システム構築の砦「パッケージソフト」にもマイナス成長の余波:アナリストの視点(2/2 ページ)
メインフレームからオープンシステムへの移行、そしてWeb化とシステム構築のトレンドが変遷する中、パッケージソフトは一定のポジションを確保してきた。だが2009年は初のマイナス成長に陥るなど苦戦を強いられる。同市場の現状を数字で分析する。
下の表は、2008年度から2013年度における、各パッケージソフトウェア製品の金額ベースでの伸長率上位10製品を示したものだ。
No. | 製品名 | 伸長率 | 2008年度の実績 | 比率 | 2013年度の予測 | 比率 |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | パフォーマンス管理ツール | 241.9 | 93 | 0.7 | 225 | 1.2 |
2 | CMS | 230.8 | 33 | 0.2 | 75 | 0.4 |
3 | 検索エンジン | 187.5 | 48 | 0.3 | 90 | 0.5 |
4 | ETLツール | 177.0 | 50 | 0.4 | 89 | 0.5 |
5 | BIツール | 170.1 | 204 | 1.4 | 347 | 1.9 |
6 | ストレージ管理ツール | 169.9 | 750 | 5.3 | 1275 | 7.0 |
7 | 経営パフォーマンス管理ツール | 169.1 | 22 | 0.2 | 37 | 0.2 |
8 | EIPツール | 168.0 | 125 | 0.9 | 210 | 1.1 |
9 | ネットワーク管理ツール | 167.7 | 325 | 2.3 | 545 | 3.0 |
10 | 仮想化ソフトウェア | 165.5 | 73 | 0.5 | 120 | 0.7 |
- | その他 | 121.9 | 12.541 | 87.9 | 15.282 | 83.5 |
- | 総合計 | 128.3 | 14.263 | 100.0 | 18.294 | 100.0 |
2013年度の伸長率(対2008年度)の金額ベース上位10製品(出典:富士キメラ総研「2009 パッケージソリューション・マーケティング便覧」)。*上記には製品間の重複分が含まれる。2008、2013年度比率は重複分を含む総合計に占める割合
パフォーマンス管理ツールがトップにランクイン
この中では、パフォーマンス管理ツールが最も高い成長率になる。運用管理ツールの中では後発だが、コンプライアンス関連の需要に伴い、市場が拡大している。日本版SOX法への対応という動きもあり、2010年以降はさらなる市場の拡大が期待される。
CMS、検索エンジンなどWeb系製品の需要拡大
CMSや検索エンジンなどの市場も急成長を遂げている。両製品ともに2000年頃のネットバブル期から市場が拡大している。企業がWebビジネスを積極的に展開する傾向から、堅調な需要が見込まれるとともに、企業内の情報を有効に活用しようとする用途も増え続けている。
データの一元管理/有効活用
BI、CMS、検索エンジン、EIP、ETLツールなど、社内に蓄積した情報を共有、活用するための製品が、伸長率上位10製品にランクインしている。企業におけるIT投資は、構造化/非構造化データを一元管理して業務効率の向上を図ることに重点が置かれていくものとみられる。
SaaS型モデルの方向性
Salesforce.comなどの台頭から注目を集めるSaaS(サービスとしてのソフトウェア)について、現状活発な分野は、CRM(顧客関係管理)やSFA(営業支援システム)などのフロントオフィス系が中心だ。ミドルウェア製品や大企業向けの基幹システムに採用されるパッケージソフトウェアは、将来的にも自社運用型のパッケージソフトウェアベースでの提供が主流になる。
一方、初期コストが低く、運用管理の負担が少ないSaaSは、中堅・中小企業への浸透がある程度進む。SaaSおよびクラウドコンピューティングによるソフトウェアの利用が大規模の企業に浸透するには、クラウド環境下におけるセキュリティ対策に万全の対応を図るとともに、長期間利用した場合のコストメリットを明確にする必要がある。
富士キメラ総研では、オープン化の進展とともに各産業分野の情報システムの根幹として利用されている企業向けパッケージソフトウェアの市場を、1.バックオフィス系、2.フロントオフィス系、3.エンジニアリング系、4.経営支援/評価系、5.コラボレーション系、6.ミドルウェア、7.運用・管理ツール、8.開発ツール、9.OS――9カテゴリ51製品に区分し、各製品の全体市場規模、業種別の市場推移、市場シェアをまとめた。全体市場は、ソフトウェアライセンス費用とライセンスに付帯する保守・サポート費用を分けて、市場を分析した。
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