ミューチップ採用の図書が30万冊 「赤レンガ図書館」に行こう:突撃! ユビキタス空間(2/2 ページ)
大正時代に建設された赤レンガ倉庫を建物の一部に組み入れた北区立中央図書館が開館する。30万冊の蔵書にICタグ「ミューチップ」を取り付けており、図書の貸し出しなどが自動でできる。一足先に体験してみた。
ミューチップの採用は、ユーザーだけでなく、図書館スタッフの業務の利便性も向上させる。
北区立中央図書館では、蔵書点検の効率化を課題としていた。従来はハンディリーダで蔵書を1冊ずつ点検する方法を取っていたが、「1人1時間当たり600〜1000冊の点検で精一杯」(東京都北区立中央図書館の小野克巳図書主査)だった。
1日で1人が点検できる冊数は大きく見積もって「7000〜8000冊が限界」。これまでは、30万冊すべてを点検するのに3、4日を費やしていた。
今回採用したミューチップは、非接触で情報を読み取れる。書架に並ぶ図書の背表紙上を専用のリーダでスライドさせると、蔵書点検が完了する。一般的な本棚の幅は90センチ。そこに50冊の図書が並んでいる場合、「約3秒で読み取れる」(日立製作所全国公共営業本部の西川良太主任)
従来の蔵書点検に比べて点検のスピードは飛躍的に上がる。だが実際には「電波で情報を伝達するICタグでは、読み取りミスをゼロにはできない」(小野氏)。今回採用した非接触性のコンビタグでは、「50冊中、1〜2冊は読み取り漏れが起きてしまう」
この問題には、蔵書点検を日常業務に組み入れることで解消すると小野氏。「例えば、1年に10回以上点検をして、そのすべてで読み取れなかった図書があれば、不明本として処理する」。点検を素早い時間で繰り返し行うことで、読み取りの精度を100%に近づけていく。
コンビタグはコストの削減にも寄与する。図書館で採用している13.56MHzの一般的なICタグに比べて、「約20円安い価格で提供できる」(西川氏)という。
「今後蔵書を50万冊まで増やす予定であり、ランニングコストの削減においても大きな効果が期待できる」(小野氏)
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