openSUSE 11.1がクリスマスより一足早くリリース:Super Review(2/2 ページ)
カスタマイズの利便性を犠牲にしてでも、とにかくLinuxを使いやすいものにしようとする傾向には注意が必要だが、それをのぞけばopenSUSE 11.1は安定性と完成度の非常に高いシステムの1つに仕上がっている。
openSUSE 11.1のデスクトップシステムは、すべて最新の安定版ソフトウェアで構成されている。KDEはバージョン4.1.3がバンドルされているので、KDE 4支持派も納得できるだろう。このKDEには、新機能の1つとして、ハードウェアでサポートされている場合にKWinのコンポジット機能をデフォルトで有効にする機能が含まれている。あるいは、付属のSimple CompizConfig Settings ManagerからCompizを選んで使うこともできる。デスクトップにフォルダのような働きをさせることも可能だ。フォルダビュー(Folder View)と呼ばれるこの機能を使えば、これまでずっとほかのフォルダで見てきた“ビュー”をアイコン、ファイル、リンクに持たせることができる。
また、GNOME 2.24では、ファイルマネージャNautilusの機能が強化され、インタフェースのタブ化、Tasqueという新しいタスク管理ツールの導入、組み込み検索の改良が行われている。今回のopenSUSEはGNOMEとの統合化も進み、ウィジェットも洗練化された。
openSUSE 11.1は、KDE 3.5が付属する最後のリリースになるだろう。この旧バージョンのKDE向けのパッケージは、11.1より後のopenSUSEではもうメンテナンスもミラーリングもされず、今後は重要度の高いセキュリティ修正しか実装されないことになっている。
最新の安定版であるXfce 4.4.3も利用できるほか、一般的なアプリケーションについても最新かつ最高のバージョンが用意されている。わたしのお気に入りのアプリケーションだと、OpenOffice.org 3.0(Novell Edition)、Firefox 3.0.4、GIMP 2.6.2、Amarok 1.4(2.0も利用可)、Totem 2.24、Evolution 2.24、FlashPlayer 10.0、Pidgin 2.5.1、GnuCash 2.2.7などが挙げられる。また、システム内部は、Linuxカーネル2.6.27、GCC 4.3、Xorg 7.4で構成されている。さらに、パワーユーザー向けにはXenハイパーバイザ、Apache Webサーバ、MySQLデータベースのほか、システムバックアップ(System Backup)とシステム復旧(System Restoration)のツールも用意されている。もちろん、これらは氷山の一角にすぎない。ほかにも素晴らしいソフトウェアがたくさん付属するが、数が多すぎてここでは紹介しきれない。
ハードウェアのサポート
ここでは、2台のマシンでopenSUSE 11.1をテストした。1台はLinux用に構成されたデスクトップマシンで、そのハードウェア構成では基本的には何の問題も起こらなかったが、KWinだけはデフォルトで有効にならなかった。このマシンにはNVIDIA製グラフィックスカードが載っており、その機能を有効にするにはプロプライエタリなドライバが必要だったからだ。それ以外は、初回のブートですべて動作した。
続いて、意外に使える旧式のHewlett-Packard製ノートPCでもopenSUSE 11.1をテストした。やはりNVIDIA製のグラフィックスカードが原因で3Dデスクトップ効果を有効にできなかったほか、Ndiswrapperを使って無線イーサネットチップのWindows用ドライバを利用しなければならなかった。また、NetworkManagerはこのデバイスに対応しておらず、ifupを使った旧来の方法でのネットワーク接続を余儀なくされた。こうするとローミングが多少難しくなるが、設定した接続はブートの時点から使える状態になる。
まとめ
全体的に見て、今回のリリースもよくできている。やはり安定性と完成度の非常に高いシステムの1つであり、あらゆるユーザーのコンピューティングニーズに応えることができるだろう。わたしの環境では幾つかの小さな問題に遭遇したものの、総合的には満足のいく結果だった。
しかし、使いやすさ重視の風潮への極端な迎合には失望させられた。カスタマイズの利便性を犠牲にしてでも、とにかくLinuxを使いやすいものにしようとする最近のLinuxディストリビューション開発陣の傾向には、行き過ぎが見え始めている。確かに初心者ユーザーのためには使いやすくすべきだが、そのために熟練ユーザーにとって使いづらいものや、セキュリティをおろそかにしたものになってしまってはならない。openSUSEをはじめとするディストリビューションには、風潮に流されることなく、両者のほどよいバランスを見極めてもらいたい。
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