システムを守っていくための正しい世代交代とは:闘うマネジャー(2/2 ページ)
システムのダウンサイジングは、複雑化したアプリケーション群をあいまいなまま放置して進めることではない。さらに言えば長年蓄積された開発担当者の業務ノウハウを若い世代に伝えないままでは、新しいシステムを守りきることはできないのではないか。
10年後、誰が面倒を見るのか
移行手法の検討から、開発、動作検証も含め2年以内にダウンサイジングするということは、もしかして、肥大化、複雑化したアプリケーションをあいまいなまま放置し、機能もそのままに移行するということなのではないだろうか。まさにダウンサイズを実践しているだけなのではないか。
汎用機(=専用機)からオープン系サーバへ移行すれば、トータルコストは下がる。CIOは「コスト低減」の目標を極めて短期間で達成したことになる。評価され出世し、より中心に近い新たなポストが与えられたりすることだろう。ところで、企業の社長の任期は2年で、2期4年することが多いようだ。 うがった見方だが、「2年以内のダウンサイジング完了」とは、1期目で新方針の打ち出しとともに計画し、2期目で完了ということにつながり、3期目を狙うのにちょうど良かったりしないか。もちろん、本業での評価=社長の評価に決まってはいるのだが、十分な加点ポイントにはなりそうだ。
業績評価が現在ほどではなかった数年前の各種メディアの記事には「既存のアプリケーションを流用するのは単なる問題の先送りでしかない。肥大化したアプリケーションを解体しなければ、レガシーシステムの根本的な解決にならない」とある。まさに正論である。業績評価により企業の業績は若干上がるようだが、正論を堂々と述べる人物を排除してしまってるのではないか。結局、上を見てコツコツと仕事をする人が育つだけなのかもしれない。「企業の財産は人」とよく耳にするが、次世代を担う人物を育てなくていいのだろうか。
つい最近、ダウンサイジングに関する記事を読んだ。その記事には、移行に当たっては、デファクト・スタンダードであるMVCモデルを採用し、ビューは若手を中心にJavaで、モデルはベテラン中心にCOBOLで開発した、とあった。
確実性を高め、かつ効率的な開発を行うために適材適所を行ったのだから、進め方に誤りがあったとは思わない。むしろ、最善の方法を選んだと思う。しかし、システムを守っていくための世代交代はどうするのだろうか。ベテランといわれる方々が持っている業務知識は、世代交代できずにそのままだ。数年もたてば、ベテランも開発の現場から離れ出世してしまったり、退職していく。10年経ったとき、このシステムの面倒は誰が見るのだろうか。何となく背筋に寒さを覚えるのは筆者だけだろうか。
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