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コグノス 代表取締役社長
田上一巳氏
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「トップダウン経営だからこそ下から情報が上がってくる」と話すのは、ビジネスインテリジェンス(BI)最大手、コグノスの田上一巳社長。企業が持つ膨大なデータを分析し、担当者の必要な情報として加工して提供するのがビジネスインテリジェンスだ。自社の経営状態を可視化し、トップが適切な戦略を立案するための強力な武器として現在注目を浴びている。裏を返せば、現場の姿が確実に経営者へと伝達される組織とも言える。
BIを使うことで、経営者なら細かいKPI(Key Performance Indicator )のチェック、マーケティング部門なら売れ筋と死に筋製品の把握、営業担当者なら担当顧客のランク付けなど、生の数値データを基にあらゆる事柄を分析することができる。選択と集中が進む中、今後は個々の社員のレベルでも、データの裏づけをベースにしたビジネスを行うことが求められてくる。
これまでコグノスは、さまざまなソースのデータを横断的に分析するOLAP(OnLine Analytical Processing)ツールとして知られる「PowerPlay」を核としてビジネスを展開してきた。そして先日、PowerPlayと並んで、新たにレポーティングツール「Cognos ReportNet」を発表している。BIベンダーとして、フルラインの品揃えを展開する考えだ。
ReportNetによって、ユーザーは、膨大なデータベースの中から的確な情報を集め、レポートとして参照できる。さらに、複数の情報を並べて関連性を1つの画面で直感的に見られる。また、シングルサインオンにも対応しており、ポータルとも連携できる。Webブラウザ上で、質の高いレポートをドラッグ&ドロップの要領で簡単に作成することも可能になっている。
同社のマーケティング副本部長、山田和昭氏は、「インターネット上で既存のアーキテクチャを引きずるには限界があり、オーバーヘッドを伴う。ReportNetは純粋なWeb世代の製品として開発した」と製品コンセプトを話す。100%ピュアWeb対応であることがReportNetの最大の特徴だ。アプレットのダウンロードやプラグインのインストールなどは必要なく、ユーザーはブラウザがあればどこからでも必要な情報にアクセスできる。
また、ReportNetは、全体としてエンタープライズ志向の製品であることが分かる。例えば、サーバをデータ層、アプリケーション層、Webサーバ層に分割し、必要に応じて負荷を分散し、可用性を高めることも可能であるため、ユーザーが数十万人規模になっても十分に対応できるという。
田上社長は「現在のビジネス環境ではスピードが何より大事」と言い切る。そのためには、異種システム間をつなぐ必要があるが、ここ数年で普及したインターネットやイントラネットにより、物理的な連携という意味では難しくなくなってきている。
「BIの世界もつなごうよ、というニーズが高まった」という田上氏の言葉に、コグノスがReportNetをリリースした理由が垣間見られる。OracleやUDB、SQL Serverなどのデータベースや、SAPやOracle、PeopleSoftなどの基幹アプリケーション、あらゆるソースのデータを、システム的に違いを越えてユーザーの都合のいい形に加工してレポーティングできることで、ユーザーの業務の効率性を向上させることができる。

バランススコアカードが脚光を集めるなど、現在は、指標を意識した経営を行うことが経営者に求められている。売上額は高いのに倒産を余儀なくされる企業があることからも、利益の確保をベースに仕事をしなくてはならない。そのためには、「数値目標を掲げて経営を行うことが必要」と田上氏は強調する。
日産のゴーン社長は、現金の回収にどれくらいかかっているのか、顧客のサポートへの満足率、商談にかかったコストなどなど、一般的な日本企業では持たないような細かい指標をベースに、経営改革を行ったという。「日本にはなかったような考え方が入ってきたのはコグノスにとって追い風」と、同氏は本音をこぼした。
ReportNetへの各パートナー企業の反応について、田上氏は「良すぎて困るくらい」と即答する。帳票とはコンセプトが異なるというものの、OLAPなどの分析ツールより理解しやすいのか、同社の主力製品である「PowerPlayよりも引きがいい」という。稼動プラットフォームの幅広さも魅力になっている。WebアプリケーションサーバではWeblogicやWebsphere、OSはWindowsだけでなくSolaris、AIX、HP-UX上でも稼動する。
リセラーやインテグレータからは、独自のセミナーを開催したいといった問い合わせも多くもらっているという。今後は、どの企業にでもReportNetを提供できるようにするために、パートナー企業への啓蒙を進める考えだ。
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