コラム
ダウンサイジングに8年、その背景と理由:闘うマネジャー(2/2 ページ)
安易なシステムのダウンサイジングはコスト増に陥る結果になりやすい。次世代にしっかりと受け継がれるものを構築する必要がある。
システム需要の地産地消
読者もご存じだと思うが、住民税や県民税は自治体ごとで異なる。同じ計算式ではない。住民から聞かれたことを、ベンダーに問い合わせてから回答していたのでは、時間がかかり過ぎだし、非効率だ。やはり、システム上の業務知識を次世代へと受け継がせなくてならない。
前回書いたように、汎用機上のシステムは設計書があいまいだし、スパゲッティー状態で、どれが使われていて、どれが不要かも分からない。この状態を正すには、現状分析の実施が欠かせない。さらに、次世代に引き継ぐためには、新たに作成するシステムでは詳細な設計書に基づいた開発とし、開発途中の変更も設計書に残すようにしていかなくてはならない。しかし、正しいが極めて困難な仕事であるため、職員に安易なスケジュールを提示すれば「そんなことは不可能だ」と逃げられる。安心して携われる期間が必要である。だから、8年とした。
後は、8年が妥当な期間として納得できるかどうかである。まず8年の意味として以下の2つを理解してもらうことから始めた。
- 詳細な設計書を県庁が用意した上で、発注するスタイルとする。これにより、システムの著作権を県庁が保持できるようにする。
- オープンソースを用いたダウンサイジングとし、完成後、OS・ミドルウェア等の保守費を発生させない。
現状分析・設計書作成等に時間はかかるが、オープンソースを用いることで、開発経費の負担を押さえ、かつ開発完了後の経費を最小にすることを理解してもらった。さらに、次の2つを考えてもらった。
- 業務知識に関しては詳細な設計書により補完できるが、地場企業には十分といえる体力がない。毎年、少しずつ発注していくこととすれば、体力の問題はクリアでき、地域のシステム需要を地域で賄うITの地産地消が可能となる。
- 地域の人材育成には、長期かつ安定的にシステム需要を提示していくことが必要で、一過性の政策であってはならない。
時間はかかるが、コストを掛けずに地域の人材育成ができることを理解してもらった。以上で8年の期間は妥当と決した。
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