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システムにできることは、ポカを防ぐことだけだ
「経営課題を解決するシステム」に疑問

 「企業の経営課題」と一口に言ってしまっても、それはさまざまだ。財務、人事、競合関係、サプライヤー、顧客、労働組合の存在、はたまた昔からのしがらみ……。ビジネスを構成するあらゆる部門、現場が直面する事象は、すべて課題と言うことができる。「問題なし」と断定した瞬間に、企業は成長を止める。

 常に問題意識を抱え、社員の一人ひとりが、組織をより優れたものにしようと努めたことは、かつて日本企業の強みとして欧米に紹介された。そして、当時とは状況が変わった今でも、単なるimprovement(進歩)では言い表せないKAIZEN(改善)を、そのニュアンスまで含めて知る欧米人も多い。

 ただ、KAIZENは現場の意識について語られる場合であり、経営という大きな視座からは、すべてのKAIZENに強くコミットできるわけではない。このため、経営課題解決のための手法として、経営者向けの意志決定支援システムを考える場合、組織力をトータルに高めるKAIZENとは異なるやり方が必要になってくる。

プロジェクト単位で全社を捉える

 経営者の使える時間は限られている。そこで、組織はピラミッド構造とも呼ばれる階層構造を取り、権限を下へ下へと委譲する。それでも特別なプロジェクトは、社長や専務取締役の決裁事項になったり、直轄されたりするが、経営者が全体を見渡すためには、プロジェクト単位でマクロ的に企業を見る視点が必要になってくる。

 企業の既存部門やそれが行う業務は、そのままプロジェクトと位置づけられる。一方、新規に立ち上げられたプロジェクトは、成功するか失敗する。もし成功すれば、それが事業部として継続的にビジネスを行ったり、スピンオフされて子会社になったりする。失敗すれば、チームは解散する。このように、企業は、プロジェクトを立ち上げ、維持し、解散することで、有機的にその姿を変えてゆく。

 経営者の仕事は、その企業行動すべてをうまく管理することだ。ごくまれに、ひとつの最重要プロジェクトをうまく主導したことでクローズアップされる経営者もいるが、それはほんの一握り。全体を把握し、深刻なトラブルが発生する前に手を打ったり、もしくはトラブルをできるだけ早く収束することが、経営者の最も大切な仕事だろう。

ポカを防ぐ仕組みで意志決定を支援

 今や、経営者は「知らなかった」では済まされない時代になった。その「知らなかった」がポカである。これに対して、ミスは意志決定の失敗だ。ここで重要なのは、ミスは別の成功でカバーできるということ。ポカは、気をつけてさえいれば防げる。経営者にとっての意志決定支援システムに最も求められるのは、このポカをなくす仕組みと言うことができる。

 企業の経営課題を解決するためのシステムなんて、この世にない。システムは人間が作ったものである以上、人間を超える発想力は生まれてこない。だから、SF小説に描かれるように、ロボットが意志決定することは、将来的にもありえないのだ。意志決定は人間がする。だから、意志決定の前に、各プロジェクトの現状を教えてくれるシステムが、経営者のための意志決定“支援”システムと言えよう。

 例えば、何をもってプロジェクト失敗と判断するかということも、重要な意志決定基準だ。ただ、完全に失敗してから撤退するのでは、遅い。ここでも、事前に手を打てるための判断材料が必要なのだ。こうした仕組みは、古くからEIS(役員情報システム)として存在していて、今のBIではレポーティングやCPM(企業パフォーマンス管理。BPMやEPMと呼ばれることもある)の領域となる。

 「経営課題を解決するシステム」と大枠でくくってしまうと、本質が見えなくなる。その前提として、最終的に意志決定するのは人間だということを、改めて考えてもらいたい。必要な情報は何なのか。それをどうやって使いたいのか。まずはニーズをはっきりさせなければ、BIプロジェクトは必ず失敗する。

月刊コンピュートピア,編集長:井津元由比古

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