ユーザーの意識改革なしにWinnyからの情報漏えいはなくならない:ネットの逆流(3)(2/2 ページ)
ネットを通じた情報漏えいで、マスコミ報道されることが多いのがWinnyやShareなどファイル共有ソフトからのもの。なぜこうした情報流出は減らないのだろうか
ディアイティは8月27日、こういったファイル共有ソフトを悪用したウイルスを疑似体験できる「暴露ウイルス体験ツール」を無償公開した。「暴露ウイルス」なるものがいったいどういうものかピンとこない場合、このようなツールを使って疑似体験してみるのも、1つの手かもしれない。ちょっと試してみるつもりで、機密情報が漏えいしてしまっては元も子もないからだ。
ウイルスの危険性が理解できたら、必要なのは「意識の変革」に相違ない。
「奢り」で身を滅ぼす
こういった情報漏えいでありがちなのは、「自分だけはそんなことはしない」「自分にそんなことは起こらない」という、根拠のない自信である。そして、個人パソコンなどへ持ち出してはいけないデータを持ち出して、結果的に情報流出させてしまうといったケースがほとんどだ。
したがって、データを持ち出さなければ、データ流出は起こらない。多くの企業では、情報漏えい事件が報道されるようになって以降、Winnyなどのファイル共有ソフトの使用を禁止しているので、会社内からの流出するケースは少なくなった。事実、報道された事件の多くで情報の持ち出しが行われている。
最近は、高性能なモバイルツールも登場し、外出先でも、自宅でも、会社の仕事をする人は増えている。しかし、個人情報など機密データの持ち出しにはルールを定め、厳守させる必要があるのだ。それには特例はない。
しかし、どうしても情報を持ちだす必要がある、という人もいるかもしれない。その場合は単純だ。Winnyなどのファイル共有ソフトを使用しないパソコンを利用すること。そして、暗号化されたUBSメモリなどを利用するなど、セキュリティに配慮すること。そうすれば、少なくとも「暴露ウイルス」からの情報漏えいは起こらないはずだ。
「自分は大丈夫」――この奢りが、会社を、組織を破滅へ向かわせる第一歩となるかもしれない。いや、それだけではない。2007年には、千葉県市原市の小学校教諭が、児童269人分の個人情報をWinnyを通じて流出させ、その責任を感じて自殺するという事件も起きている。自分の身を滅ぼすかもしれないファイル共有ソフトからの情報流出。防ぐために必要なのは、まずは自分自身の意識改革なのだ。
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