中堅・中小企業向けERP市場、成長も09年以降は伸び鈍化:安易に攻略できぬ中小(3/3 ページ)
SMB(中堅中小企業)向けERP市場は、2008年度まで順調に2桁の伸びを示してきた。だが、経済環境の悪化という逆風に加え、基幹業務システムの統合化がすべての企業にとって必要かどうか疑問視されるなど必ずしも楽観的な状況ではない。
追随困難な中小企業クラス、OSK、OBCが圧倒的な地盤
中小企業クラスでは全く別の世界がある。OSK(大塚商会)vsオービックビジネスコンサルタント(OBC)の2社による戦いだ。OSKは大塚商会による直販(複合販売で中小企業クラスを足で稼ぐ地道だが)による強力な販売力。OBCは勘定奉行で得られた圧倒的なブランド力、チャネル力で中小企業を面でカバーしている。
この2社は、今後どちらかが中堅Lクラスに早くリーチできれば総合力として優位にたてるだろう。実際のERP製品としてはOSKがリードしているが、OBCの奉行シリーズが単体モジュールでは強い背景を考慮すると、結局中小企業クラスではこの2社が抜けているという見方が正しい。
中小企業クラスは企業の潜在ニーズとしては最も「バッファ」が大きい市場であるが、中堅企業クラスに比較した場合にトータル予算は少ない。しかし求める要求は「自社最適なソリューション」であることに違いはない。中堅企業と中小企業でも提案する工数は極端な違いはない。むしろユーザー企業内に専任スタッフが少ない面やリテラシーが低い分、かえって面倒なくらいである。
むしろ丁寧な提案と面倒見が求められる中小企業は、非常に難しい分野であることを考えると「中堅が厳しいので、中小へシフト」などという安直な考えで攻略できる分野ではない。そこに大塚商会なりOBCチャネルが厳然としてシェアを誇っていられるだけの、ビジネスモデルを有しているのだ。その仕組みが彼らの生命線であり、多くのベンダーは「手離れの悪い、儲けの少ない」企業でどのようにビジネスをできるかを学ぶべきだろう。
この記事は「08年版中堅・中小企業向けERP市場の実態と展望:ノークリサーチ刊」を元に書き下ろしたもの。詳細は以下のレポート参照。
著者プロフィール:伊嶋謙二
ノークリサーチ代表。中堅・中小企業を中心とするIT導入実態調査及び導入動向分析、同市場に対するベンダーへの戦略提言などを得意としている。執筆、講演なども多数。
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