本当はどう思われている? 企業のIT部門が見るITIL:悲劇は喜劇より偉大か?
ITILを導入すると、運用管理コストが削減できる。そんな期待が高まっている。実際のところはどうなのだろうか。ITIL導入のための勉強会を開いただけで終わってしまう企業も多いという(攻めのシステム運用管理)。
システム運用やサービス提供業務をいかに効率化していくかについてまとめた「ITIL」。企業のIT予算の約70%がシステム運用管理コストで占めるというが、ITILを導入するとこの費用が削減できると期待されている。これは実際のところどうなのだろうか?
SLAについて
ITIL導入で最も重要なことは、システム運用にSLA(サービスレベルアグリーメント)の概念を導入することである。SLAではサービスレベルを数値目標として定めるので、最低限システム運用のアクティビティや品質を定量的に測定することが求められる。
これらを定量的に測定する文化が浸透していない企業では、システム運用にどの程度コストがかかっていて、どの程度の品質なのかを把握するのが難しい。しかし、それらが定量化されれば達成目標が共有され、サービスレベルが大幅に向上するという。
ITILは難解?
ITILに定められていることに特に難解な点はない。だが、ITILはまだ期待されているほどには普及していない。ITIL導入を検討した企業の中で、とりあえず勉強会を開くが、それだけで終わってしまう企業も多いとも聞く。企業のシステム部門の立場から見ると、どこから手をつけてよいか分からないことが理由だと思われる。
ITILはシステム運用やサービス提供業務のベストプラクティスであり、必ずしもすべての項目を満たす必要はない。「手をつけられるところから始めればよい」と言われる。しかし、SLAの考え方を導入するということは、関連部署の意識にパラダイムシフトを求められる。その点では、最初の導入段階のハードルは非常に高いと考えている。
ITILは費用がかかる
最近では、ITベンダーによるITIL導入の提案が増えてきた。ITIL導入のコンサルティングと、ITIL運用を支援するツールがセットにされた商品である。これらの商品を導入するには当然、費用がかかる。すぐにコスト削減とは行かないものだ。
ITILの本質を理解しないまま、ベンダーの言いなりにツールを導入しては、ITIL導入が失敗するのは目に見えている。ITIL導入はSLAベースのシステム運用へ変革することが本質であり、ツールはそのための補助でしかない。このことをよく理解している企業は、ますますITIL導入に慎重になり、反対によく理解していない企業はツールを導入することで安心してしまい、結果的にITIL導入に失敗することになる。
ITILを導入すると考えると難しいので、まずはSLAの概念を導入すると考えるのはいかがだろうか? 大切なのは、ITILの本質を理解せず、安易に外部のコンサルタントを利用しようとしないことである。
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若葉田町
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