IBMとMSの独壇場に切り込む――サイボウズの大規模グループウェアが見せる自信
IBMとMicrosoftの独壇場に切り込む――大企業向けグループウェアの最新版を発表したサイボウズは、国内で成熟を迎えたグループウェア市場におけるシェアの拡大に本腰を入れ始めた。
「今年最大級の製品発表になります」――サイボウズの青野慶久社長は記者会見の冒頭で自信を見せた。サイボウズは4月14日、大企業向けグループウェアの最新版「サイボウズ ガルーン 2 バージョン 2.5.0」の販売を開始した。2009年1月末までに、4億円以上の売り上げを目指す。
最新版では新たに、「スケーラビリティ」「横断検索」「リマインダ機能」の3点を強化した。
スケーラビリティを強化したことで、約1万人が同時に利用できるようになった。同時に3000人程度の利用が可能だった従来製品「ガルーン 2 バージョン 2.1」に対し、3倍以上の拡張性が実現した。データベースにはオープンソースのRDBMS「MySQL」を採用している。
検索機能の強化では、ガルーン 2.5と連携する「サイボウズ 全文検索サーバ for ガルーン」の販売を開始した。ファイルだけでなく、電子メールや掲示板などの本文、添付ファイルから必要なデータを横断検索できるようになった。検索画面では、データの登録者や更新者、掲載期間といった条件を基に、詳細にデータを絞り込んだ検索も可能となる。
リマインダ機能は、ガルーン 2の最新情報や更新、予定の通知などポップアップ表示で知らせるもの。Webブラウザでガルーン 2を起動しなくても、情報を表示できる。
「品質、スケーラビリティ、機能のいずれを見ても世界に打ち出せる製品が完成した。自信を持ってガルーン 2.5を展開したい」(青野氏)
IBMとMSの独壇場に切り込むガルーン 2
テクノ・システム・リサーチの調査によると、国内グループウェアの市場規模は2007年までの5年間で約300億円と横ばいである。青野氏も「成長市場ではない」と認める。ガルーン 2.5が1万人以上の規模で利用可能になったことを受け、サイボウズは新たなグループウェア市場の開拓を進める。その矛先は大企業と海外市場だ。
世界のグループウェア市場は、「IBMとMicrosoftが独占している」と青野氏。一方で、「中国などグループウェアの導入が進んでいない」(同氏)といった現状もある。現在海外展開を視野に入れ、米国や欧州などの調査を進めている。
海外展開で好調なのはアジアである。2007年に設立した中国の子会社であるサイボウズ上海の業績が活況だ。「2007年末あたりから、上海の日本企業に売り込んでいるグループウェアのASP(ソフトウェアの期間貸し)サービスが好調。40社弱の導入があり、年内に黒字化できるのではないか」(青野氏)としている。海外展開に応じて営業体制を整備する考えも持っているという。
国内におけるグローバル企業の需要を受け、日本語と英語に対応する製品を現在開発している。リリースは「来年の早い段階」(青野氏)を予定している。
開発にオフショアを選択、教育期間は1年
ガルーン 2.5の機能開発は、ベトナムの企業と共同で進めた。2006年から約1年間、サイボウズが現地に社員を送り、開発の教育を実施。2007年3月に開発を開始した。ベトナムの企業は、上流工程の仕様策定を含めた開発工程を担当し、要件の半分を実装・試験した。
オフショア開発の裏には技術者の人材不足の問題が隠れていた。「技術者の採用が困難だった。一緒に開発してくれるパートナーとしてベトナムの企業を選んだ」(青野氏)。今後は、3月に開設した愛媛県の開発拠点「松山オフィス」で同時に開発を進める。「愛媛のニアショア開発、海外のオフショア開発も取り入れて、ものづくりの会社としての姿勢を見せる」(同氏)。
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