グーグル、ヤフー、アップルの技術をビジネス界にも:「SaaS」の未来やいかに 第3回
「新ASP」としてこの世に登場したSaaSだが、従来のASPとは本質的な違いがないといわれる。それでも、SaaSに寄せられる期待は大きい。その市場拡大を見越し、プラットフォームまですでに提供されている――。
集合住宅型モデルへの進化
CRMとSFAのアプリケーションをオンデマンド専業で提供するセールスフォース・ドットコムは、SaaS(Software as a Service)を積極的に標榜し、日本市場に広めている。1999年の設立(日本法人は2000年4月)以来、順調に業績を伸ばし、顧客企業で累計2万4800社、アクティブユーザー数で50万1000人を抱える業界最大手にまで成長した(2006年7月31日現在)。
2006年1月には、世界初というオンデマンドアプリケーション・プラットフォーム「AppExchange」を発表。CRMやSFAに限らず、オンデマンドアプリケーションの可能性を広げることを目指し、プラットフォームカンパニーへの脱皮を図っている。
「AppExchange」とは、開発者が作成したアプリケーションを公開しているオンデマンドアプリケーションのプラットフォームで、ユーザーがわずか数クリックでそれをインストールできるようにしたもの。 インターネットショッピングや音楽ダウンロードのように、求めるアプリケーションを簡単に探せ、購入する前には試用することも可能になっている。用意されているアプリケーションは315種類、インストールされた数は12500以上。日本では48のアプリケーションが日本語で構築され、「AppExchangeディレクトリ」に収められている。
また、顧客やパートナーなどにはセールスフォースの開発者と同じアクセス環境を提供し、「AppExchange」上で、カスタマイズのほかインテグレーションや新しいアプリケーションの開発をできるようにしている。
「AppExchange」は、マルチテナント・アーキテクチャのプラットフォームといわれる。それは、コストや価値を参加者全員で共有することにより、導入のスピードを速め、コスト削減を実現するモデルのことをいう。例えていえば、マンションのようなものだ。多くの住人と屋根を共有し、プールやジムが作られたら住人全員が利用できるといったものだ。
これに対し、CDに納められたソフトウェアをインストールし、アップグレードしてメンテナンスをするものをシングルテナント・アーキテクチャという。一軒家に快適に住むために、電話や電気を引き、自分で管理してコストを負担するようなものである。
ソフトウェアの未来はオンデマンドにある
また、セールスフォースは10月、オンデマンドCRMソリューション「Salesforce」の21世代目にあたる「ウインター'07」をリリースするにあたり、マルチテナント型プログラミング言語/プラットフォーム「Apex」を発表した。これにより、マッシュアップの機能拡張や分析ツール、新しいAPI、データ・リレーション、自動化ワークフローなどが可能になり、ユーザーは複雑なソフトウェア・インフラを安価に導入することができるようになるという。
こうして狙うのは、グーグルやヤフー、イーベイ、アップル(iTunes)などの消費者向けWebプラットフォームで普及した技術(体験)をビジネスの世界に応用するオンデマンド市場だ。米国本社のプレジデント、ジム・スティール氏は、「今後、所有権を独占するのではなく、世界中の優れたイノベーションを取り込めるプラットフォームを用意します。ソフトウェアの未来はオンデマンドにあるのは疑いの余地はありません」と語る(「月刊アイティセレクト」1月号のトレンドフォーカス「オンデマンドの未来が再燃 SaaSはビジネス要求を取り込めるか?」を再編集した)。
※本文の内容は、特に断りのない限り2006年11月現在のもの。
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