未来の“銀ブラ”を体験しよう:突撃! ユビキタス空間(3/3 ページ)
街を歩くと、場所に応じた情報をリアルタイムで入手できる――そんな「ユビキタス空間」の実験が銀座で行われている。早速体験してみた。
東京での実証実験はどのように進められてきたのか。
上野動物園で最初の実験がスタートした。2005年のことだ。動物園は大人も子どもも楽しめるコンテンツの宝庫で、限られた空間であることが実験にとって都合が良かったという。
利用者は動物園に設置した発信器にUC端末をかざせば、動物の寝ている姿や飼育員が餌を与える姿など、動物園で実物を見る以上の情報が得られる。クイズを表示すると、子どもは動物をつぶさに観察するようになったという。
「新しい動物園の在り方が見えた」というのは東京都都市整備局の湯地敏史総務部副参事だ。現在上野動物園ではUC端末を無料で貸し出しており、利用者は1万5000人を超えた。
動物園という限られた空間での実験は成功した。次に必要なのは開かれた場所での検証。日本が誇る歴史や観光スポットを世界に発信できる場として銀座が選ばれた。
ユビキタスはビジネスになるのか
実証実験を重ねる中で「ユビキタスを広めるための仕組み作り」という課題が見えてきた。ユビキタスのインフラを支える技術開発はめどが立ったものの、サービスを提供するための管理体制はまだ整っていない。
「誰がユビキタス機器を設置して、メンテナンスをするのか。機器にひも付けるデータを作るのは誰で、どのように更新するのか。これらの仕組みが整備されれば、例えば観光で日本に訪れた外国人にお勧めの店舗を紹介するといったビジネスにもつながる」(湯地氏)
今後は仕組みの管理や運用に軸足を移して実験に取り組むという。都内の10のエリアをユビキタス空間の拠点に構え、周辺地にエリアを拡大していく考えだ。
「将来は携帯電話やi-Podのような端末から情報を受信できるようになるのではないか。みんなが持つ情報端末にこれらの技術を導入することで、ユビキタスを普及させたい」(湯地氏)
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