OOWで「Oracle Fusion Architecture」の全貌が明らかに:Oracle OpenWorld 2005 San Francisco Report
OracleがOracle OpenWorld 2005で「Oracle Fusion Architecutre」の全貌を明らかにした。活発に展開されているアプリケーション層での企業買収を受け、それらの統合を狙ったものだ。
Oracleは、サンフランシスコで開催中の「Oracle OpenWorld 2005」で米国時間の9月19日、従来の「Oracle Information Architecture」を発展させた新アーキテクチャーとして「Oracle Fusion Architecutre」(OFA)の概要を明らかにした。
OFAは、急速に整備が進みつつあるFusion Middlewareを中核に据えた新しいエンタープライズ向けのアーキテクチャーであり、同社の中核製品であるデータベースとグリッド技術(RAC)を土台に、各種のソフトウェアレイヤを積み上げたものだ。このところ活発に展開されているアプリケーション層での企業買収を受けて、さまざまな既存アプリケーションをまずはFusion Middlewareを活用して相互接続して統合し、さらに環境全体に対しては統合されたインタフェースを与えることを狙っている。
OFAの特徴としては、「モデル駆動型」(Model Driven)、「サービス/イベント対応」(Service & Event Enabled)、「標準準拠」(Standards-based)、「情報中心型」(Information centric)、「グリッド対応」(Grid Ready)といったキーワードが並ぶ。現在、企業ITシステムの中心的な話題であるSOAなども強く意識し、サービス指向のアプリケーションコンポーネントを強固なインフラ層で支える、という意図が強く感じられる構成だ。
土台となる層は「Grid Computing」と呼ばれており、実際の製品としてはOracle Database 10gが位置することになる。ここでは、多数のコンピュータからなるクラスタ(Grid)環境を単一システムイメージに見せたり、高信頼性を確保したりといった機能が位置づけられる。
そのすぐ上には、「Oracle Apps」「Custom Apps」「ISV Apps」といったアプリケーション群が位置する。この層でのOracleの中心的な製品はOracle Applicaiton Serverである。同時に、Oracle Application ServerはFusion Middlewareの中核的な実体であり、その上に構築されるさまざまな機能の土台として機能する。
「Fusion Service Registry」の上には「Fusion Service Bus」が位置づけられる。マルチプロトコルのメッセージルーティングサービスであり、統合される各コンポーネント間を結びつける、いわゆるエンタープライズサービスバスである。
「Business Process Orchestration」(BPO)は、複数のコンポーネントをビジネスプロセスにまとめ上げ、協調動作を実現する要となる層だ。この層では標準化がまだ完全に終わっているとはいえないが、Oracleではいち早くBPELへの強いコミットメントを表明しており、現時点ではBPELによる実装が想定されている。
その上に、「Business Intelligence」(BI)とBusiness Activity Monitoring(BAM)が置かれている。BIに関しては、先ごろ出荷が始まったOracle Database 10g Release 2でも強化された部分であり、重要性が高まっていることが分かる。この層では「Fusion Effect」として「Execution with Insight」「Realtime Analytics」「Transactions with context」という3つの到達目標ともいうべきコンセプトが掲げられた。いずれも、プロセスの状況を的確に把握し、それを踏まえた意志決定を支援する、という内容だと理解していいだろう。
最上位に置かれるのは「Unified Portal」であり、システムが全体として生成する「情報」を整理/統合して提示するところまでを一貫したアーキテクチャの中に組み入れている点が興味深い。
アーキテクチャであるOFAを実装に落とし込むために重要な役割を担うのは、ソフトウェア製品としての実体であるOracle Application Server 10gであり、新バージョンであるRelease 3が今回のOracle OpenWorldで発表されている。
このバージョンでは「Hot-Pluggable」(ホットプラグ可能な)機能が盛り込まれ、業界標準のインタフェースに幅広く対応していくことで多数の既存製品等と相互接続し、密接に統合できるようになっている。これは、PepleSoft、J.D. Edwards、Siebelなど、さまざまなアプリケーションを買収によって統合していく過程で不可欠になると同時に、SOAの本格的な普及等も睨んでコンポーネント/モジュールのレベルでの連携機能がますます重要になることにいち早く対応したものと評価できる。
かつては他社製品との相互運用性の実現にはあまり熱心ではないといわれたこともあるOracleだが、Fusion Middlewareによって以前の状況とは様変わりし、柔軟なシステム構築を可能とするための広範な機能性を備えつつあることが分かる。
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