「商品力を数値で予測」――SAS、製造業向けパッケージを発売
SASは、品質分析や在庫の最適化を支援する製造業向けパッケージを発売した。在庫や欠品をモニタリングして販売計画を予測し、業績アップを導く。
SAS Institute Japan(SAS)は10月23日、品質分析や在庫の最適化を支援する製造業向けパッケージ「SAS Demand Driven Forecasting(DDF)」および「SAS Quality Lifecycle Analysis(QLA)」を発売した。計画系のサプライチェーンマネジメント(SCM)により、在庫削減を促す。
「SCMを取り入れても、業績が飛躍的にアップするという例はあまり聞かない。売れ行きなどを予測した販売計画を立てきれていない」
SASの宮田靖執行役員は、国内の製造業がSCMを生かしきれていない現状をこう語った。製造、販売それぞれに強みを持つ企業はあっても、在庫や欠品をモニタリングして販売/在庫/財務計画のPDCAサイクルを回し、「作ることと売ることを結び付ける」ことができている企業は多くない。
SCMの成功例として宮田氏が挙げたのはユニクロだ。商品の企画、製造、販売のすべてを1社で行う製造小売(SPA)というビジネスモデルを展開し、女性向けキャミソール「ブラトップ」などのヒット商品を生み出してきた。連結決算で過去最高の売上高を記録するなど、製造業では一人勝ちの状態が続く。宮田氏は「製販在データの調整から、売り上げにつながる販売計画ができている」と説明する。
今回発売した2製品は、複数の業務プロセスからデータを集め、精度の高い需要予測を基に、複数の商品の売れ行きや品質、在庫を最適化するもの。分析結果はダッシュボードに図やグラフとして表示する。リポート形式で出力することも可能だ。
商品力を数値で予測
DDFは、各部門のシステムや業務プロセスのデータから最適な予測モデルを作り、製造と販売、在庫予測を最適化する製品。生産、販売、市場、顧客の嗜好などを網羅的に分析して、在庫管理や販売戦略に役立てられるという。
製造業が新製品を出す場合、売り上げの見込みや旧製品の在庫の削減を的確に予測する必要がある。DDFでは、商品の市場が今後どれだけの割合で推移するか、規模はどれだけになるかなどを分析し、各企業の商品のシェアを予測する。投入する新製品が他社/自社製品の対してどれだけのシェアを占めるかを数値で割り出す。
分析結果から、減衰傾向にある製品の生産を止め、どのように在庫を売り切ればいいか、顧客の顧客のニーズに応じてどれだけのロットを作ればいいかといった緻密な計画を立てられる。同社のビジネス開発本部、SCIビジネス開発部の米田慎一氏は「商品力を数値として予測できるのが強みだ」と語る。
QLAは、品質のデータを一元的に統合し、問題の監視や原因分析を行い、部門をまたがる情報共有を実現する。ビジネスインテリジェンスの機能を持ち、歩留まりや不良品の割合を分析できる。
部門ごとに違ったシステムを運用している場合、データの基準が一本化されていない場合が多く、すべてのデータを集めるのに数日間の期間を要することもある。QLAでは、専用のデータ統合サーバが市場品質や生産管理といったさまざまなデータを自動的に統合し、1つのデータウェアハウスに収納。製品別や定型分析用といったデータマートに加工する。「あらゆる部署のデータを即座に集めて分析する。歩留まり率を向上し、リードタイムを減らせる」と米田氏はその強みを語る。
価格はDDFが2500万円から、QLAは2200万円から。今年中に2社ずつへの導入を目指す。
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