電子自治体への取り組み、その現状が明らかに:驚愕の自治体事情(4/4 ページ)
岐阜県、横須賀市、長沼町。この3自治体にはある共通した因子が存在することがある調査の結果浮かび上がってきた。人口規模や産業構造的に近い自治体についてよく知ることは、今後重要なポイントとなりそうだ。
町村ランキング
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町村ランキングで総合1位の北海道長沼町は前回の調査では31位だった。人口1万3千人弱で農業が主産業の町だが、いち早く約4500の全世帯にブロードバンド環境を整備した。それに伴い住民に対するIT講習やITリテラシー向上にも積極的に取り組んでいる。
また、住基カードを住民票・印鑑証明の自動交付機のほか健康づくりのための施設利用など多目的に利用し、人口比普及率で33.1%と全国町村でトップである。同町は、庁内情報化や住民サービスで優れているほか、情報セキュリティにも力を入れた結果、1位に躍進したようだ。
地域別の温度差と課題
地域別で見ると、幾つかの傾向も浮かび上がってくる。例えば、県レベルでは、関東地方は総じて電子自治体への取り組みが進んでいるが、中国地方も島根県を筆頭に見劣りしない取り組みを進めていることが分かる。また、和歌山県は近畿地方の他府県と比べてかなり取り組みに温度差が見られる。一方、町村レベルでは東北地方、中部地方が積極的に情報化を推進している様子がうかがえる。
四国地方の情報化の遅れも指摘できよう。県レベルでは、徳島県、香川県などの健闘は見られるものの、市レベルでは愛媛県松山市のみが平均的な得点でランクインしているだけで、町村レベルに至っては、わずか3市が下位のほうにランクインするにとどまっている。
今回の調査からは、住民サービスや情報セキュリティなどで多様化が見られるほか、全体としてみると、やはり規模による格差、地域による格差の拡大が懸念される結果となっている。
では、こうしたデータを自治体はどのように生かせばいいのだろうか。誤解を恐れずに言えば、自治体間の情報交流を促進するためのツールとしてこれらを役立てるべきではないかと考える。こうした調査が行われる以前は、ベンチマークたり得るものが存在しなかったため、各自治体の電子自治体への取り組みについて、コストとパフォーマンスのバランスが取れているのかを定量的に計ることが難しい現状があった。
今回の調査では、総務省が2005年末に公開した「市町村の業務システムの導入及び運用に要する経費等の調査」などと組み合わせることで、効果的な情報化投資の検証が可能となったと島田教授は説明している。人口規模や産業構造的に近い自治体のはずが、こと電子自治体の推進では大きく水をあけられているというケースは調査結果の随所に見ることができるだけに、似たような自治体を比較しながら、自分たちがそれまで行ってきた電子自治体への取り組みが適正だったのかについて再度検討してもらいたい。
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