クラウドバーストの衝撃:伴大作の木漏れ日(3/3 ページ)
日本IBMが、クラウド環境を利用できるようにする新サービス「クラウドバースト」を7月に発表した。具体的な製品を交えた分かりやすいサービスだ。一方で、国産ベンダーの発表内容はいまひとつだ。
ソリューションとクラウド
1つの時代が終わるということは、それを支えてきたベンダーが時代の変化についていけなくなったことを意味する。この10年を見ても多くの企業が市場からの退場を余儀なくされた。彼らの大半は、技術の進化により、企業として存在する必然性を失い、消えてしまったのだ。
ユーザーはベンダーに何を求めているのだろうか。一昔前は企業の情報システム部門がユーザーの声を代弁していた。しかし、時代は変わった。今はコンシューマーなり企業のエンドユーザーが自らのニーズを主張することを躊躇しない時代だ。インターネットの発達で、さまざまなソリューションを利用する(しかも無料で)ことが可能となった。彼らはインターネット上で試した同じ環境を企業の中でも使用できることを望んでいる。
すべては「ソリューション」という言葉に置き換えられ、そのソリューションを支えるプラットフォームのほぼすべては「クラウド」を利用して成立している。
それゆえ、クラウドは言うまでもなく重要なキーテクノロジーなのだ。これは一般の消費者も企業内にいるエンドユーザーも同じだ。これが分かれば、ユーザー企業が現状の「処理が遅くて高価」な情報システムに不満を持っていることが理解できるのである。
Web技術が未来を切り拓く鍵
このところ、僕がコンサルティング契約を結んでいる企業との打ち合わせが重なっている。数年前に構築した電子メールシステムを新しいコラボレーションシステムに変更するというプロジェクトに僕が関与しているからだ。
この会議で、ユーザーのニーズに話が及ぶことがある。もちろん、テーマがコラボレーションなので当然なのだが、情シス部門が考えていることとエンドユーザーのニーズが必ずしも一致しないことが悩みの種だ。情シス部門は従来通りのポリシーで情報統制をしようとするが、実際に仕事を進めている現場では、外部への依存度を高めている。外部の企業と情報を共有するニーズが非常に高くなっているのだ。その辺のギャップをどう解消するかが最大の課題となっている。
その打ち合わせの中で、ベンダーの名前が一切出て来ない。この傾向は、最近行っているユーザー調査でも顕著だ。この動きは「大きな底流」となって横たわっているのだろう。
かつて、企業の情シス部門が新たなシステムを開発する場合、最も頼りにしたのがベンダー、中でも国産ベンダーだった。しかし、その影響力は小さくなる一方だ。
特に「ソリューションの時代」がすぐそこに近づいている現在、国産ベンダーの技術的な先進性は影を潜め、コスト競争力で海外のベンダーに遅れをとり、未来へのコンセプトも示せないでいる。特に、クラウドに象徴されるWeb技術の転用で遅れが目立つ。
一発逆転の方策もないではない。ベンダー自らがリーダーシップを発揮し、業種ごとのサプライチェーンやデマンドチェーンを構築するという発想がある。これは外資系のベンダーが望んでもできない話だ。ベンダーが呼びかければ、有力なユーザー企業はこの話に乗ってくるに違いない。というのも、この話に乗らなければその企業の情シス部門の将来がないからである。
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