仮想化、SaaSよりも日常業務の効率化――SMBのIT投資意欲:コスト削減のカギは地道な業務改善
中堅・中小企業のIT投資は業務改善とコスト削減が多く、営業や顧客関係を管理するシステムへの投資意欲が目立った。仮想化やSaaSなど、最新の技術を積極的に採用しようとする企業は少数だ。
中堅・中小規模の企業(SMB:Small and Medium Business)は、営業や顧客関連など現行の業務を改善するIT投資に意欲的ということが、ノークリサーチの調査結果で明らかになった。IT投資の対象として社内の定型業務を挙げる企業も多く、地道なコスト削減を進めている実態が分かった。
SMBがIT投資を継続する理由は、「業務改善」と「コスト削減」が半数を上回った。「将来を見据えたシステム構築」や「中長期で見た保守・サポート費用」の回答も40%前後となった。不況下においても、総コストを考慮したIT投資への意識は高い。一方「ベンダーに求める実績や信頼」は10%程度と低かった。自社に必要なIT投資を選び、ベンダーとの過去のやり取りには固執しない傾向が見え始めている。
業務改善に有効なIT投資項目を聞くと、「営業・販売管理システム」(40.1%)、「顧客関係管理システム」(37.5%)など、営業力の向上に結び付く投資を優先しているSMBが多い。「SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)やブログによるコミュニティーの形成」(8.4%)や「EC(電子商取引)サイトの開設」(5.4%)には消極的で、営業や顧客関連など現行の業務を改善するためのIT投資を行う動きが強まっている。
コスト削減に必要なIT投資は、「社内定型業務の効率改善」(50.3%)がトップ。「文書の印刷コストの削減やトナーの節約」(37.8%)など、全社員の日常業務にかかわる面でのてこ入れも目立つ。「情報システムの運用管理のアウトソーシング」(30.3%)も有効な手段として検討され始めている。シンクライアントや仮想化によるサーバ台数の削減、SaaSによる業務アプリケーションの利用などは20%を下回る結果となり、地道なコスト削減を実施しているSMBが多くを占めた。
年商5〜500億円の企業に、IT投資への意欲や投資項目などをインターネットによるアンケートで聞いた。調査は2月下旬に実施し、800社の回答を得た。ノークリサーチは四半期ごとに同様の調査結果を発表している。
関連記事
- 大塚商会の決算にみる中小企業のIT投資の行方
大・中・小規模の企業がほぼ均等で合計77万社に及ぶ顧客を持つ大塚商会の決算状況は、企業のIT投資の実態を示す指標ともいえる。先週、明らかになったその内容とは――。 - Report:1月の中小企業は雇用増、給与減
スモールビジネスのオーナーたちは1月、難しい舵取りを強いられる景気後退局面で、給与をカットしながらも、雇用は増やした。 - いま実行すべきは「CRM」
景気が目に見える形で悪化している。この状況では、将来の売上増大より、目の前のコスト削減を優先したいと考える企業も多い。いまやるべきは「CRM」だが、Customer Relationship Managementではない。 - 「Excelでどうにかならないか」――中小企業IT支援のミスマッチ
中小企業へのIT支援の枠組みはさまざまな形で進められている。不況が深刻化する中、こうした動きは非常に重要だ。しかし、支援する側とされる側の間でニーズのミスマッチはどうしても起こる。具体例を挙げて見てみよう。 - IT投資の必要性を熱く語ったNEC矢野社長の決意
国産IT大手ベンダー各社が先週、相次いで明らかにした2009年3月期の連結業績見通しから、今後の企業のIT投資の行方を探ってみたい。 - 日立、グループ再編で中堅中小向け事業の拡大狙う
日立製作所はSMB市場での利益獲得を目指し、グループの再編を行う。北海道、四国、九州地域のグループ会社を日立電子サービスの連結子会社にして、各地域でのITの運用サービスを強化する。 - ERP市場が5年ぶりに縮小へ 不況によるIT投資の凍結が波及
国内における2009年のERP市場規模は5年ぶりにマイナス成長になると矢野経済研究所が発表した。景気悪化が企業のIT投資意欲をそぎ、その影響がERP市場に波及する。一方で経営判断やコンプライアンスに対する企業の要望は根強く、2010年以降に再び拡大路線に転じる。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.