「ダメ営業・コンサル」の域を抜け出せ:ビジネスマンの不死身力(2/2 ページ)
自分の経験を得意気に話し出す営業やコンサルタントを顧客は信用しない。ではこれらの職種に必要な能力は何か。コーチングの視点から考える。
例えばホームページを作りたいという経営者がいたとしよう。「ホームページなら、今流行りの動画を入れて、経営者自身が更新できるようにCMS(コンテンツ管理システム)形式のサイトにしましょう」と提案するのもいい。だが経営者がホームページを作りたい理由は、単にほかの会社を真似して情報発信をしようと思っているだけかもしれないし、集客ツールとしてホームページを使いたいだけなのかもしれない。
集客ツールとして使いたい場合、もしその企業が地域密着型なら、駅前でビラを配ったほうが集客できるかもしれないし、リピーターの呼び込みのためにメールマガジンを送る方がいいかもしれない。経営者が困っている課題や企業の形態によっては、ホームページが最適な解決策とは限らない。
読者の中には「いまどきホームページを作れば顧客が集まるなんて思っている経営者はいない」と思われている方もいるかもしれないが、これはあくまでも一例だ。「生産管理のシステムを構築したい」「購買管理のシステムを構築したい」といった要望でも基本は同じである。顧客の要望をうのみにして「ではこれを……」と提案することで、顧客の問題は本当に解決できるのだろうか。顧客が「何で困っているのか」をもっと聞き出さなくていいのだろうか。
本音を聞き出す「傾聴力」と「質問力」
顧客から本音を聞き出すためには、「傾聴力」と「質問力」が必要だ。
傾聴力を上げるには、自分が言いたいことをひとまず脇において、相手が何に困っているのかを「ただ、聞く」という感覚を持つといい。その際に「○○でお困りなのですね」「一言で言うと、○○なんですね」と、相手の意見を繰り返したり、要約して伝えてたりしてみよう。顧客は聞き手に繰り返されることで、本当に困っていることを再確認する。
質問力を上げるには、顧客が欲しいと言っていることよりも、困っていることを問いかけてみることをお勧めする。5W1Hの観点で「何について、なぜお困りなのですか」などと具体的に質問をすることで、問題の焦点が明確になる。また、「その目的は何で、それを実現することは、御社にとってどんな意味があるのでしょうか」など、目的を確認することで、顧客とのビジョンを共有できるようになるだろう。
メモを取るペンを置いてしまった知人は……
先日、知人の会社に営業のコンサルタントが来たそうだ。そのコンサルタントは、某大手商事会社を退職後、さまざまな会社のコンサルタントを経験し、大手企業の新入社員教育では千人近い人から賞賛されたと話し始めたらしい。知人は、ものめずらしさからコンサルタントの話を聴いていたが、途中であきれ返ってしまい、メモを取るのをやめてしまったという。なぜ知人はペンを置いてしまったのだろうか……。
そのコンサルタントは簡単な質問をした後、ほかの会社の事例を延々と語り始めたという。「会社はそれぞれ形態が違う。同じような解決策では通用しないこともあるはず。本来なら、弊社の問題点を明らかにするには、さまざまな角度から質問を投げかけ、答えをヒアリングすることからはじめるのがコンサルタントの仕事ではないのか」と知人は言っていた。そのコンサルタントの名刺には、自分がいかにすごい経歴の持ち主であるのかを示すように、あふれんばかりの肩書きが書かれていたそうだ。
もうお分かりだろう。このコンサルタントには「傾聴力」や「質問力」がまったくといっていいほどない。顧客の悩みを共有しないで、自分の考えを得意げに話すだけのコンサルタントは、はっきり言って迷惑である。営業担当もコンサルタントも、接する相手は人間である。自分の意見を話す前に顧客の意見を聞き出すことを心掛けておきたいものだ。
著者プロフィール:竹内義晴(たけうちよしはる)
テイクウェーブ代表。自動車メーカー、コンピュータ会社を経て、現在は、経営者・起業家・リーダー層を中心としたビジネスコーチング、人材教育に従事。システムエンジニア時代には、プロジェクトマネジメントにコーチングや神経言語学を生かし、組織活性化を実現。この経験を生かして、クライアントの夢が現実になるよう、コーチングの現場で日々奮闘している。アイティメディア「オルタナティブ・ブログ」の「竹内義晴の、しごとのみらい」で、組織作りやコミュニケーション、個人のライフワークについて執筆中。
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