医薬品のネット販売は本当に規制すべきなのか:ネットの逆流(12)(2/2 ページ)
先日公布された省令により、6月から医薬品のネット販売が規制されることになった。この規制は本当に必要なものなのだろうか。
別の調査からも見ていきたい。
アイシェアが2月に発表したネット調査では、インターネットを利用して購入できなくなると最も嫌な医薬品という設問に対して、「どれもイヤではない」が53.2%を占めている。逆にいえば約半数はネット購入をしたいと思うものがあるということになる。その内訳は「サプリメント」が13.4%、「コンタクトレンズ」が11.1%で、ほかは2〜3%程度で細かく分かれている。
ネット利用の医薬品購入の利点を尋ねた設問では「時間を気にせず購入できる」が35.9%、そして「人目を気にせずに商品を比較・検討できる」が18.2%、「宅配してくれる」が15.2%、「分からないことをネット検索しながら購入を検討できる」が12.3%と続き、利便性や実用性が求められていることが分かる。
コンビニやスーパーなど薬剤師が不在の店舗での医薬品販売をどう思うかという設問に対しては、「購入してもいい」が57%と過半数を占めたのに対して、「許可するべきではない」という反対意見は17.3%と大差がついた形になった。
ドラッグストアなどで対面で薬品を購入する際に、どれだけのケースで薬剤師からの説明を受けるだろうか。事細かな説明を受けるのは、病院で処方された薬を、調剤薬局で購入する時くらいではないだろうか。この現状が、改正薬事法によって変化するのかどうか、はなはだ疑問である。
ネットでの販売にも懸念はある。欧州の例だが、オンラインで販売されている薬品の62%が、偽造品か規格外の製品だったという調査結果が発表された。違法なオンライン薬局に関しては、当然規制を進めていく必要がある。だが今回話題になっている医薬品のネット規制とは別の問題だ。日本の場合は、JODAへの加盟などによって体系づけられている。JODAは、2008年8月6日には、医薬品のネット販売継続に向けた最初の自主ガイドラインを発表、先述のように11月には販売方法も定め、取り組みを強化した。
果たして、ネットでも対面の原則を満たすことができるのか。かつて、ドン・キホーテで、テレビ電話を使って店舗と薬剤師を結んで医薬品を販売するサービスを始めた際に、議論を呼んだことがある。難しい点もあるかもしれないが、規制を強める前に何かできることがあるのではないだろうか。ぜひ、規制するという「結論ありき」ではない検討会を設置してもらって、既得権益を守るためではない、真の利用者のためになる改正をして欲しいものだと思う。
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