ERP市場が5年ぶりに縮小へ 不況によるIT投資の凍結が波及:BIやコンプライアンスには根強い支持
国内における2009年のERP市場規模は5年ぶりにマイナス成長になると矢野経済研究所が発表した。景気悪化が企業のIT投資意欲をそぎ、その影響がERP市場に波及する。一方で経営判断やコンプライアンスに対する企業の要望は根強く、2010年以降に再び拡大路線に転じる。
景気悪化が企業のIT投資意欲を減退させ、2009年における国内のERP(基幹業務管理パッケージ)市場の規模は、5年ぶりに縮小する――。調査会社の矢野経済研究所が2月9日に発表した調査で、堅調な成長を見せてきたERP市場がマイナス成長に転じることが明らかになった。
同研究所によると、2008年に起こった景気の急激な悪化に伴い、IT投資の凍結や案件の先送りをするユーザー企業が急増。近年は拡大路線を歩んでいたERP市場だがこの影響を免れることができず、ERP市場の成長鈍化が鮮明になる。
こうした傾向から、2009年のERP市場は、前年比2%減の1230億円にとどまると予測。ERP市場の縮小は2004年以来5年ぶり。
IT投資を抑制し始めたのは、年商1000億円以上の大手企業および年商100億円未満の中小企業が中心。ERP市場をけん引してきた自動車や電子・電子機器といった製造業で予算の絞り込みが顕著になっている。一方で、年商100〜500億円の中堅企業の市場規模は堅調を持続する。
2009年に起こる受注減少のあおりを受け、2010年のERP市場もマイナス基調になるという。だが、コンプライアンスへの対応などERPに対する企業のニーズは根強いとの見方で、2010年以降は再び成長路線を描くと矢野経済研究所は推測する。
ERP市場の成長を下支えするBIとコンプライアンス
2008年のERPパッケージライセンスの市場規模は前年比7.1%増の1255億円、パッケージのライセンスやコンサルティング、サポートといったサービスを含むERPソリューション市場は、前年比4.6%増の5879億円と、どちらもプラス成長を維持。これは2007〜2008年初頭の受注分が影響したため。
矢野経済研究所はこれまでの動向から、2009年のERPベンダーの販売戦略のキーワードを「見える化」と想定。具体的にはデータを分析して経営の意志決定を支援するBI(ビジネスインテリジェンス)やEPM(経営・業績管理)、情報をグラフで表示する簡易的なフロントエンドツールなどが盛り上がるという。ERPに蓄積した情報を可視化して経営判断に結び付ける手法は、不況下でも力を発揮すると見ているからだ。
また、規模や上場/非上場といった立ち位置を問わず、コンプライアンスに対する意識が企業で高まっていることから、経営を迅速に進めるためのIT基盤としてERPの採用が進み、市場を下支えするとしている。
財務会計、人事給与、販売管理、生産管理など基幹業務データを統合する情報システムを構築するためのパッケージソフトウェアであるERPの市場規模について、国内のパッケージベンダー23社に研究員が面談で調査した。調査期間は2008年10月〜2009年1月。
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