と開発と運用の両面に携わっている柴山拓也氏に話を聞いた。

「使いやすさ」の背景にあるデザイン思考の実践

 WebSAM Cloudは純国産のSaaSであり、マニュアルを含む全ての資料が日本語で提供される。UI(ユーザーインタフェース)も日本企業のニーズにきめ細かく対応したものになっている。その背景にあるのがデザイン思考の実践だ。

 デザイン思考とは、ユーザーを中心に置き、現場の観察や担当者との対話を通じて課題を発見し、試作と検証を繰り返して解決策を磨き上げる開発手法だ。NECはWebSAM Cloudの基になった2製品「WebSAM IT Process Management」(以下、ITPM)と「WebSAM Automatic Message Call」(以下、AMC)の刷新時からデザイン思考を実践しており、プロダクトデザイナーが開発で重要な役割を担ってきた。

米田氏 NECの米田匡史氏(プラットフォーム・テクノロジーサービス事業部門 テクノロジーサービスソフトウェア統括部 シニアプロフェッショナル)

 従来のウオーターフォール開発では、まず開発者が仕様を決め、その後UIデザインをデザイナーに発注するケースが多い。これに対し、今回の開発ではプロダクトデザイナーが開発の上流工程から参画してユーザー体験(UX)の設計から携わった。開発全体を統括した米田氏は、デザイン思考導入の意図をこう説明する。

 「製品開発チームだけで仕様を設計すると、開発者の視点に偏った内容になることがありました。デザイン思考を導入することで、日々の運用業務を担うオペレーターやエスカレーション先のベンダーなどさまざまな立場の方を含めた“ユーザー視点”の開発が可能になると考えました」

 プロダクトデザイナーは、ユーザー企業を訪問して運用現場の担当者への聞き取りや行動観察を行う。そこで得た情報を基にモックアップを作成して運用現場の担当者に操作してもらい、「次にどのボタンを押せばいいのか迷っている」といった反応から改善点を見いだしてUXとUIを磨き込んだ。

 プロダクトデザイナーと開発者の協働も工夫した。プロダクトデザイナーが作成したモックアップを基に、実現性や改善案を開発者と議論してブラッシュアップ。プロダクトデザイナーが次に開発する項目について現場での聞き取りを進める間に、開発者が前回の聞き取りで出た改善点を実装する。このサイクルによって効率的に開発している。

毎月リリースを支えるアジャイル開発体制

 NECはITPMとAMCでも毎月のように機能リリースやアップデートを続けてきた。2024年は17回のリリースを実施している。SaaS事業にアジャイル開発体制を導入したことは部門初の取り組みだったが、NECでは以前から推進されており、他製品で培った経験や知見を継承した。

 ただし、毎月リリースの実現にはプロセスの大幅な見直しが必要だった。従来の開発スパンは1年単位だったため、企画や出荷判定のサイクルも長期間だった。企画を月ごとのマイルストーンに分割して品質確認の対象範囲を変更箇所に絞るなど、プロセス全体を再設計した。

柴山氏 NECの柴山拓也氏(プラットフォーム・テクノロジーサービス事業部門 テクノロジーサービスソフトウェア統括部 運用DXサービスグループ マネージャー)

 技術面では、デプロイを自動化する必要があった。開発と運用の両面に携わった柴山氏は「手作業でのデプロイを毎月継続するとミスにつながります。そこでAWSのマネージドサービスを利用してCI/CD(継続的インテグレーション/継続的デリバリー)のパイプラインを組み、徹底的に自動化しました」と語る。

 開発チームは20〜30代前半が中心で、アジャイル開発に初めて取り組むメンバーが多い。同社の先行事例を参考に試行錯誤を重ね、教科書通りのスクラムの型を当てはめるのではなく開発チームに合わせて柔軟にアジャイル開発の文化を醸成した。

 開発手法の転換で大きな取り組みになったのが、チームの意識改革だった。米田氏は「ウオーターフォール型の開発では、一度決めた仕様は変えないことが前提です。しかしアジャイル型の開発では『実装後に課題が見えたら、すぐに軌道修正する』という柔軟性が求められます」と話す。

 従来の開発では、できるだけ多くの機能を一度に提供しようとする傾向があり、結果的にリリース時期が遅延することもあった。毎月リリースという短いサイクルを目指すようになってからは、ユーザー企業が今最も必要としている機能を見極めて開発リソースを絞り込み、提供する。そしてユーザー企業に機能を使ってもらい、フィードバックを受けて改善に取り組む。この姿勢が、リリース速度とユーザー企業の満足度の向上につながっている。

 こうした柔軟な開発体制を定着させるため、米田氏は開発者全員が進捗(しんちょく)と課題を毎朝共有する習慣を徹底した。週1回のスプリントレビューには、開発者だけでなく販促担当者や運用担当者、プロダクトデザイナーなども参加し、意見を多角的にぶつけ合った。これが「変更は当たり前」という文化を根付かせ、チーム全体のモチベーションを高めた。

スピードと品質をどう両立させているのか?

 頻繁なアップデートは、不具合が発生するリスクと隣り合わせだ。高い信頼性が求められるIT運用ツールで品質をいかに確保するか。その答えが、NEC自身がファーストユーザーになる体制だ。

 NECにはユーザー企業の運用を請け負うマネージドサービス部門がある。開発チームは、ユーザー企業に先駆けて同部門に製品を使ってもらい、改善点を洗い出した。WebSAM Cloudで自社サービスを監視し、そこから出てきた改善点を開発部門に伝え、実装するサイクルだ。マネージドサービス部門からの要望に応え、監視機能の強化やプロジェクト横断の一括操作機能を実装し、処理負荷が他のユーザー企業に影響しないようにアーキテクチャを見直した。

 アラート管理も、実運用を通じて改善された。NEC自身がWebSAM Cloudのサービスを運用する上でAMCを使っており、そこから得られた知見を基にアラートのフィルター設定の仕組みをブラッシュアップし続けたことが、製品の実用性を支えている。柴山氏は「運用開始後の初期段階では『アラートを見逃したくない』という心理から疑わしいものを全て通報しており、まさにアラートに埋もれている状態でした。しかし、AMCに蓄積されたナレッジや改善されたフィルタリング機能を活用することで、『このパターンは静観でよい』といった人が行うような判断基準を作り、フィルター設定を最適化しました」と振り返る。

 ユーザー企業の製品活用を支援するカスタマーサクセスマネジャーとの連携も特徴的だ。カスタマーサクセスマネジャーがユーザー企業を訪問する際に開発者やプロダクトデザイナーが同行し、「困り事」を運用担当者から直接聞いた。技術的な実現可能性をその場で擦り合わせることで、迅速に開発に反映できる。

 毎月のリリースでは、大きな機能追加だけでなく監視パターンの設定や通報先の設定をさまざまな運用に使えるように細かい改善も積み重ねている。ユーザー企業と議論しながら「本当に欲しい機能」を絞り込み、一丸となってサービスを育てている。

「100点満点が当然」の運用現場、AIをどう利用する?

 WebSAM Cloudは、リリース時からAI機能を提供している。現在は回答案の自動生成や品質レビュー、履歴の要約などを提供。2026年には、解決案のサジェストやナレッジ作成支援、アラートの自動フィルタリング提案などの機能を順次実装する予定だ。

 ただし、AIに全てを任せるアプローチは採らない。米田氏は「100点満点が求められる運用の現場で、AIに全てを任せるのはリスクが高いと考えるお客さまもいます。AIはあくまでも人をサポートする役目であり、最終判断は人が下す。これが現時点での最適な形だと考えています」と語る。AIの安全性にも配慮しており、AI学習データ(WebSAM Cloudを運用する中で蓄積されたデータの他、ユーザー企業がアップロードしたFAQや手順書など)はユーザー企業の業務でのみ参照し、NECによるAI学習には使われない。

 もう一つの重要な視点が説明責任だ。AIの判断がブラックボックス化すると、障害発生時に原因や対応の根拠を説明するのが困難になる。そこで、運用担当者が上司やユーザー企業に「なぜこの判断をしたのか」の根拠を示せるための透明性も確保していく必要があり、今後実装する機能で提供予定だ。

IT部門を「価値創出」の場へ

 今後、WebSAM Cloudをどのようにアップデートするのか。柴山氏は意気込みをこう語る。

 「WebSAM Cloudへの統合で機能は大幅に拡張されましたが、それで運用負荷が増えるのでは本末転倒です。私たちは運用現場の体験をより良くすることを最優先に、今後も使いやすさを改善し続けます。新しい価値を迅速に届けつつ、安定性も確保する。その両立を使命として取り組みます」

 米田氏は、WebSAM Cloudの価値を次のように表現する。

 「運用の現場は100%の稼働を達成しなければなりません。そのミッションに挑み続けるIT部門の負担を最小化しつつ、価値創出に取り組める環境をつくりたい。WebSAM Cloudによって生まれる余裕で新しい取り組みに挑戦してもらう。運用現場を新しい価値を生む場所に変えることが、われわれの使命です」

 「アラート地獄」や反復作業から解放されて生まれる時間的・心理的余裕こそ、AI活用やユーザー企業の満足度向上につながる施策を検討する原動力だ。IT部門が「コスト部門」から「価値創出部門」へと転換するための第一歩として、WebSAM Cloudはユーザー企業に寄り添う存在となる。

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アイティメディア営業企画/制作:ITmedia エンタープライズ編集部/掲載内容有効期限:2026年2月27日