コンテンツ管理、はじめました――よくあるケースの運用ポイント:エンタープライズコンテンツ管理
エンタープライズコンテンツ管理を実際に運用してみると、さまざまなニーズが発生してくる。ここでは、Microsoft Office SharePoint Server2007を使用し、運用の現場からの声に応えるための解決策を紹介する。
このコンテンツは、オンライン・ムック「コンプライアンス時代のマストアイテム!エンタープライズコンテンツ管理」のコンテンツです。関連する記事はこちらでご覧になれます。
現場におけるECM運用例
Microsoft Office SharePoint Server 2007(SharePoint)を中核としたシステムを導入したときの運用例をいくつか示しておこう。
SharePointの共有機能を活用する際に、ある特定の人には文書の内容を公開したいが、それ以外の人には公開したくないというケースがある。IRM(Information Rights Management)は基本的にSharePointのライブラリに対して働くことになるが、各種権限はActive Directoryによるグループ分けによって設定できる。それらを関連付けることで、特定の人には見せ、それ以外の人には見せないという設定が行える。
社外の人と情報を共有したいというニーズもある。この場合、Windows Live IDの機能が利用できる。Windows Liveを介して本人認証が行えるので、あとはIRMのセキュリティを働かせればよい。ちなみに、Active Directory同士を結びつけ、信頼関係を結ぶ仕組みであるADFS(Active Directory Federation Services)も、現在検討されている。そう遠くない将来には、これも実現されることだろう。ADFSが導入されれば、外部のパートナー企業との連携も非常にスムーズになるはずだ。
上記の例とは逆に、不特定多数に対して情報を公開したいという場合もある。IRMの考え方では、IRMが施されたものを不特定多数に対して配布することは想定されていない。本人認証が行われていない相手に対しては、門前払いするだけだ。このような場合は、SharePointの権限をフリーにしたフォルダ上に情報を置いておけばよい。これで不特定多数に対し、情報を開示できることになる。
この使い分けは、実際の運用とコンプライアンスとを照らし合わせながら、守るべき対象を明確化していくことで、レベル設定を決めていく必要がある。セキュリティや管理は、基本的に生産性を上げるものではない。それゆえに、状況によってどこまで適用するかといったレベル設定を使い分けていくのが賢明である。
下準備とモチベーションが大事
IRMはライブラリに対して設定するのだが、それはすなわち、SharePointのドキュメントライブラリに対して簡単にポリシーが設定できるということになる。ポリシー自体をコンテンツタイプとすることも可能で、それを文書の属性に関連付けることもできる。設定の仕方次第で、多くの局面に応用が可能な、柔軟な権限設定と管理体制を敷くことができる。
さらに、権限とドキュメントライフサイクルに関しては、ラベル、バーコード、監査ログ、有効期限などの設定もできる。これらは、Officeアプリケーションとの連動において、非常に威力を発揮する部分だ。
ただ、残念なことに、現時点では、コンテンツタイプとIRMとを直接結びつけることはできない。これについては、今後の開発課題となるだろう。
なお、各種設定に関しては、ほぼすべてがWebブラウザ上で行えるようになっている。ポリシー設定の手順も、わかりやすいように改善されているので、使う上での問題はない。
ただし、Active Directoryを基盤にしてSharePointを中核に据え、IRMを導入したシステムの運用を始めようとするとき、IT管理者の負担が増えることは覚悟したい。データベースを構築する際、基本となるデータを入力するのに手間がかかるように、企業のトータルなルールを決め、それに則した綿密な計画を立て、ポリシーを設定していくという初期作業は、絶対に必要になる。ワークフローの確認、ユーザーの権限設定、フォルダやドキュメントのポリシー設定、各種のルールを適用したテンプレートの作成など、最初に行っておくべき作業は、数多い。
しかし、それさえしっかりしておけば、あとは自動化できるようになり、ユーザーへの負担も格段に軽減される。なお、前述の通り、SharePointの各種設定は、一括してブラウザ上で行えるので、工数を減らせることにもなる。
もう一つ大切なのは、作業に当たる際のモチベーションの問題である。出てきた法令に対し、仕方なく設定を変更し、ユーザーに新しい使い方を教育しなければならないという消極的思考で作業を行ってはいけない。きちんと設定しておくことで、ユーザーから喜ばれ、会社の生産性も向上するという意識を持って作業に当たることが非常に重要なポイントなのだ。
このコンテンツはアイティセレクト2006年12月号増刊に掲載された記事を再編集したものです。
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