女性のIT起業家が極めて少ないのはなぜか?:「IT業界の人々」の傾向(4/4 ページ)
ベンチャービジネスの起業件数全体では女性起業家が半数以上を占めるのに、IT分野のベンチャー企業だけで見ると、その比率は5%にも満たない。
スタンフォード大学のクレイマン・ジェンダー研究所において、Diana Projectの継続研究として、ハート氏と共同でポストドットコムバブル時代の状況の調査を行っているアンドレア・ヘンダーソン氏によると、2001年のIT不況で特に大きな打撃を受けたのが女性起業家だという。
ドットコムブーム最盛期の2000年には、IT起業家の7%を女性が占めていたが、その比率は現在、約4%前後で低迷している。
「ドットコムブームは新参者が業界に参入するチャンスだった。市場が崩壊した後、最も先に立ち直ったのは、業界で長い実績と成功経験を持った人々だ」とヘンダーソン氏は語る。
ドットコムブームのころ、女性のIT起業家はかつてなく多かったが、彼女たちの多くは、ベンチャーキャピタリストがIT企業に再投資し始めたときに新たな挑戦をしなかった。女性たちがなぜ戻ってこなかったのかという問題に関しては、ほとんど調査が行われていない。
「初めての起業で成功するチャンスの前にバブルが崩壊したとすれば、復帰する機会はなかったかもしれない」とヘンダーソン氏は話す。
ドットコムバブルの崩壊が女性に与えた影響は、連続して成功した女性起業家がほとんどいないという状況に顕著に現れている。
「BoardRoom Magazineが以前行った調査によると、連続して成功を収めた女性起業家は非常に少ない。男性はベンチャー事業が失敗しても再挑戦する可能性が高い。事業が失敗した後でも成功のチャンスがあるというメッセージは、女性には届いていないようだ」とボスメック氏は語る。
女性IT起業家はどこに?
女性が立ち上げた事業の発展を妨げる上記の要因(小規模ビジネスでとどまる傾向、人脈の欠如、指導者の不足、ベンチャーキャピタルに参画している女性が少ないこと、ドットコムバブル崩壊後の離脱率の高さなど)が、女性が起業するITビジネスが極端に少ないという状況を説明する理由のすべてなのだろうか。
これらの理論は議論の出発点だが、すべての答えではないと主張する人もいる。
「女性のベンチャー事業に投資する人が少なくなってきた理由として、さまざまな説明がなされている。必要な教育や経験が女性には不足しているという議論もあれば、女性は高いリスクを避けたがるとか、自分だけで事業をコントロールしたいのでパートナーと組むのをいやがる女性が多いといった主張もある。しかしこれらの理由はどれ1つとして、IT分野において女性起業家の比率が極端に低い(5%以下)という状況の説明としては不十分だ」とヘンダーソン氏は指摘する。
1つの有望な可能性として、女性起業家にとって不利となる現状に女性たちが注目するようになれば、彼女たちはすぐに変化するということがある。
「わたしたちは女性起業家の人脈づくりを支援すべく、彼女たちを連続起業家に結び付けている。経験のある専門家を紹介することで、彼女たちに近道を提供できると考えている」とボスメック氏は語る。同氏が勤務するAstiaがコンサルティングを行った企業の成功率は60%を超えるという。
しかし「BusinessWeek」誌の記事が端的に示しているように、IT起業家の一般的なイメージは相変わらず、Facebookのマーク・ザッカーバーグ氏やDigg.comのケビン・ローズ氏のような、負けん気の強い若い青年だ。そして多くのベンチャーキャピタルを運営しているのも、主としてこういった顔ぶれだ。
「ベンチャーキャピタリストに女性の顔ぶれが目立つようになれば、間違いなく変化が起きるだろう」とボスメック氏は話す。
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