IPTV技術の標準化を目指す「Open IPTV Forum(OIPF)」は6月12日、千葉で開催されたイベント「IMC Tokyo 2009」で、記者向けに最新動向を説明した。IPTVサービスのオープン化を狙い、国内企業への参加を呼び掛けた。
Open IPTV Forumは2007年に設立され、通信機器メーカーや通信事業者、ソフトウェアベンダーなど55社が参加する。日本からはパナソニックやソニー、東芝、シャープ、Accessらが加入している。
IPTVの市場動向について、OIPF議長を務めるEricsson戦略製品ポートフォリオマネジャーのユンチャオ・フー氏は、「世界的に市場が立ち上がり始め、消費者に対する業界全体のマーケティング展開が重要になりつつある。IPTVの多様なサービスを実現するためにもオープン化を進めたい」と話した。
IPTV技術の標準化に向けた動きでは、ITU-T FG-IPTV(国際電気通信連合電気通信標準化部門IPTVフォーカス・グループ)などによる勧告や、国内では「IPTVフォーラム」による技術仕様の取りまとめなどが進められている。フー氏は、「われわれはオープン性のある仕様を生かして、機器の相互接続性を確保したい。SLAを前提とした高品質なサービスを実現させる」と述べた。
OIPFでは、今年8月をめどに技術仕様リリース1を公開する計画で、すでにリリース2の策定も同時に進めているという。リリース1では基本仕様を、リリース2ではパーソナルサービスを中心とした仕様になる予定。特にリリース2ではテレビやPC、携帯電話といったデバイスを跨ぐシームレスサービスが可能になるとしている。
2009年末もしくは2010年初頭から異なるメーカー製品同士の相互接続性試験に着手する計画で、2010年以降に対応機器が提供される見込みだという。
フー氏は、OIPFの狙うオープンサービスに実現に日本の機器メーカーやコンテンツ事業者などの存在が不可欠だとして、参加を呼び掛けた。「これまでIPTVフォーラムと十分な接触が図れなかったが、OIPFに参加する日系各社はIPTVフォーラムのメンバーでもあり、なるべく足並みをそろえたい」(同氏)
しかし、両団体では技術要件を中心に異なる部分も多く、容易に連携できない部分もある。例えばユーザーインタフェースの構築部分では、IPTVフォーラムがデジタル放送で広く採用されているBML(Broadcast Markup Language)を推進しているのに対し、OIPFはHTMLを推進する。
また、フー氏は「日本のビジネスモデルは垂直統合型であり、われわれは水平分業型であるため、基本的なスタンスも異なる。しかし、日本の事業者にはグローバル市場に進出できるメリットがあり、その点も踏まえ国際連携を考えていただきたい」と話している。
関連記事
- NGNの悲劇──日本は5年後もブロードバンド大国でいられるか
欧米はテレビや携帯電話をキーワードにブロードバンド化を進めている。携帯電話のビジネスモデルとは反対に、グローバルビジネスにつながる機器ベンダー主導型のIPTVビジネスは、携帯電話でGSMを生み出した欧米ではなく、むしろ日本で生まれた。だが、そこでは、「NGN」を「夢の高度な次世代ネットワーク」として宣伝するNTTの戦略で、IPTV界のGSMが空転するという悲劇も起こっている。 - 「IPTVの課題」――意外に知られていないその事情
インターネット経由で映像が配信されるのも当たり前になったが、テレビ向けに配信する「IPTV」はまだ普及の初期段階。そのIPTVが普及するため、乗り越えなければならない課題を考えてみたい。 - IPTVの統一規格策定へ 放送・通信・家電各社が合意
IPTVの統一規格を策定する「IPTVフォーラム」が中間法人化。8月までに仕様Ver.1.0を策定する。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.