すべてが「サービス化」するのか:「SaaS」の未来やいかに 第4回
ASPでは今ひとつ物足りなかったオンデマンド型アプリケーションの浸透。「SaaSブーム」の到来によって、すべてのソフトウェアがサービスと化していくのだろうか。
「SaaSブーム」は続く
セールスフォース・ドットコムの日本法人代表取締役社長、宇陀栄次氏は「SaaS(Software as a Service)マーケットの拡大はこれから。現在はユーザーがSaaSの効果を理解し始めている段階だと思います。このトレンドは一過性のものではなく、10年以上は続くでしょう。長いスパンで見ています」と話す。
「ASPとSaaSの間には微妙な隔たりがあるかもしれません。ASPにはサービスを提供する側の理論が、SaaSには提供する側と受ける側の両方の理論が、それぞれ働くイメージがあります。SaaSが急に注目されるようになったのは、グーグルアースなどのコンテンツの面白さを意識している感覚に近いものがあるようです」(宇陀氏)
実際、インハウス型あるいはオンプレミス(自社内導入)型アプリケーションベンダーも最近、オンデマンド型サービスに強い関心を持ち、その一部をオンデマンド化へ方向転換している。
オンデマンドビジネスはそう甘くはない
そうした現状について、宇陀氏は「長年培ってきた主流の商材を完全に方向転換することは困難ではないか」と分析する。というのは、SaaSのようなオンデマンドのサービスは1日たりともバグを放置できない。改善されなければ解約される。そうしたサービスをセンター集中で提供することは、顧客に365日監視されているのと同じことだからである。
セールスフォースは常に顧客の新しい追加要求を管理し、その上、年に3回、メジャーバージョンアップを行ってきたという。「カスタマイズを通り越して、パーソナライズに近いレベルで改善しています。信頼性におけるサービスレベルは、オンプレミス型を上回っているといえるかもしれません」(宇陀氏)
SaaSに注目が集まっていることから、全てのソフトウェアがサービス化していくように見られる傾向がある。そうした見解に、宇陀氏は否定的だ。特に大手企業のバックオフィス系で、現状のクライアント/サーバーの形態が残ると見ている。その上、開発の時点で顧客の要求全体の7〜8割を満たした状態まで仕上がっているという。
とはいえ、もちろんSaaSに活路はある。宇陀氏によると、例えばフロントオフィス系の場合、サービスインした時点でも顧客の要求に同2割程度しか応えていない状態であることが多い。従って、サービスイン後に次々に変更を加えていくことになる。そのため、こうしたところでSaaSが有効に働くというのである。
「どんなにコストと時間をかけても、3〜5年後の要件変更を予測することは不可能。変えられることが最も重要な保証となるのです。だから、オンデマンドはフロントオフィス系に向いているといえます」(宇陀氏)(「月刊アイティセレクト」1月号のトレンドフォーカス「オンデマンドの未来が再燃 SaaSはビジネス要求を取り込めるか?」を再編集した)
※本文の内容は、特に断りのない限り2006年11月現在のもの。
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