内部統制への対応で注目を集める"使える"エンタープライズコンテンツマネジメント:コンプライアンス時代のマストアイテム!エンタープライズコンテンツ管理(2/2 ページ)
このところ、多くの企業が情報系システムの再構築に対し、積極的に投資を始めたという。そうした情報系システムの中でも、特に高い注目を集めているのが、「エンタープライズ コンテンツ マネジメント(ECM)」分野である。今回は、ECM市場の動向とソリューションについて、マイクロソフト インフォメーションワーカービジネス本部 IWソリューションマーケティンググループの西岡真樹氏、米野宏明氏に話を伺った。
SharePointを中心とした新しい情報基盤
ITmedia ではECMについて、マイクロソフトはどのようなソリューションを提供しているのですか?
米野氏 「Microsoft Office SharePoint Server 2007」がECMの中核になります。これは、文書ファイルやデータベースの構造化されたデータ、人のナレッジも含め、すべてをコンテンツとして捉えて、企業の中で公開、共有して育てていくサーバです。SharePointは、人と人のつながり、人と情報のつながり、人とビジネスプロセスのつながりのハブになり、ここを通った情報は、価値に変わっていきます。企業が持っているあらゆる情報を使えるものにすることが、このサーバの役割です。SharePoint Server 2007は、ECM を実現するための機能を全て標準搭載した、All-in-oneサーバなのです。もちろん、他のマイクロソフト製品や豊富なパートナー ソリューションを組み合わせることで、マイクロソフトのECMソリューションはいっそう強固なものとなります。
西岡氏 マイクロソフトでは、コンプライアンス対応としてクライアントもトータルにサポートしています。内部統制における文書化3点セットと言われる業務フロー、業務記述書、リスクコントロールマトリックスは、それぞれVisio、Word、Excelで作成し、連携してセットで管理できるようになっていますが、そういったものを作成、利用する際のコラボレーションの場としてSharePointを採用している企業が増えています。また、情報系システムと基幹系システムをうまく連携させながら、コンテンツをしっかり守っていく「情報系ERP」の基盤としてもSharePointは最適です。
ITmedia SharePointを導入した企業の契機になったのは、コンプライアンス対応が多いのでしょうか?
西岡氏 一口に「コンプライアンス対応」と言っても、その形はさまざまです。紙文書を何とか管理してデジタル化したい、ファイルサーバに無秩序に置かれている文書ファイルを何とかしたい、グループウェアが古くなってしまって次のマイグレーションパスがない、そういったペインポイントの解決をきっかけとして、それにどうコンプライアンスに対応させていこうかと検討する企業が多いようです。
単にコンプライアンス対応を目指す企業は、最低限必要なシステムのみを構築しますが、一歩踏み込んでより積極的に情報を活用しようと考えている企業も少なくありません。SharePointによって、管理と生産性を両立させ、社員が働きやすい環境を実現しましょう、というのが、マイクロソフトのメッセージです。
マイクロソフト自身が推進するコラボレーション環境
ITmedia マイクロソフトでは、実際にどのようなECM環境を整えているのですか?
西岡氏 マイクロソフトの社内では、コラボレーション環境を運用しており、チームサイトを構築してドキュメントを共有、管理しています。ワールドワイドでかなりの社員がいますので、例えば米国の担当者を調べるときに検索を使います。検索するとチームサイトが見つかり、頻度が高いものが上から並びます。その中のチームメンバーに連絡すれば、必要な情報を入手できます。会社が大きくなると、誰が何をしているのかわからないものです。
このようなことは、ファイルサーバを一生懸命探しても、なかなか担当者まではわかりません。SharePointでは、「誰がアップロードしているのか、誰がそのサイトを管理しているのか」という情報がわかります。こうした検索性のよさは、業務に非常に役立っていますし、有益な結果が出ていると感じています。
ITmedia 情報を共有したら終わりということではなく、活用することまでを考えているわけですね。
西岡氏 一人で仕事をするのではなく、チームで仕事をすることが多いので、何かしらプロジェクトを進めていく中間データが必要なことがあります。そういうデータは、能動的に探さないと、絶対に出て来ません。グループで共有し、それを他の人が探せる環境が重用になるのです。
今回のSharePointでは、検索機能に力を入れており、SharePointで共有している情報だけでなく、Exchangeのメールで、基幹システムのデータを検索結果に表示することができます。仕事に必要な情報がすぐに見つかるということは、とても重要です。EMCでは、コンテンツを管理することももちろん重要ですが、検索できるということも非常に重要なテーマだと思います。
ITmedia どの情報を公開するかという選択基準は、マイクロソフトの場合、どう決めているのですか?
米野氏 基本的に、社内に隠すべき情報はあまりありません。当然、機密性の高い一部の業務情報は公開されていませんが、一般的な文書情報や業務データは、各個人のプライバシーに属するような情報以外はそのほとんどが共有されています。社外に向けた情報の取り扱いはルール化されており、個人情報を含んだライブラリの監視や、IRM(Information Rights Management)によるコンテンツのライフサイクル管理により、安全性を確保しています。またこれらのルールは簡単に適用できるようポリシー化されており、ボタン1つでコンテンツ作成者がポリシーを適用したり、ドキュメントライブラリにポリシーを設定しそこに保存されるファイルに自動的にポリシーを適用したりすることが出来るようになっています。
ITmedia 最後に、これからECMを導入しようとしている企業に向けてメッセージをお願いします。
西岡氏 企業の課題に対し、ITによってさまざまな回答を得ることができます。全体の生産性を向上させながら、コンプライアンス対応を意識させる環境を整備し、それを社員に体験させることが大切です。SharePointによる多くの導入事例、パートナーソリューションを参考にして、自社に最適なシステムをぜひ見つけてください。
関連記事
- 「ハンコください」はもう古い!上司のOKを素早くGETする方法
業内で公式な文書を発行する際に必ず必要なのが、承認のプロセスである。SharePoint Server 2007の承認ワークフローを用いて上長の承認フローをスムーズにし、業務のスピードアップを図ろう。 - SharePoint Server 2007によるECM構築――画面で分かるドキュメント作成
エンタープライズコンテンツ管理システムを確実に運用するには、文書の雛形をできる限り用意し、ユーザーにとって使いやすい環境を用意することが重要だ。ここではSharePoin tServer 2007を用いたECM構築ガイドをお送りする。 - 今なら間に合う内部統制――J-SOXとECMのオイシイ関係
2008年4月に施行される日本版SOX法。しかし、まだ、どんな仕組みで対応すればよいのかを模索している企業も少なくない。施行間近の今だからこそ必要な、内部統制の仕組み作りの手がかりを紹介しよう。 - 社員はルールを守らない!?現場とのギャップを埋める「3つの原則」
管理ルールを設定するIT部門と、それを実施すべき現場の社員とのあいだに温度差がある企業は少なくないだろう。企業におけるコンテンツ管理の現状とこれからの考え方について重要となる3カ条を紹介する。 - コンテンツ管理、はじめました――よくあるケースの運用ポイント
エンタープライズコンテンツ管理を実際に運用してみると、さまざまなニーズが発生してくる。ここでは、Microsoft Office SharePoint Server 2007を使用し、運用の現場からの声に応えるための解決策を紹介する。 - 「手になじむ」文書管理を実現しよう――効率的+合理的ECMのススメ
SharePointを中核に据えたシステムでは、ユーザーが慣れ親しんだインターフェイスのまま、より便利で安全に、エンタープライズコンテンツ管理(ECM)を実施できる。主にエンドユーザーが受けるメリット部分にフォーカスし、その特徴を見ていこう。 - ECMでラクになる!文書管理・運用の実際
エンタープライズコンテンツ管理(ECM)の必要性は数年にわたって叫ばれてきた問題だが、その具体的な打開策はなかなか見つからなかった。その指針の1つを示すものが、Microsoft Office SharePoint Server 2007を中核としたシステムだ。 - 「攻めの思考」の情報管理・マイクロソフトのECM
エンタープライズコンテンツ管理は、単に情報を保存・管理するためだけのものではない。情報を効率的に管理することにより、再利用や共有を容易にし、新しいものを生み出すための取り組みである。 - ファイル共有からコンテンツ管理へ
- アプリケーションレベルのOfficeアドイン開発を実現するツールを無償提供
Visual Studio 2005 Tools for Officeの無償のアップデートでは、Office 2007に対応したほか、Office 2003向けアプリケーションのより柔軟な開発と展開を実現している。ただし、実用的なグラフィカルエディタの提供やOfficeとの統合強化といった課題も残されている。 - Googleの侵食に先手、SharePointを主軸にエンタープライズ検索を刷新
2007年に新しいデスクトップ検索クライアント、SharePoint Server 2007、Windows Vistaがリリースされ、Microsoftのエンタープライズ検索ソリューションの選択肢はかつてないほど充実する見込みだ。Googleや Yahoo!を抑えて市場シェア拡大を実現できるか? - SharePoint2007は内部統制にも有用、とマイクロソフト
Microsoft Office SharePoint Server 2007のエンタープライズコンテンツ管理機能は内部統制にも役立つとマイクロソフトは説明する。 - MS、新たな認定プログラムを発足
- 中堅規模向けサーバOSも登場――"Longhorn" のロードマップ
- MS、Office Live 日本語版の無償サービスを開始
- 使いやすさと機能を強化した中規模企業向け管理製品2種がβテスト中
- Forefrontはこう動く――企業向けセキュリティ製品をMSが披露
- Office 2007スイートに加わるGroove、躍進のチャンスを生かせるか
- Office 2007のコラボレーション機能を試す
- 【特集】コンプライアンス時代のマストアイテム!エンタープライズコンテンツ管理
企業内のすべての情報をしっかりと管理し、各種のリスクや法令に対応したい。そして、企業資産である情報を活用できる体制を作りたい・・・先進的な企業が抱えるこのような悩みを解決するのが、「エンタープライズコンテンツ管理」(ECM)だ。コンプライアンスが必須条項となった現在における、情報の管理と活用を実践する方法を探る。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.