顧客にも株主にも同じ目線で対処:個人投資家がいつも立ち寄るIRページの秘密(4)(2/2 ページ)
今回の特集の最後は「ウェブIRで重要なのはとにもかくにも、経営トップの姿勢である」ということだ。個人投資家は明確なビジョンを求めている。
地道な改善の努力と明確な将来へのビジョン
株主・投資家と企業との良い関係を作るヒントとして手塚氏はカゴメとGMOインターネットグループのIRサイトを例に挙げて説明してくれた。
「カゴメはウェブIRで非常に良い結果を出した企業として有名ですが、それでも短期間に実現したわけではないのです。多岐にわたる経営情報をウェブで掲載するだけでなく、広報活動、個人投資家向け説明会、イベントなどを組み合わせて地道に時間をかけて努力してきたのです。カゴメの商品は最終消費者に届くものが多いので、知名度は一般の人にも高い。しかしそれでも投資をしてもらうのは簡単なことではない。GMOインターネットグループは確かにIT企業ですが一般的な知名度はカゴメほどではない。そうした企業はやはり、まずトップが投資家にメッセージをダイレクトに送ることが大切。業績数字の話だけではなく、どういうビジョンを持っているかを訴えるのです」
カゴメは1998年3月での個人投資家の割合が24・1%だったが、2005年の同月では40・1%に伸ばしている。ウェブIRの充実度だけがその結果を生んだわけではないが、少なくともサイトでの情報開示についての投資家の満足度は高いはずである。
GMOインターネットグループの熊谷正寿代表取締役会長兼社長はブログでグループ事業戦略を繰り返し説いている。一時「これからは社長ブログの時代」などといわれたが、熊谷氏の事業戦略を語るブログは目的がはっきりしており、投資家は知りたいことだけを探して読むことができ、無駄な時間をとられることもない。
手塚氏は自社の製品やサービスが一般にはなじみのない企業こそ、ウェブIRを最大限活用するチャンスがあるという。「○○フィルター」とか「○○剤」など普通の人が読んでも理解できない特殊な製品に関する知識を、小学生に読ませてもわかるようにウェブで開示する、ぐらいの目標を持つべきだと。そのためには担当者レベルだけではなく、全社で知恵をしぼり取り組む姿勢が大切だ。
この記事はアイティセレクト9月号掲載のものを再編集したものです。
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