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情シス部門の信頼回復に努めた改革者――ソニーCIOGartner Symposium ITxpo 2008レポート

「CIOに就任した当時のIS部門は多くの問題を抱え、トップからの信頼も低かった」と語るソニーの長谷島氏。IS部門の生え抜きとして同社のシステムを誰よりも知る男が断行した改革とは?

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 IT調査会社のガートナー ジャパンが主催する情報システム部門向けセミナーイベント「Gartner Symposium ITxpo 2008」が3日間の日程で開催している。初日の10月27日には、ソニーの業務執行役員でCIO(最高情報責任者)を務める長谷島眞時氏が「ソニーを支える情報システム戦略とその実践」というテーマで基調講演した。長谷島氏は「これからの情報システム(IS)部門は、企業のビジネスモデル構築にも積極的に関与すべきだ」と意気込んだ。

 ソニーは3年前からビジネス戦略とIT戦略の整合をとるマネジメントプロセスを導入し、さまざまな改革を進めてきた。旗振り役として2004年にCIOに就任したのが長谷島氏だ。

 当時のソニーは、非接触ICカード技術「FeliCa」に関する事業会社を設立したり、民生用として世界初のHDV規格1080i方式に対応したデジタルHDビデオカメラレコーダーを発売したりと、革新的な技術を相次いで提供していた。一方で、ソニーのIS部門は多くの問題を抱えていた。システム開発プロジェクトの遅延、増大するシステムの運用コストなどが深刻で、経営トップからは「将来の青写真(全体の設計図)が見えない」としばしば指摘されていたという。「IS部門への信頼が著しく低下していた時代」と長谷島氏は振り返る。

IS部門再生に向けた3つのテーマ

ソニーのIS部門生え抜きの長谷島眞時氏
ソニーのIS部門生え抜きの長谷島眞時氏

 信頼回復に向けて長谷島氏がスタートさせたのが「IS Reborn」という改革プロジェクトである。まずは100人を超えるIS部門のメンバー全員で改革シナリオを議論したところ、共通の問題意識として浮かび上がったのが「(営業、マーケティング、製造など各部門の)全体最適」「実行力の強化」「IS部門のガバナンス」の3つだった。

 これらのテーマにどういった施策を打ったか。全体最適については、これまで部門ごとにばらばらだったSCM(サプライチェーンマネジメント)、販売、製造などの機能に横ぐしを入れ、業務プロセスを機軸にした仕組みをつくった。さらにプロセスアーキテクト(設計監視者)を設置することでプロセス全体の管理を強化した。

 実行力の強化については、外部に依存していた業務を内製化した。IS部門のコア領域に当たるシステムの保守や運用だけでなく、上流工程である企画、要件定義、基本設計に関しても外部コンサルタントを登用せずに社内の人間が担当した。

 「これまではIS部門にナレッジが蓄積されていない状況だった。各事業部門に存在したIS機能を集約して、自らやろうと決めた」(長谷島氏)

 IS部門のガバナンスについて、着任以前にはソニーのCIOに関する定義がなかったため、長谷島氏は予算、人事、承認などの権限をCIOに集中するよう新たな定義を打ち立てた。加えて、グローバル展開に向けて業務ルールを世界の全拠点で共通化した。

 そのほかIS部門の風土改革にも着手し、社員自らが考え、発言する環境を構築した。例えばメンバー全員が定期的に会議室に集まり、車座になって議論し、長谷島氏が1つずつ質問に回答するような場が設けられた。これはIS部門共通のミッションとなり「経営トップも理解を示した」(長谷島氏)という。

これからのIS部門の役割

 数年にわたりこうした改革を進めてきた結果、IS部門に対する期待は高まり「かけがえのない存在」(長谷島氏)に変わろうとしていた。今後の方針として長谷島氏は「ソニーのビジネスに貢献すること、BRICsなど新興市場に対する成長戦略を支えること、BCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)やセキュリティといったビジネスリスクの最小化に努めること」を掲げた。特にリスクに関しては、ソニー全体の死活問題につながるため、決して対策の先送りはしないと強調した。

 「IS部門の役割は変化している。システムだけでなく、これからは業務プロセスやビジネスモデルもIS部門がつくっていくべきである。もはや与えられた仕事をこなすだけの時代ではなく、新たな仕事を見つけ出し主体的に取り組んでいくことが重要なのだ」(長谷島氏)

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