「運用管理」が企業ITのエコ化を促す――ノークリサーチ:アナリストの視点(2/2 ページ)
企業は多数のITプラットフォームを導入する一方、IT管理を先送りし、今まさにそのツケを払わされようとしている。解決策としての運用管理ソリューションを市場調査から読み解く。
運用管理が企業ITのエコ化をドライブする
さて実際に企業で導入されている運用管理ソフトについての調査結果をみてみよう。運用管理は先にもふれたように多岐に渡っているため、全体シェアで単純にベンダーを比較することは難しい。大きくは「統合型」と「特化型」に二分される。例えば、「LANScope」はモニタリング全般を対象とした製品である。「QNDPlus」はモニタリングの中でも資産管理に重点を置いている。「A-Auto」はバッチ処理のオートメーションに定評がある。こうした特化型製品に対して、運用管理全般をカバーした統合型の代表が日立製作所(以下、日立)の「JP1」や富士通の「Systemwalker」である。
このように多くのサブカテゴリが存在し、複雑な状況となっているのが運用管理ソフトの特徴である。もともと大企業の基幹業務システムの運用管理として利用されていたが、最近では徐々に大企業で実績を積んだ統合型製品が中堅・中小企業にも浸透している。JP1がその最たる例であり、大企業同様に中堅・中小企業においても強みを見せている。最近ではSystemwalkerや「Microsoft System Center」がJP1を追撃する形で、中堅・中小企業を中心に攻勢をかけてきている。
参考までにノークリサーチで08年に実施した年商500億円未満の企業1765社の調査によると、運用管理ソフトのメーカー別シェアでは日立のJP1が26.4%でトップ。富士通のSystemwalkerが19.7%で続く。いずれも基幹業務系システムに不可欠なバッチ処理などのジョブ管理に特徴がある。3位以下ではIT資産管理などの「機能特化型製品」のエムオーテックスの「LanScope Cat6」が15.5%、そしてクオリティ「QND Plus」が12.8%とシェアを伸ばしてきている。
ITそのものの趨勢から見れば、キーワードは「SaaSやクラウド」であり、「所有から利用へ」の大きなパラダイムシフトが起きつつあるのは疑いない。しかし同時に、オンプレミスで運用しているシステムの有効活用も極めて大きな課題である。
先にも述べたように企業内にすでに導入されているITインフラをどうするか、そのもう1つのキーワードが「統合・集約化」であり、それに対応する技術が「仮想化」である。多くの企業が注目している仮想化技術を中心としたサーバ統合は、膨大な数の物理サーバを削減することでコストを下げることが可能になる。そこに「運用管理ソリューション」は大きな意味で「企業のITのエコ化=経費削減&ITリソースの有効活用」をドライブする必須のソリューションとなるだろう。
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