マネジメントの真髄に迫る――富士通 野副新社長が語った決意と本音:Weekly Memo(2/2 ページ)
今回は、富士通が8月5日に開いた経営方針説明会から、野副新社長の決意と本音、そしてマネジメントの真髄に迫る発言を筆者なりにピックアップしてみたい。
オフコンのような事業構造を再構築すべき
「かつてのオフコン事業のように、販売パートナーの方々にもしっかりと利益を得ていただけるような事業構造を再構築すべきだと考えている」
野副社長は、システム製品分野における中堅・中小企業向け市場を対象とした販売パートナー戦略についてこのように語り、さらにこう言及した。「富士通はこれまで幾度も中堅・中小企業向け市場に注力すると言ってきたが、私に言わせるとこの市場は、その中身を熟知しておられる販売パートナーの方々の力を全面的にお借りするべきだ。富士通はそうした販売パートナーの方々に魅力を感じていただけるように、競争力のある製品・サービスを提供していくことに徹するべきだと考える」。同社が7月に導入した主査制度は、その取り組みの一環だという。
この発言はほとんど報道されていないが、中堅・中小企業向け市場における富士通の事業スタンスをあらためて明確にした点で、重要なメッセージだといえる。
「富士通がお預かりしている社会的に影響の大きいシステムの障害対策については、経営トップの責任のもと背水の陣の体制で臨む」
野副社長は、東京証券取引所で7月に起きたシステム障害の対策として、8月1日付けで「特定社会システム監視本部」を設置したことを明らかにした。東証のシステムのように、社会的に影響が大きいミッションクリティカルシステムを第三者視点で集中監視していくという。そして野副社長はこう語った。「私は黒川前社長のようにSE経験もないし、システムを語れるわけでもない。しかし、富士通グループとして社会システムをお預かりしている以上、大きな責任がある。新組織は経営トップ自らが責任を持ち、経験やノウハウを持つ人材を投入して第三者機関として機能することによって、(東証のシステム障害のような)問題が二度と起こらないように、あるいは万一起こっても迅速に対応できるようにするのが使命だ」
この発言も、いわゆる社会システムに対する同社のマネジメントのスタンスを明確にした点で注目される。
そして野副社長は、説明会をこう締めくくった。
「富士通の強みは、ひとえに人材。例えばSEでは、グループ全体で22000人以上の人材がソリューション/SI事業を支えている。さらに今後は“お客様のお客様起点”でソリューションを提供するフィールド・イノベーターが本格的な活動を開始する。こうした富士通の強みをもっと活かしていきたい」
冒頭の発言にあった「富士通の強み」とは、まさしく人材である。説明会全般を通じて、力強さときめ細かさが印象的だった野副社長。その決意と本音が随所に感じ取れた会見であった。
プロフィール
まつおか・いさお ITジャーナリストとしてビジネス誌やメディアサイトなどに執筆中。1957年生まれ、大阪府出身。電波新聞社、日刊工業新聞社、コンピュータ・ニュース社(現BCN)などを経てフリーに。2003年10月より3年間、『月刊アイティセレクト』(アイティメディア発行)編集長を務める。(有)松岡編集企画 代表。主な著書は『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。
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