低評価の情シス子会社、生き残りの道はあるか:アナリストの視点(2/2 ページ)
情報システム子会社に対する評価は、親会社およびユーザー企業のいずれも厳しい。こうした評価を払しょくし情報システム子会社の価値を高めるためにすべきことは何か。調査結果を基に考察する。
親会社ゆずりの業務知識で企画プロセスに食い込め
情報システム子会社の業務は、(1)顧客企業の業務内容からニーズを把握、整理してソリューションを提案する「企画プロセス」、(2)企画したシステムを構築する「開発プロセス」、(3)開発したシステムの運用を請け負う「運用プロセス」――の3つに大別できる。
評価が高かったコンサルティング力とソリューション提案力は、(1)の企画プロセスで重要になる能力だ。コンサルティング力とソリューション提案力が評価を集めたのは、情報システム子会社がこれらの能力で必須となる業務知識を豊富に持っているからだ。長年蓄積してきた親会社の業務知識がそのまま評価につながったと言ってもいい。
一方で、情報システム子会社は、親会社が企画したシステムを開発プロセスから請け負うことが多く、企画プロセスに参加できていない企業も目立つ。強みとなる業務知識を生かして企画プロセスの立案に食い込み、ユーザー企業が取引をしているSI/ITベンダーに割って入りたいところだ。
情報システム子会社が生き残るために
情報システム子会社の評価で最も低かったのはサポート体制であり、不満および大変不満の回答を足しあわせると85.0%に上った。一方ユーザー企業が取引をしているSI/ITベンダーのサポート体制は、大変満足という回答が13.3%とほかの項目よりも高かった。これにより、情報システム子会社のサポート体制は、SI/ITベンダーに比べて明らかに低いことが分かった。
サポート体制は(3)の運用プロセスで重要になる能力だが、親会社に身近な存在で臨機応変に対応しているはずの情報システム子会社の評価が低い。これは運用サービスそのものへの取り組みが弱いためといえる。
親会社の評価が日増しに厳しくなる中、情報システム子会社が意識的に業務に関連する能力を向上するにはどうすればいいか。まずはコンサルティング力とソリューション提案力にいっそう磨きをかけるべきだ。
具体的には外販による顧客獲得などを考えることで(1)企画プロセスの能力を伸ばし、継続的に利益が見込める運用サービスを強化することで(2)運用プロセスを強化するといった流れを作ってみてはどうか。こうした取り組みがコンサルティング力とソリューション提案力のレベルアップ、さらにはサポート体制の充実にもつながってくる。こうした取り組みが新たな収益源とサービスレベルの向上をもたらすはずだ。
情報システム子会社は、親会社のIT戦略を支えるためにも、みずからを成長させていかなければいけない。そのためにも自社を客観的に評価し、必要な能力を継続的に高める努力が必須になる。
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