証券窓口を持ったトラックが東京の街を駆け抜ける:カブドットコムの新たな挑戦(2/2 ページ)
カブドットコムはネット証券の窓口機能をトラックに積んだ営業所を作り、東京の街を駆け抜けている。ネット上で顧客を待つのではなく直接出向く――ネット証券のビジネスモデルの枠を超えた取り組みで、これまでに開拓できなかった顧客に働きかける。
随所にこだわった内装、支えるのは人間工学
トラックの後部にある自動ドアから室内に入ると、リビングのようはモダンな空間が広がっている。2、3人が腰を下ろせるソファと机、その下にはじゅうたんが敷き詰められている。飲み物を入れた冷蔵庫もある。
「システム構築よりも、移動営業所を総合的にデザインすることの方が難しかった」。谷口氏は移動営業所の完成には、内装へのこだわりが欠かせなかったと明かす。
ソファはホテルなどに設置しているものと同じ高さにし、顧客が座った目線にはディスプレイのみを置く。壁や天井を白色にしたり、光が射し込むように透過ガラスを採用したりすることで、室内における圧迫感をなくした。「やすらげる空間を作ったのは、顧客とラフなやり取りができると考えたから。密閉された空間だと、顧客の真の要望は聞けない」と谷口氏は言う。
目下の課題は静音性だ。自家発電装置を使うことで、稼働音が生じる。今後はこうした課題を解決するため、改良を重ねていく。
主戦場はあくまでもインターネット上
移動営業所は、営業拠点をかまえるよりも安価に、株価の動きをその場で確認しながら、ネット証券の始め方などをアドバイスできる。インターネット上ではつかみきれない「万人のささいな声を集め、要望をつかめる」(中島氏)ことが魅力だという。
10月10日のお披露目から、イベントなどで移動営業所を使っている。視覚に訴えかける巨大で風変わりな車に足を止めて見入る人も多く、カブドットコムの認知度の向上にも役立っているようだ。
カブドットコムは現在、月に1〜2回移動営業所をイベントなどで使っているが、将来的には週に1回以上のペースで走らせる計画もある。ATM(現金自動受払機)を搭載するなど、2号機、3号機の開発も進めていく見通しだ。
とはいえ「あくまでも主戦場はインターネット上」と中島氏は念を押す。移動営業所は顧客開拓のチャネルを拡大するツールの1つ。「オンライン上で証券をやり取りしてもらうことで利益が出る」(中島氏)というビジネスモデルを見越して、ネット証券のハードルを低くするためのものという位置付けは変わらない。
新たな顧客の開拓を目指して、カブドットコムの移動営業所は街中を走り続ける。
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