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ロボット職員「各務原カカロ」が教えてくれた実用性よりも大切なこと驚愕の自治体事情(2/2 ページ)

「市役所の部署をご案内しましょうか?」――ジェスチャーを交えて市役所内の行き先案内や、市の観光案内などをしてくれる市役所職員。ただ1つ違うのは、彼がロボットであるということだ。2006年2月から各務原市役所の受付に配属となったロボット職員「各務原カカロ」の開発の背景や過程について、各務原市役所産業部商工振興課課長の永井誠氏を訪ねた。

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「カカロ」が存在する風景

 このように完成した「各務原カカロ」が各務原市役所の受付職員として「勤務」しはじめて、既に半年強が経過した。

 身長は67センチ、体重10キロ。胴体は芙蓉工芸が制作した樹脂製で、部品は前述のように軽量化のためのアルミが使われている。センサーで前に立った人を認識し、登録キーワードは350、ジェスチャーは現在のところ、音声を発しながらランダムに首や手が動かす以外に、「こんにちは」などの手話を2、3種類行う。音声認識技術は名古屋市に本社を置くビジネスデザイン研究所の岐阜支社が担当し、子どもの声を採ることも考慮に入れて、本体下部で集音する構造になっている。

 シンプルながらも愛嬌のある顔や姿は、「子どもが喜ぶかわいいロボットを」という森真市長の意見を採り入れ、可愛さ重視でデザインされたものだ。受付の様子を眺めていると、小さな子どもをつれたお母さんなどを中心に、実に楽しそうな笑顔で「カカロ」に話し掛けている光景を見ることができた。市の1つの顔として、確実に市民に浸透していっているようだ。

実用性を追求「しない」ロボットの果たす役割とは

 さて、総合受付職員として各務原市役所に「勤務」する「カカロ」だが、正直なところ「受付職員」としての実用性で言えば、決して高度なものではない。実際、市民からの声でもまだ「便利だったよ」という意見はないという。

 確かに、「カカロ」の前に立って実際に体験してみても、あらかじめ設定された順序でのフローチャートに従って「はい」「いいえ」で答えていって、しかるべきタイミングで用件の課をはっきり発音しないと「良く分かりませんでした」という反応が返ってきてしまう。第一声で「住民票が欲しいのですが?」と話し掛けても、「良く分かりませんでした」だ。

 また、ジェスチャーを行う腕も軽量化のためにアルミでできており、設置当初の激務であっさり「疲労骨折」してしまったために、現在はジェスチャー付き案内は時間限定で行っている。多くの訪問者は、やはり「カカロ」の横に居る人間の受付案内を利用している。しかし「それでいい」と永井課長は言う。「カカロ」の目的は、各務原市内には高度なロボット技術を有する事業所が多く存在し、市内の技術だけでロボットが作れるんだとアピールして市民に広く認識してもらうことなのだ。そういう意味において、認識は確実に向上しているという。特に、子どもたちからの人気は絶大なようだ。各務原市の未来を担う子どもたちちに、地元のロボット技術への興味と誇りを持ってもらう。ある意味、目の前の「実用性」よりも、大きな役割を担っているのが「各務原カカロ」なのだ。

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