「感じる義手」は“ルークの義手”にどこまで近づけるか(3/3 ページ)
映画「スターウォーズ/帝国の逆襲」のラストシーンで、ルーク・スカイウォーカーが義手を装着しているシーンをご存じだろうか。想像するに“ルークの義手”は自分の手と変わりない感覚を得られるに違いにない。そのような「感じる義手」を目標として、人間の神経と義手とを接続する神経インタフェースの研究が進められている。
「Ratcar」プロジェクト――ラットの“脳”が車を運転する
満渕研究室では3年前、「Ratcar」プロジェクトを始めている。ラットの脳に神経インタフェースを装着して、脳の運動野からの信号を処理して車を動作させる実験だ。ラットを回転ホイールで走らせたり、Y字通路を通過させたりしたときの信号を解析処理して、その波形からラットの行動を予測する。また、レバーを押すと前に進む車の運転をラットに学習させた後、神経インタフェースからの信号だけで車を動かす実験も行っている。
「神経インタフェースから得られる信号の波形だけで、ラットの前後左右の動きを推測できるようになった」と鈴木博士は現状を説明する。ただし、神経インタフェースが安定しないために長期間の実験は難しい。今後、柔軟型剣山電極や流路付き神経プローブなどを利用して新たな実験をしていく予定だ。
流路付き神経プローブでは半導体プロセスが適用されているが、今後、ナノテクノロジーやバイオテクノロジーなどの技術を投入することで、さらに進化した神経インタフェースが開発されるだろう。しかしながら、鈴木博士も「腕に埋め込むタイプの神経インタフェースの完成には、10年以上はかかるだろう」と話すように、実用化までには多くの壁が存在する。“ルークの義手”を入手できる日はまだ遠いものの、その日は確実に近づいている。
資料提供:東京大学情報理工学系研究科 満渕研究室、東京大学生産技術研究所マイクロメカトロニクス国際研究センター 竹内研究室
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