コスト削減の努力を正しく評価する方法――地方行政でのアイデア:闘うマネジャー(2/2 ページ)
行政のシステムは高価格だと言われるが、その主原因は入札仕様書の曖昧さにある。長崎県では職員が中心となってシステムの設計書を書き、曖昧さをなくし、コスト削減の努力を続けている。この努力が、システム稼働後の改修作業などでマイナス評価につながらないよう、さまざまなアイデアの実行で対処している。
コスト削減分を新たな工夫に生かす方法
筆者は、無謬の原則と単年度主義を逆手に取ることにした。逆読みすると「年度内において、予算の範囲内で改修まで行い、システムをリリースした場合、何の問題もない」ということになる。もちろん、他県と比べて予算額が小さくないと駄目だが、設計書を発注側で用意するという手法をとることで、ここは確実にクリアできる。後は、年度内にシステム開発と改修まで全て完了するだけであるが、これは分割発注によりクリアできる。入札単位を500万円以下に設定すると、落札価格は300万円以下となることが多く、改修項目が3%〜7%程度発生したとしても金額にすると9万円〜21万円である。これなら、改めて予算要求せず、現予算の中で調整した方がよい。
しかし、これだけでは財政部門の納得が得られない。入札により削減された金額は、予算執行部門が自由に使っていいお金ではなく、財政部門に戻した上で改めて使い道を検討すべきお金だという考えがあるからだ。独自の手法を考え出した結果だとしても、財政部門はお構いなしである。そこで職員と相談して、ちょっとした作業に使える役務費という予算項目を建てることにした。コピー作業と簡易製本の費用を役務費で払うような感じで理解してもらうと分かりやすいだろう。
勘違いや誤りなどで発生する改修は、新たな開発ではなく、作業と考えることにし、予算策定時にシステム開発委託費のほかに、「改修作業等役務費」を建てた。何のことはない、想定外の費用を予算項目として事前に入れただけである。ほか県と比べ1/3〜1/2の価格でシステム開発している実績をベースに、この手法を進めるのに役務費は欠かせないと堂々と説明したのだ。
以上の手順を踏んだことで、制度的な問題はクリアされ、職員はシステムリリース前に気付いた課題やリリース後に寄せられる要望に対して、予算等に悩まされることなく対処ができるようになった。もちろん、マイナス評価が発生するなんていうこともない。
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