Mozilla Labの至宝が語る未来のFirefox:Focus on People(2/2 ページ)
Mozilla LabでユーザーエクスペリエンスのリードとしてUbiquityを初めとするさまざまなプロジェクトを担当するエイザ・ラスキン。ユーザーインタフェース研究の第一人者として知られる彼が未来のFirefoxについてjune29に語った。
これからのFirefox
「特にラーメンが大好きだ」と話すラスキンさん。プレス向けにUbiquityのコマンドを紹介する際も、「I love ramen!」を100回くり返して表示するという彼以外には使う人がいないようなコマンドをさっと記述していました。とても親近感を覚えます
june29 最後に、これからのFirefoxについてお聞かせください。
ラスキン まず1つ。これはブラウザに限ったことじゃないけれど、ソフトウェアの機能や特長は、長期的に見たときに優位性にはなりません。これらは時間が経てばコピーされて陳腐化してしまう。イノベーションの生まれ続ける環境を持つことが優位性になります。
june29 Mozillaにはそれがある、ということですね。
ラスキン そうです。なぜなら、Firefoxはオープンソースだからです。Mozilla Labsにはメンバーが8人しかいません。そんなわたしたちは、GoogleやApple、Microsoftには敵わないでしょうか。そんなことはありません。Firefoxにはコミュニティーがあります。開発者コミュニティー、ユーザーコミュニティーがあります。その中には、プログラマーも、学者も、ほかにも各種業界人がいます。コミュニティーの規模こそがわたしたちの力なのです。
そしてUbiquityやほかのプロジェクトによって、コミュニティーへの参加のしきい値をさらに下げたいと考えています。
june29 力強いお言葉です。ラスキンさん個人としては、Firefoxをどのようにしていきたいとお考えですか。
ラスキン もっともっと、使っていることを意識しなくていいように、Firefoxをなくす、あるいは見えなくする方向に進ませたいですね。Mozilla Labsの人間の目標が、Firefoxをなくすことだなんていうと逆説的ですが、イノベーションというのは、常に破壊的でないとね!
june29 なるほど。では、もう少し短期的に見て、近い将来のブラウザ像についてはどうでしょうか。
ラスキン 2008年現在、これだけWebサイトが動的なものになってきているにもかかわらず、ブラウザと呼ばれているもののほとんどは実に静的で、10年前の姿とあまり変わっていません。
june29 10年前と比べると、タブブラウザが一般的になったとか、そういった変化はあるでしょうか。
ラスキン タブのおかげで、ウインドウが散らかることはなくなり、かなりマシになったとは思います。それでもまだ、さらなる改良の余地はあると感じています。
june29 僕もタブブラウザは便利だと感じていて、いつも10から20個くらいのタブを開いて使っているのですが、頻繁にタブ間を移動するときは不便に感じることがあります。だからといって、よりよいインタフェースの案があるわけではないので、あまり偉そうなことはいえません。
ラスキン 自動車業界に「コンセプトカー」があるように、FirefoxにもFeatured Conceptsというシリーズがあって、アイデアベースで未来のブラウザを描いたビデオを公開しています。ここでは「ブラウザのブックマークと履歴」「モバイルブラウザ」といったようにコンセプトを絞って、あるべき姿について模索しています。これを見ていただくと、わたしたちが考える未来のブラウザに触れられます。
あなたも、タブが「もっとこうあってほしい!」と思うのであれば、ぜひそのコンセプトを思い描いて発表してみてください。
june29 これは知りませんでした。後ほどゆっくりと見てみたいと思います。「今のブラウザに何を足すか」と考えるのではなく、一度まっさらなところから考えているのですね。これまた破壊的でわくわくします。
まとめ
2時間ほどのインタビューの中で、ラスキンさんは、UbiquityやFirefox、Mozilla Labsのほかのプロジェクトについて、常に短期的な視点と長期的な視点を同居させ、未来をイメージさせてくれました。
おそらくUbiquityは、ラスキンさんやMozilla Labsのメンバーの方々が考える未来への、ほんの一歩にすぎないのでしょう。現状、ブラウザ操作に10の手間が掛かっているところを、Ubiquityは5にしてくれるかもしれない。しかし、彼らはそこで満足することなく、その手間を限りなく0に近づけるための壮大な実験を続けているのでしょう。
そして、今回お聞きしたようなMozilla Labsの活動は、単にFirefoxだけの話に留まらず、未来のブラウザを考えるオープンな議論の場をすべてのユーザーに提供し、コミュニティーとともにMozillaも成長していくためのものであり、オープンソースの持つ力とはそういうものなのだと、繰り返し強調していたのが印象的でした。
コラム:エイザ・ラスキンはどういったエクステンションに魅力を感じているのか
常によりよいブラウザについて思索を続ける、そんなラスキンさんのお気に入りの拡張機能について聞いてみました。インタビュー中、ラスキンさんのノートPCで動いているFirefoxを見ると、それほど拡張機能はインストールされていないようですが……。
ラスキン とても良い質問ですね。そうですね……、まずはAdblockですかね(笑)。
june29 Adblockですか(笑)。この流れでAdblockがくるとは!
ラスキン 後はCoolirisも素晴らしいね!
june29 昔はPicLensと呼ばれていたものですね。あれも面白いユーザーインタフェースですよね。はじめて体験したときは「何だこれ!」と思いました。
ラスキン 大量の画像を楽しむ素晴らしいインタフェースですね。Webサイトのブラウジングも、もっとリッチに楽しくしたいです。
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