チェルノブイリに住む生物が静かに指し示すもう1つの進化:Weekly Access Top10
史上最悪の放射能汚染となったチェルノブイリ周辺に住む生物の多くが、DNAレベルで見ると、猛烈なスピードで進化のはや回しを経験している。その行き着く先には何があるのか。
Weekly Access Top10
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11月最終週のランキングはご覧のようになった。セキュリティ関係の記事が多く並んでいることが分かる。
しかしここでは、賢明なITmediaエンタープライズの読者に対してセキュリティに対する啓もうといったやぼなまねはやめにして、日ごろの激務から解き放たれたビジネスマンがゆっくりと週末の物思いにふけるためのネタを提供しよう。
そのネタの起点となるのが、米Googleが11月27日に発表した「RE<C」イニシアチブのニュースである。エネルギー資源のほとんどを海外に依存している日本では、「いかにエネルギー資源を確保していくか」が、長年の重要課題として位置づけられている。石炭から石油中心に変化してきた日本のエネルギー資源だが、近年、地球温暖化に対する意識がグローバルで高まっていることもあり、石油に変わる新たなエネルギーの利用も真剣に検討すべき時期にきているのは言うまでもない。
では原子力かといえば、1986年4月に起こったチェルノブイリでの爆発事故以来、原子力発電に対する心理的な恐怖は多くの人々の心に刻み込まれている。この事故からすでに20年以上が経過し、多くの方が何となく記憶にとどめている程度であろうが、当時原子炉から放出された放射性物質の半減期は、セシウム137で約30年であり、実際のところ、チェルノブイリ周辺では今なお過酷な環境のままであるという事実は忘れてはならない。
前置きが長くなったが、ここで論じたいのは、「石炭燃料より安い再生可能エネルギー」を開発しようとするGoogleの新たな取り組みではなく、史上最悪の放射能汚染となったチェルノブイリについてである。
草木一本存在しない死の世界――チェルノブイリに対してわたしたちがイメージするのはおおよそこんな感じではないだろうか。しかし、それを覆すかのように、この地域において、人間以外のほ乳類や植物の増加が見られるという真逆の調査結果がシュマルハウゼン動物研究所から出ている。放射線が生物の遺伝子に致命的な障害を引き起こすことは事実であるはずにもかかわらず、チェルノブイリ周辺では、野ねずみやオオカミなどが元気に走り回り、繁栄を続けているというのだ。
こうした生物が放射能の影響を受けなかったわけではない。後にテキサス工科大学などが実施した調査では、染色体が倍数性の突然変異を起こした結果か、巨大化した生物/植物が多く観測されているし、汚染地域の生物からは確かにDNAの突然変異が、しかも、通常の100倍以上の速度で起こっていることが明らかになった。見た目にはそれほど変化がないにもかかわらずだ。
そもそもDNAレベル突然変異を起こしたとしても、たいていの場合は形質の変化に影響を与えない。それらは中立的な変化でしかないが、長い間にわたって蓄積され、やがて環境の変化とともに大きな変化へとつながると主張したのが、中立進化説の提唱者として知られる木村資生氏(故人)である。
DNAレベルでは本来起こりえない速度での突然変異が生じているチェルノブイリ周辺の生物は、いつか大きな進化――これまでの進化のスピードとは比べものにならない――の日が来るまで、今日も進化の道を爆走しているのだろうか。
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