大幅に改善されたIE 8――しかしライバルたちは既に一歩先へ:安定性が向上(2/2 ページ)
eWEEKラボで「Microsoft Internet Explorer 8(IE 8)」をテストしたところ、使い勝手、セキュリティ、安定性の面でIE 7と比べて大幅に改良されていることが分かった。しかしGoogleの参入など、ブラウザ市場の状況は短い間に大きく変化し、IE 8は既にライバル製品から一歩後れを取っている。
プライバシーも大切
プライバシー関連で最も注目すべき新機能が「InPrivateブラウズ」機能である(これは「ポルノモード」とも呼ばれている)。InPrivateブラウズでは、ユーザーが特別なウィンドウを開くことにより、そのセッションに関する情報がブラウザのキャッシュや履歴に一切保存されないようにすることができる。InPrivateブラウズセッション中は、ブラウザのアドレスバーに「InPrivate」アイコンが表示される。
InPrivateブラウズセッションを開始するには、IE 8の「Safety」メニューから特別なウィンドウを開く。空白の新規タブから(あるいはキーボード上でCtrl+Shift+Pを押すことによって)InPrivateセッションに入ることもできる。この機能については、Google Chromeなどのブラウザが備える同様のプライバシーモードのように、任意のリンクを右クリックすることにより、別のプライベートブラウジングウィンドウでInPrivateセッションを起動できるようにしてもらいたかった。
InPrivateブラウズには「InPrivatフィルタリング」という魅力的な機能が組み込まれている。この機能はサードパーティーのサイトがユーザー情報をサイト間で移動するのを防止するのに役立ち、ユーザーはこういったデータ共有を許可するサイトを指定することができる。
そのほかにもプライバシー関連の新機能として、IE 8では「Delete Browsing History」機能のオプションが追加された。ユーザーはどのデータを削除するかをきめ細かくコントロールできるようになり、一部のWebサイトのデータは残し、ほかのサイトのデータは削除するといったことが可能になった。
IE 8のセキュリティ機能は、IE 7や競合ブラウザで追加された機能(ユーザーが悪質なWebサイトに移動したり、マルウェアがブラウザを通じて動作したりするのを防止する機能)がベースになっている。
IE 8の「SmartFilter」は、ユーザーがWebサイトに移動する前にそのサイトをチェックするサービスである(ユーザーがこれを無効にすることもできる)。既知のフィッシングサイトあるいはマルウェアが含まれていることが知られているサイトであると特定された場合、IE 8はユーザーがそのサイトに移動する前に警告ページを表示する。
またIE 8では、閲覧中のサイトの主要ドメイン名が太字で表示される。これは、ユーザーがアクセスしようとしているサイトのURLに似ている(実際には異なる)URLを識別するのを容易にする。
これらの分かりやすいセキュリティ機能に加え、スクリプティング攻撃、ActiveXの悪用、不正なデータ実行を防止するための機能がIE 8には組み込まれている。こういった対策がセキュリティを改善するのは確かだが、同ブラウザのセキュリティは万全だと期待するのは禁物だ。新しいブラウザすべてについていえることだが、今回のIEの新バージョンでもセキュリティ問題が出現するのは避けられないだろう。
Microsoftは、IE 8で安定性の改善も図った。中でも最も歓迎すべき改善点がタブの隔離である。これは、不安定なサイトにアクセスしたときに、ブラウザ全体がクラッシュするのではなく1つのタブだけがクラッシュするというもの。テストではこの機能はきちんと動作したが、問題を起こしたサイトをタブ内で何度も再読み込みしようとするのには少しいらいらした。停止ボタンを押すまで、タブがクラッシュする動作が繰り返されたからである。
標準のサポートに関しては、朗報もあれば残念なニュースもある。
IE 8は、MicrosoftのブラウザとしてはIE 5以来、標準サポートが最も充実した製品であるのは明白だが、最新世代のWebブラウザの中では標準への対応が最も遅れている。Web Standards Projectの標準対応テスト「Acid3」では、IE 8は最新ブラウザの中で最も得点が低かった。
また、IEの従来版向けに作成されたサイトとIE 8との間の潜在的な互換性問題に対処するため、IE 8には「互換性ビュー」という機能が用意されている。これを有効にすれば、IE 8ではうまく動作しないサイトを表示させることができる。IE 8の後期β版、リリース候補版および最終版のテストでは、平均すると1週間に1回は互換性ビューを利用しなければならなかった。ほかの最新ブラウザで問題が遭遇するサイトよりも、IE 8で問題が起きるサイトの方が多かったのは確かだ。幸運なことに、これらのサイトでは互換性ビューによって問題が解決した。
IE 8は頻繁な使用という状況においても全般的に安定していることが示され、リソースを大量に消費することもないようだ。
新ブラウザをリリースするベンダーの例に漏れず、Microsoftも現在出回っているブラウザの中でIE 8が最も高速だと主張している。各社のブラウザのスピード競争に関するわたしの見解は既に明らかにしているので、テストではIE 8は通常のWeb利用に関しては十分高速であるように思われたと述べるにとどめておく。
Microsoftの新ブラウザでは当然かもしれないが、IE 8は現在、Windows XPとVista上でのみ利用できる。Microsoftの新ブラウザを試したい人は、こちらからダウンロードできる。
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