ECMでラクになる!文書管理・運用の実際:コンプライアンス時代のマストアイテム!エンタープライズコンテンツ管理(2/2 ページ)
新たな法令への対応、セキュリティへの対処、ユーザーの生産性を向上させる工夫などなど、IT部門のプレッシャーは絶えない。エンタープライズコンテンツ管理(ECM)の必要性は数年にわたって叫ばれてきた問題だが、その具体的な打開策はなかなか見つからなかった。Microsoft Office SharePoint server 2007(SharePoint)は、1つの指針を示す新しいシステム形態といえる。ここでは、SharePointを中核に据えたシステムが生み出すメリットを紹介する。
Active Directoryとの連携によるハイレベルな管理体制
次にSharePointとIRMに、Active Directoryを加えたシステムのメリットを紹介しよう。
IRMは、Active DirectoryのID/パスワードと連動して動作し、文章を暗号化して保全性を高める仕組みだが、実は、暗号化だけでは、ID/パスワードと同じレベルでしかなく、完全なアクセス制御にはならない。ID/パスワードがなかなか覚えられず、メモ書きしてモニターまわりに貼り付けている人は少なくないし、パスワード解析ソフトを使えば割り出すことも不可能ではない。最近では、盗難されたモバイルPCからID/パスワードが盗み出される事件も起きている。
そこで、導入しておきたいのが、Active Directoryである。Active Directoryは、確実な本人認証をすることが大前提のシステムだ。Active Directoryによる本人認証をパスしないことには、システムに入ることは絶対に不可能である。逆に、Active Directoryの認証をパスできれば、その時点でそのユーザーに与えられている各種権限も認められる。
基盤にActive Directoryを置き、その上にIRMによる保護基盤とSharePointを結びつけたシステムを構築する。こうすることにより、Active Directoryによるユーザー認証が最初に行われ、認証に基づいたアクセス管理が行えるようになる。SharePointは、このアクセス管理を担う。そして、アクセス権を制御した段階で、誰が設定したか、誰が変えたか、誰が閲覧したかといったことを監視、記録できるようになる。加えて、守るべき情報を最大限のセキュリティで保護することも可能になる。もちろんこれは、IRM、あるいはRMS(Microsoft Windows Rights ManagementServices)によって実現される。このほか、SharePointとIRMで保護した文書の安全性を得るために、Forefrontでウィルス対策をすることも忘れないようにしたい。
SharePoint を導入するだけでも、コンテンツ管理とある程度のセキュリティ体制は実現できる。しかし、よりハイレベルなECMシステムとしたいのであれば、IRM、およびActive Directoryを連動させたサーバシステムを構築することが望まれる
こうした仕組みを導入することにより、ユーザーが特別な操作をせずとも、文書管理が行えるようになる。Active Directoryを導入することで、例えば、モバイルPCを紛失した場合でも安心できる。なぜなら、Active Directoryのドメインに入らなければ、ドキュメントを開けないからだ。また、USBメモリの持ち出しを禁止している企業は少なくないが、それ以前にUSBメモリにドキュメントをコピーして持ち出しても、ドキュメントを読めない状況にしておくほうがよい。そうしたセキュリティ対策を達成するには、個人の認証を行い、そのユーザーの権限を明確化し、扱えるものを限定するというポリシー設定をあらかじめ行って全社システムに適用すべきなのだ。
企業のコンプライアンスに注目が集まり、内部統制の整備が急務となっている今、SharePointを中核に置いたWindows Serverシステムは、生産性を落とさないための最適な手段といえる。
このコンテンツはアイティセレクト2006年12月号増刊に掲載された記事を再編集したものです。
関連記事
- 「ハンコください」はもう古い!上司のOKを素早くGETする方法
業内で公式な文書を発行する際に必ず必要なのが、承認のプロセスである。SharePoint Server 2007の承認ワークフローを用いて上長の承認フローをスムーズにし、業務のスピードアップを図ろう。 - SharePoint Server 2007によるECM構築――画面で分かるドキュメント作成
エンタープライズコンテンツ管理システムを確実に運用するには、文書の雛形をできる限り用意し、ユーザーにとって使いやすい環境を用意することが重要だ。ここではSharePoin tServer 2007を用いたECM構築ガイドをお送りする。 - 今なら間に合う内部統制――J-SOXとECMのオイシイ関係
2008年4月に施行される日本版SOX法。しかし、まだ、どんな仕組みで対応すればよいのかを模索している企業も少なくない。施行間近の今だからこそ必要な、内部統制の仕組み作りの手がかりを紹介しよう。 - 社員はルールを守らない!?現場とのギャップを埋める「3つの原則」
管理ルールを設定するIT部門と、それを実施すべき現場の社員とのあいだに温度差がある企業は少なくないだろう。企業におけるコンテンツ管理の現状とこれからの考え方について重要となる3カ条を紹介する。 - コンテンツ管理、はじめました――よくあるケースの運用ポイント
エンタープライズコンテンツ管理を実際に運用してみると、さまざまなニーズが発生してくる。ここでは、Microsoft Office SharePoint Server 2007を使用し、運用の現場からの声に応えるための解決策を紹介する。 - 「手になじむ」文書管理を実現しよう――効率的+合理的ECMのススメ
SharePointを中核に据えたシステムでは、ユーザーが慣れ親しんだインターフェイスのまま、より便利で安全に、エンタープライズコンテンツ管理(ECM)を実施できる。主にエンドユーザーが受けるメリット部分にフォーカスし、その特徴を見ていこう。 - 「攻めの思考」の情報管理・マイクロソフトのECM
エンタープライズコンテンツ管理は、単に情報を保存・管理するためだけのものではない。情報を効率的に管理することにより、再利用や共有を容易にし、新しいものを生み出すための取り組みである。 - 内部統制への対応で注目を集める"使える"エンタープライズコンテンツマネジメント
現在、情報系システムの中でも特に高い注目を集めている「エンタープライズ コンテンツ マネジメント(ECM)」。ECM市場の動向とソリューションについて、マイクロソフトインフォメーションワーカービジネス本部 IWソリューションマーケティンググループの西岡真樹氏、米野宏明氏に話を伺った。 - ファイル共有からコンテンツ管理へ
- アプリケーションレベルのOfficeアドイン開発を実現するツールを無償提供
Visual Studio 2005 Tools for Officeの無償のアップデートでは、Office 2007に対応したほか、Office 2003向けアプリケーションのより柔軟な開発と展開を実現している。ただし、実用的なグラフィカルエディタの提供やOfficeとの統合強化といった課題も残されている。 - Googleの侵食に先手、SharePointを主軸にエンタープライズ検索を刷新
2007年に新しいデスクトップ検索クライアント、SharePoint Server 2007、Windows Vistaがリリースされ、Microsoftのエンタープライズ検索ソリューションの選択肢はかつてないほど充実する見込みだ。Googleや Yahoo!を抑えて市場シェア拡大を実現できるか? - SharePoint2007は内部統制にも有用、とマイクロソフト
Microsoft Office SharePoint Server 2007のエンタープライズコンテンツ管理機能は内部統制にも役立つとマイクロソフトは説明する。 - MS、新たな認定プログラムを発足
- 中堅規模向けサーバOSも登場――"Longhorn" のロードマップ
- MS、Office Live 日本語版の無償サービスを開始
- 使いやすさと機能を強化した中規模企業向け管理製品2種がβテスト中
- Forefrontはこう動く――企業向けセキュリティ製品をMSが披露
- Office 2007スイートに加わるGroove、躍進のチャンスを生かせるか
- Office 2007のコラボレーション機能を試す
- 【特集】コンプライアンス時代のマストアイテム!エンタープライズコンテンツ管理
企業内のすべての情報をしっかりと管理し、各種のリスクや法令に対応したい。そして、企業資産である情報を活用できる体制を作りたい・・・先進的な企業が抱えるこのような悩みを解決するのが、「エンタープライズコンテンツ管理」(ECM)だ。コンプライアンスが必須条項となった現在における、情報の管理と活用を実践する方法を探る。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.