ポリシーを持った外注が強みを生む
外注頼みとなると、その業者やシステムインテグレーターがそれぞれの独自ポリシーでケーブリングの計画を立てて構築することになる。だがもし、後に業者が入れ替わったら、対応できるのだろうか?
ファシリティの専門家がいない状態では難しい問題となるが、だからこそデータセンター自身がきちんとしたポリシーを持ったうえで外注する体制を作るべきではないだろうか。またそうすることで、データセンターの差別化要因としても役に立つ。例えば「ケーブルの管理性が高いので、初期サービスインはもちろん機器の入れ替えや増設も迅速に行える上、トラブル時の問題の切り分けも容易です。また、適切なケーブルマネジメントによって冷却効率も良好となり、ラック内の利用効率も高められるから、他のデータセンターを使うより実質的におトクですよ」といった具合だ。
もちろん、データセンターの利用者側も、データセンター選びに際しては、ケーブルマネジメントの良し悪しを評価基準に加えることが望ましい。
「家族計画」を考えて
徐々に認知されるようになってきたとはいえ、ケーブリングの優先度は、まだまだ低いのが実状のようだ。
この記事の執筆に先立っての取材では、運用段階まで意識したケーブルマネジメントポリシーを持っているデータセンターは、まだ少数派、という声が聞かれた。
例えば住宅でも、新築時には余裕だと思っていた部屋の数やコンセントの数が足りなくなったりする。家族の数が増えれば、当然必要とされる設備も増える。データセンターも同じこと。適切な拡張計画を立てるとともに、設備を後から増設できるようにしておけば、拡張に伴うインフラの不足も解消できるだろう。
イニシャルコストだけを考えるならそれでも良いかもしれないが、運用を考えれば適切なマネジメントが不可欠というのは、これまでの記事で理解していただけたと思う。むしろ、運用段階で必要になる人的コストや復旧に要する時間の損失などを考えれば、最初に少し多くコストを要したとしても、いずれ回収できるはずなのだから。
取材したケーブリングメーカーでは、いかに早くサービスインするかが問われる現在、ケーブリングは非常に重要な要素になるという。その理由は、機材の購入はすぐにできても、配線工事には絶対的な時間が必ずかかるからだ。そのためにどのようなポリシーが必要なのか、どのようにケーブルマネジメントすべきか、データセンターはもちろん、ユーザー自身も考えておくべきだろう。
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