いつか来る好況のために――不景気は改革の最後のチャンス:「2009 逆風に立ち向かう企業」テクノブレーン(2/2 ページ)
急激な経済情勢の悪化に雇用情勢は深刻な影響を受けている。転職すべきか、とどまるべきか。IT業界に特化したサーチ型人材紹介会社テクノブレーン能勢賢太郎社長に、この時代をどう乗り切るべきかを聞いた。
ITmedia 雇用情勢が厳しい現在、どう過ごせばいいでしょう?
能勢 先に述べたように、今転職できるのは特殊な例です。多くにとっては、軽率には動かず、現在の会社で息を潜めているのがよいのではないでしょうか。今は転職にいい時期ではありません。
代わりにスキルや知識を蓄えておくといいでしょう。会社を見極める目も大事です。これは転職に興味がない人にも重要です。今いる会社に将来性があるのか、ないのか。より端的に言えば、今、会社に注文伝票があるのか、ないのかです。昨今の経営はとても切実な状況ですから。
とても厳しい時代にさしかかっていますが、今はこんな時代を生き抜く力を鍛えるための試練の時期と考えることもできます。どんな人も、人生でいつかは厳しい時代に直面することになるでしょう。どの年代でそれを迎えるかは人によりますが。今の経験はピンチを切り抜ける力やチャレンジする勇気を持つ契機としてとらえることができます。
この時期は企業やそれぞれにとって改革するための最後のチャンスになるかもしれないと考えています。
直近では経済も雇用は厳しい情勢ですが、今後3〜5年の範囲で考えたらITの人材が不足するのは明らかです。今は急激に落ち込んでいますが、ここで雇用の動きが抑制される分、上昇に転じたら一気に反動が来ます。そのときに備えておくべきです。
ITmedia それはいつと考えますか?
能勢 現時点では転換期がいつになるかは明確には分かりません。これまでの周期から考えると、少なくとも春くらいまでは厳しい状況が続く可能性があります。回復するとしたらその先でしょう。
いつかは再び好況になります。ここで実力を付けておかないと、いざ経済が上昇に転じたときに取り残されてしまうでしょう。ただ不況を嘆いて耐え忍んでいるだけでは、好景気の波が来たときに乗れません。
社会構造は常に変化していますが、不景気のときほど大きく変化します。次に景気が回復すれば何かが大きく変わっているでしょう。その時に備えて考え方を変え、スキルを磨いておくべきです。
まだ日本には力があると思います。ここで変化に対応する準備をしておけば好景気になったときに大きく伸びることができるでしょう。
ITmedia 最後に、2009年に個人的にやってみたいことは何かありますか?
人材紹介業にとっても試練のとき。こうしたときこそ、まずやるべきことをしっかりやる。問題ではなく機会を見い出す。
例えば海外人材の活用や優秀な日本人の海外での活用など、皆が手放すビジネスの中に小さな成功を積み重ねたい。
関連記事
- 売るのはソフトではない、「チームワーク」だ
企業情報の共有/活用は、ビジネスの礎である。グループウェア大手、サイボウズの青野社長は自社のコアコンピタンスを「チームワーク」に据え、エンドユーザーに価値を提供するという。 - 日産自動車の新たな“挑戦”――「日産GT 2012」
2008年5月に発表した決算で、2009年3月期の連結純利益が2期ぶりの減益に転じると発表した日産自動車。そんな同社を新たな成長軌道に乗せるために策定された5カ年計画が「日産GT 2012」だ。 - 「資産としてのIT」――だからこそ大切に、そして活用は戦略的に
マイクロソフトの執行役常務の佐分利ユージン氏は、ITは企業の資産であると定義し、プラットフォームベンダーとしてその活用をサポートしていくことが責務であると宣言する。 - 景気後退期に生まれる新しいビジネスを支えていく
業務パッケージソフトで知られる弥生株式会社。景気後退が叫ばれる中「今年は楽しみでしょうがない」と言う岡本浩一郎社長に話を聞いた。 - 建築のプロが考えるシステム構築の未来形
住宅大手のミサワホームで情報システム担当部長を務める北上義一氏は、情報システムと建築が似ていると指摘する。SaaSの利用、BIや仮想化などを取り入れる同社のシステムには建築から見た情報システムの未来が見えてくる。 - システムへの飽くなき愛着が成長の原動力
インターネットで書籍やCDを販売するセブンアンドワイは、ビジネスの領域をテレビなどに広げ、堅調な成長を遂げている。「仕事もシステムも汗をかいてこそいい成果が生み出せる」と語る鈴木康弘社長に話を聞いた。 - 情報を扱うのは人間、セキュリティの大原則を忘れずに
情報漏えいに代表される企業のセキュリティ事件が経営にダメージを与えるケースが増加している。経営を取り巻く環境が厳しさを増す中で、企業は2009年におけるセキュリティリスクへどのよう立ち向かうべきだろうか。 - 耐えながら攻める――アウトプットを最大化する情報基盤
カシオの矢澤篤志業務開発部長は、厳しい経営環境の中で攻める姿勢を保ち続けるための情報基盤を整えたと話す。 - できる人なら楽しめる「正解のない時代」
三菱地所は、丸の内再開発の一環として、日本経済再生をリードする新事業の創造を世界視野で支援するという「日本創生ビレッジ」を運営している。世界から集まる起業家の多くは、いま押し寄せる不況を楽しんでいるようにさえ見えるという。 - 自ら考え創意工夫を重ねることが、今求められている
東レの情報システム部門長、重松直氏は「厳しい時期には創意工夫をいかに凝らしていくかが大切。部門にとっての成果とは何かを常に明示していきたい」と話す。 - 消費者の買い控え傾向は追い風だ
価格比較サイトを運営するカカクコムは、景気後退により買い控えが鮮明になりつつある消費者の「買い物を失敗したくない」という心理をすくい上げ、右肩上がりの成長を続けている。安田幹広取締役COOは「商品に対する消費者の目は鋭くなる傾向にあるが、これは追い風だ」と言い切る。 - ビジネスの本質と顧客満足へこだわりが成長の礎に
「短絡的な経営体質に陥ることのないよう、今こそ本質にこだわるべきだ」とシマンテック社長の加賀山進氏は話す。骨格となる事業領域でのパートナー、顧客との信頼が生き残る術になるという。 - 未曾有の金融・経済危機、今こそITの出番
大規模なシステム統合プロジェクトを完遂したメガバンクの雄、三菱東京UFJ銀行は、百年に一度という金融危機の中、生き残りを賭けて、さらなる経営改革に取り組む。根本常務執行役員情報システム部長は「ITの出番は多い」と話す。 - 潜在化と巧妙化が進む脅威には“クラウド”が効く
2008年は事業を左右する機密情報を狙ったサイバー攻撃が激増。厳しい経営環境を勝ち抜くには、企業システムを適切に保護するセキュリティ対策の重要性が増すとトレンドマイクロ取締役の大三川彰彦氏は話す。 - 情シス部門が主役になる日
ソニーは2008年末、大規模な人員削減を発表した。コスト削減の圧力が強い一方で、情報システムを長期的な成長エンジンとして位置づける。ビジネス部門に積極的に提案をするようなIS部門を目指すと話すのは長谷島眞時CIOだ。 - 「IT部門の再生工場を目指す」――ITR内山社長、2009年の展望
金融危機の影響を避けられない2009年、企業のIT投資は縮小傾向になるとITRの内山社長は話す。「新規投資ができない時こそ、人材育成に労力を注ぐべき」だという - 新春特集:2009年 逆風に立ち向かう企業のIT経営
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.