グリーンITの現状と課題が見えてきた――JEITAユーザー調査から(前編):グリーンITと仮想化(2/2 ページ)
社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)は、グリーンIT、環境負荷低減に向けた企業や団体の取り組みについて、アンケートやヒアリングによるユーザー調査を行った。「AMD Green IT 2008」での調査報告をリポートする。仮想化技術については関心は高いがまだまだ実施状況は低調のようだ。
5年以内に消費電力が設備の最大容量を上回る?
次に、「IT活用環境での消費電力削減について重視しているか否か」についての設問では、「非常に重視」が8%と少ないのに対し、「やや重視」が44%、「あまり重視せず」「重視せず」を合わせて42%となり、ITのグリーン化に関する取り組みがまだ本格的に始まっているとはいえない印象だ。
具体的な行動目標値を設定しているかについても、「既に設定」が2%、「目標値を検討中」も2%と低く、「今後設定予定」が19%、「設定するつもりなし」が44%、「よく分からない」が34%となるなど、先の環境負荷低減の方針/目標値設定の回答と比べると大きく差が出る結果となった。
今後IT領域での総電力使用量の把握については、「アセスメント実施済み」が12%、「今後把握したい」が50%となるなど、「さほど気にせず現状のままでよい」と考える23%を上回り、削減に取り組む意欲がうかがえる。特に、データセンター利用率が高い金融/保険/証券での電力の削減意識が高い。
だが、データセンター事業者側からの回答によると、IT機器の消費電力量は58%が「増加傾向」にあると答え、サーバ台数も2005年頃から年率20〜30%ほど増えているという。そして、51%の事業者が、IT機器の消費電力が設備の最大容量を上回る時期を5年以内と予測している。
「省電力」はサーバの選定要因にならず
サーバの選定要因を尋ねると、「処理能力」(71%)、「信頼性/可用性」(66%)、「コストパフォーマンス」(62%)がいまだ3大関心となっており、「省電力」(7%)は投資の対象にはなっていない現実がある。
その反面、サーバ統合や集約化には関心が高まってきており、最新の調査では既に6割の企業・団体がサーバの統合・集約化を実施、あるいは計画・検討中と答えている。その統合・集約化の技術は何を用いているかとの問いには、「ブレードサーバ」(43%)、「仮想化技術」(43%)となり、ブレードサーバ導入にあたっては熱問題に対応する専用フロアを設置し、電源容量も従来の2kW/ラックから10kW/ラックへ強化しているという。仮想化技術は注目度が高いものの、「活用済み」は15%、「計画/検討中」も11%程度となり、適用分野も情報系や開発用など限定的な導入といえる。
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